—OOHの強みは何だと考えていますか。
神内一郎氏:OOHは4万年近く前、壁画の時代から存在し続けています。これほどまで長く利用されているのは、フォーマットそのものに強さがあるからです。
そのポイントは大きく5つ。まずは「ブロード・カバレッジ(広範囲性)」。人は、1日の3分の1は外出していて、そのためOOHはテレビに次ぐリーチがあると言われています。※1イギリスでは90%近い人にリーチするというデータもあるほど、幅広い人に届くメディアです。
次に強制視認性。テレビもパソコンも、電源を切ってしまうと見ることができません。OOHは常に視認できる状態であるため、老若男女問わずにリーチできる。空港の入国審査など、絶対に見せなければならない情報はOOHのフォーマットになっていることもこうした理由からです。
3つめはサイズです。昨年、中国では旧正月に合わせ、壁面にLEDが埋め込まれた53棟のビルが連携し映像を流すという、世界最大級のOOHによるプロモーションがありました。サイズの大きさによって、強い印象を与えられるのがOOHの特徴です。
4つめはリーセンシー効果です。OOHを見るとき、人は何らかの目的を持って外にいる。買い物をする人の83%が直前にOOHを見たというデータもあり※2、その効果が非常に強いことを証明しています。
最後はアドフラウドについて。OOHは広告主や媒体主が公共の場所にスペースをつくり、広告を表示しています。老若男女が利用する公共空間なので、広告の内容についても厳しい審査があります。
これが信頼性の担保にもつながっています。
—現在の世界のOOH市場はどのような状況なのでしょうか。
神内氏:グローバルでは、この10年ほど年率平均3.7%の成長を見せています。さらにデジタルOOHに限れば10.2%と高い成長率を残しています。
グローバルのメディア領域で成長を続けているのはオンライン広告とOOHだけ。その理由は、オンラインも含めて、これまでのメディアではターゲットをとらえにくくなっているからです。ターゲットに確実にリーチしたいと考えたとき、OOHの強みに注目が集まっているのです。
一方、国内では2019年の媒体別広告費(※出典:電通「2019年 日本の広告費」)を見ても、前年比100.6%と、横ばいを続けています。デジタルOOHの比率もOOH全体の20%くらいです。グローバルが40%近く、先進国と言われるイギリスやシンガポールなどが50%を超えていることを考えるとデジタルシフトについても差があると言えます。
—国内外の差はどうして生まれているのでしょうか。
神内氏:日本と海外の差は、ひとつに取引環境があります。日本のOOHは、広告を出す場所を持っている人と運営する人がほとんど同一で、その数も多い。そうなると、広告主や広告会社は、たとえば渋谷にOOHを打ちたいと思っても、出す場所一つひとつすべて誰の持ち物か、空きはあるのかを調べる必要があるのです。
また、日本ではOOHの効果を測る指標を持っていないことも原因です。広告主や広告会社は、決められた予算を、効率よくターゲットに届くメディアを活用し、プラニングします。その際、テレビであれば視聴率、オンラインならインプレッション、クリック率やエンゲージメントなど、評価を裏付ける指標が存在します。
海外では2009年に、北米、南米、中国、インド、ヨーロッパのOOHを扱う業界団体が共同でガイドラインをつくりました。OOHがどの範囲で見えるのか、そのエリアを何人が通るのか、どれだけの人がOOHを見たのか、テレビで言う視聴率のような数値に基づいて評価しています。欧米のOOHが成長を続けているのは、この指標で投資の効果を測定できるようになったからでもあります。
—こうした背景を受けてLIVE BOARDではどのようなサービスを提供しているのでしょうか
神内氏:当社のサービスの特徴は大きく3つ。「Data Driven」「Automated」「Premium AdNetwork」です。当社はNTTドコモが51%を出資しており、ドコモのデータを活用することが可能です。このデータを用いてOOHを誰が、何人見たのかを測定します。その指標はグローバルのガイドラインに沿って提供し、「Data Driven」を実現しています。
煩雑だった取引についてもデジタル化し、空き枠や利用条件の確認を自動化。オンライン広告と同等のプラットフォームを構築し、取引を自動化しました(Automated)。
また、自社だけではなく、他社の媒体についても広告枠をネットワーク化しています。そこに各広告枠のインプレッションデータを組み合わせて、広告主のターゲットセグメントや期待する広告効果に合わせた最適なメディア、場所、種類をシステムが自動的に判断し、アドサーバーで配信することが可能です(Premium AdNetwork)。
既存の取引であれば1カ月単位で販売されていたような広告枠も、私たちのプラットフォームを活用することで自由な期間設定で配信することができるようになります。広告のプランニングから取引、配信に至るまでが完全に自動化されており、必要な場所、期間で、効果測定のできるOOHを出せるようになります。
ネットワークに入っている広告枠は、3月末までに全国で屋外が84面、電車内480面、駅構内や店舗内などで105面になる予定です。インプレッションは月8億を超えると想定しています。この後、アナログのOOHのデジタル化や新規設置も進みますし、他社媒体のネットワーク化もさらに拡大する見込みです。
当社のサービスによって、OOHはオンライン広告と同様、効果測定が可能で、ターゲットや目的に合わせた出稿ができるようになりました。広告の選択肢としてOOHを検討できる状況になり、本来持っている強みを多くの広告主に実感してもらうことができれば、グローバルと同様の成長が期待できると考えています。
—OOHの活用が広がると、どのような未来があるのでしょうか。
神内氏:OOHはモバイル、スマートフォンとの親和性があります。現代はほとんどの人がスマートフォンを持っています。OOHを見た人が本当に来店したのかトラッキングできるようになりますし、広告接触者へのリターゲティングもできます。
モバイルとOOHを組み合わせると広告効果が上がることはすでに証明されています。NTTドコモ出資である強みを生かして、モバイルとの連携には取り組んでいきたいと考えています。
まずはオンラインを含む既存の広告に課題を考えている広告主の皆さまに、当社のサービスを介してOOHを試し、その強みを感じていただければと思っています。
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