“ヒラメ筋”の撮影秘話
中村:ついに来てくださいましたよ。
照英:オファーを頂けてうれしいですね~本当に。ありがとうございます。
権八:我々は、照英さんの知らないところでどんだけ照英さんの話題をしてきたか……(笑)。
中村:「また今週もヒラメ筋の話か」と。
権八:「ヒラメ筋の最新作見た~?」みたいな。
照英:話題にしていてくれたんですね、僕の筋肉を(笑)。
中村:あれは相当面白いですよね。
照英:そうですか~。やってる自分は必死ですけどね(笑)。
中村:照英さんのまっすぐさが、とてもよく出ていると思います。もちろんご本人とCMのキャラクターは違うとは思いますけど。
照英:あの感じは「一生懸命やらないとできないコマーシャルだな」と思って、熱意持ってやらせてもらっていました。作品を撮るのには、スタッフさんにはいろんなご苦労があるなと。ヒラメ筋が「ぎゅっ」って出る瞬間をどうするかとか。
中村:CMを見たことないリスナーのために説明すると、照英さんが「ハーッ!!」とお尻を叩くと、スーツの裾がぴゅるっと自動的にまくり上げられて、ヒラメ筋が出るんですよ。
照英:そうなんですよ。だって世の中にそんなスーツ売ってないですからね(笑)。どうするかというと、特注で作ってくれて。実は、あれは中にワイヤーを仕込んであるんです。横のスタッフさんが「せーの」でぎゅってワイヤーを引っ張って裾を上げていって、筋肉をさらけ出すという(笑)。でも、さらけ出すタイミングが難しくて、なかなか合わないんですよ。
中村:なかなかOKが出ない?
照英:そう。それをある意味マネキン状態になりながら、筋肉ピクピク状態で待つ、っていう(笑)。3カ月前からトレーニングして体を締めました。それにドーランみたいなのをちょっと塗って、より締まった感じに見せていますね。
権八:CMのために、3カ月も前からトレーニング……?(笑)
中村:そんな人います?(笑)
権八:こんなありがたい話ないですよ。
中村:CMはなかなかないですよね。映画ならねぇ。ロバート・デ・ニーロみたいな(笑)。
照英:オファーいただけたとき、「こんな自分でいいんですか?」と思って。努力しないといけないなと思いました。筋肉というか、自分をさらけ出すなら、身を引き締めていかないと勝負はできないですよ。ベルフェイスさんにもスポンサーのみなさんにも迷惑かけないよう、努力はするようにいつも心掛けてはいます。どこまでみなさんの意図に則っていけているかは分かりませんけど。
中村:いやいや。十分その役づくりというか、筋肉づくり、体づくりは伝わってきましたよ。
権八:あれはちなみにつくり手は、僕の先輩の松尾卓哉さんっていう。元・電通のね。素晴らしいクリエイターですよ、本当に。松尾さんの久々の会心作じゃないかなと。僕が言うのもちょっとおこがましいですけど。
照英:松尾さんからクリエイターとして、現場では「こういうところ欲しいんだよね!」「こここんな感じで!」っていう要望を直に伝えてもらえたのでやりやすかったですね。
権八:おお、そうですか。
照英:素晴らしい方でした。後ろの1粒の雨や、エキストラさんがちょっと後ろを通過するタイミングもこまめにやり直していましたね。「あと1秒!あと1秒ないぐらい遅く入ってきて!」とか。「リアクションがちょっと早すぎる」とか。「ものづくりってすごいな」「みんなで作品をつくっているんだな」っていうのを共有させてもらった感じがしました。
中村:照英さんはどっちかっていうと、今風で楽に効率よくやろうとするタイプなのか、CM中の「It’s OLD営業」風な「いやいや、そうじゃないだろ。ハートだろう!」という熱血タイプなのか。「実際にちゃんと会いに行け」って熱く語る先輩役じゃないですか。明らかにイメージではそっちの人なんですけど(笑)。実際どうですか?
照英:完全に“OLD照英”ですね(笑)。
中村:OLD照英!
権八:いいコピーが出た!
照英:最先端のことを先取りしてやっていくのも正しいことかもしれないけど、自分のペースに則って焦らずにコツコツやっていく方が好きなタイプな気がしています。周りに媚びたり流されたり、っていう感じではなく、45歳になってしまったなって感じがします。
権八:確かに、独特のポジションっていうか、孤高の存在感というか。
照英:ちょっと待ってください(笑)。それはいい意味ですか?(笑)。
権八:もちろん、いい意味ですよ!(笑)。
照英:いい意味で(笑)。ありがとうございます。