シエンプレは2020年1月に「デジタル・クライシス総合研究所」を立ち上げた。1月15日に行われたセミナーでは研究所の立ち上げに合わせ、近年注目の集まるデジタル関連のリスク対策とクライシス対応について解説した。
6000社以上の企業でデジタル・クライシス(ソーシャルメディアを中心としたネット上で発生した危機や重大なトラブル)を防止・解決してきた実績を持つシエンプレ。1月15日、「ソーシャル炎上回避の最新手法セミナー ネット上で愛される企業・ブランドになるには」と題したイベントを宣伝会議本社で開催した。
SNSの発達などで、いまや企業のプロモーションやブランディングにとってもネットは欠かすことができない。しかしその一方で、取り巻くリスクは複雑化、多様化している。同社の調査によると2019年1月~10月末に発生した炎上件数は982件。1日あたり3.3件と、ネット上での炎上リスクは企業にとってより身近な問題になっていることが分かる。
第1部では、社会情報大学院大学 特任教授の鶴野充茂氏(ビーンスター代表取締役)が登壇。「企業にもたらすソーシャルメディア時代のリスクと危機管理の心得」をテーマとした講演を行った。
鶴野氏は「SNSの利用自体が問題ではなく、問題がSNS上で広まるということを理解する必要がある」と説明。徹底したモニタリングによって問題発生の初期に感知し、積極的なコミュニケーションで解決していくことが重要だと述べた。広報担当者は把握している不変の事実を整理しておき、発表内容の「透明性」を担保することも、危機発生時の信頼につながるとアドバイスした。
第2部では、シエンプレの桑江令氏(WEBソリューション事業部 シニアマネージャー)が、直近の炎上事案を例にデジタル・クライシス対策の必要性を解説した。
桑江氏は企業がとるべき対策として、1許容範囲を決める2予防策を打つ3早期発見・早期対応を徹底するという3点を挙げた。「過去の炎上事例と照合しつつリスクを洗い出し、絶えずあらゆるメディアでモニタリングを行い、炎上の兆しが出た時点で迅速に対応する。この一連の流れを実現できる体制を企業の中で構築することが、情報の拡散が早いネットでの炎上において重要です」。
特に近年、サイレントクレーム(直接企業に訴えることなく、SNSや口コミサイトを通じて広がっていく生活者の不満や要望)からの炎上事案も多い。媒体もTwitterやFacebookだけでなく、GoogleマップやYouTubeの口コミ、Instagramのストーリーズなどを発端とするものもあり、広い監視体制が必要と話した。
ネット上で“ファン”をつくる
最後に元グーグル日本法人会長で、シエンプレの「デジタル・クライシス総合研究所」の顧問を務める村上憲郎氏が登壇。鶴野氏、桑江氏とともに「ネット上で愛される企業、叩かれがちな企業は何が違うのか」をテーマにパネルディスカッションを行った。
村上氏は「出発点として内部統制がとれているか、社内や外部からの意見を受け付ける窓口があるかなど、基本体制から見直してほしい」と指摘。一方で鶴野氏は、「社会でのNG事項は刻々と変化する。敏感に対応し、またそれを社として問題視すること自体に理解を得ることが重要」と説明した。
最後に、“愛される企業”になるために必要な心構えとして、桑江氏は「日ごろからタイムリーに役立つ情報を提供し、積極的なコミュニケーションによってネット上で企業やブランドの“ファン”との良好な関係を築いておくこと。この積み重ねで信頼を獲得していくことが、最大のリスクマネジメントになる」とアドバイスした。
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