(1)美味しいネタを一番先に。会社紹介はご法度!
筆者は先日、ある企業のオンライン会見を視聴しました。すると冒頭、トップが創業ストーリーを延々と10分間も語っていました。しかし視聴しているのはメディア関係者。ほとんどは既に知っている内容です。視聴者数は徐々に減っていきました。
「大企業との提携」というビッグニュースが発表されたのは会見の後半のこと。「もったいないなぁ」と思いました。冒頭にその日の大型発表を持って来れば、視聴者数を減らすこともなく、訴求力も高まったはずです。大型発表で興味関心のスイッチが入った聴き手は「もっと聞いてみたい」という気持ちになっているので、話に引き込むこともできます。
逆にいえば、オンラインで「やってはいけないネタ」もあります。リアルのイベントでよくある「会社紹介・自己紹介」「業績報告」「時事ネタ」です。実はリアル会見でもこの3つはやるべきではないのですが、聴き手は席で我慢して聞いてくれます。オンライン会見だと次々と離脱してしまいます。
これは記者会見に限らず、ウェビナーなどでも使える技術です。話し手のプロフィールや所属企業、実績などを延々と話してしまいがちですが「このセミナーで得られることは何か」を冒頭で明確に示すとよいでしょう。
話し手からすると「まずは当社を理解してもらってから本題に入りたい」と思いがちですが、貴重な時間を使うオンラインの場でホームページに書かれているような「会社概要」「沿革」「業績」で分かる情報を説明するほどのムダはありません。
(2)時間は最短で。複数人が登壇する場合も注意!
オンライン会見の場合、メディアの記者は速報性を重視します。筆者は記者発表会を60回以上取材してきましたが、90分の会見でも記事になる内容は実質10~15分程度。ならば、15分程度で伝えるべきです。
そもそも聴き手は多忙ですし、会見中は原稿を書きながら耳だけを傾けていることも多いもの。セミナーであっても、業務時間を割いて参加しています。だからオンラインでは伝えるべき内容を絞り込み、最短時間で伝えるべきです。リアルの会見では「わざわざ足を運んだのに?」と不満も出そうですが、オンラインなら離脱するのも簡単。中身やポイントをすべて伝えられれば、短時間で終了してもまったく問題はありません。
セミナーや講演会の場合は短い時間で終えるわけにはいきませんが、聴き手に何をアピールするのか考え抜き、シンプルな言葉で力強く「伝え切る」ことです。
オンラインで複数人が登壇する場合も注意が必要です。ある企業のオンライン会見では登壇者がそれぞれ長めに話した上に、登壇者の交代に手間取ってしまいました。すると余計な時間が発生して、予定終了時間を大幅に超過しました。
リアルの場では話し手の入れ替えや場面の切り替えは目の前で行われるのでさほど気になりませんが、オンライン会見では裏方の作業が見えません。聴き手はストレスを感じます。オンラインの方が、段取りに対するジャッジははるかにシビアなのです。
ほとんどの人は話が長くなりがちです。解決策としては、登壇者が話す時間はバッファを見込んで短めに依頼する。あるいは事前に録画・編集して入れ替えは数秒でつなぐ、事前に切り替えのリハーサルを行う、などの工夫も必要になります。