スタートアップは北京がアツい、深圳は日本でいう秋葉原?
坂井:中国と日本の文化的、歴史的な背景の違いによって、経営とか投資に対する考え方に差が生まれるんでしょうか。
藤井:中国の中でも、都市によって考え方が違うと思います。スタートアップはどこが一番イケてるのかを聞くと、だいたい北京という答えが来ます。深圳は起業家が新しいものをどんどん生み出しているし、モノづくりの高速化は得意。でも14億人に配るほどのスケールもないので、やっぱりドリーム投資のようなことが起きるのは北京が多い。
陳暁:重要な会社は、北京か上海に集まっていますね。メーカーはアリババ本社のある杭州にあったりと役割で本社所在地を変えたりしています。日本では深圳ばかりが注目されていますが、深圳は、中国人からすると電気街、東京でいう秋葉原みたいな感覚なんです。いまは、家電よりも利益率のいい化粧品問屋に転換してる業者も多いですが。実験区としてドローン飛ばしていいとか、電気自動車を走らせるコースを作るとか目立つことをしてきたのが深圳だったので、そのわかりやすさが日本でも注目を浴びたんでしょうね。
坂井:ほかに、最近気になっていることは?
陳暁:中国ビジネスがいつの間にか世界に浸食して行ってることですね。例えば中国は出前アプリがおそらく世界一使われている国だと思いますがそのおかげで出前に関するAPPの設計や配送の仕組み、配送のバッグまで知見がかなり溜まった状態です。また中国人はあったかいご飯を重視するので、保温性の高い熱が漏れないカバンを作るスキルは中国の工場が一番優れています。他にも地図アプリなんかも、日本やアメリカのプラットフォーマーが、中国のサービスのUIを見て改善していますね。
女の子が写真を撮る時に使うアプリでいうと美顔補正などができるのですが、中国の美的センスでつくられたアプリを、アジア系の人たちが小さいころから使っていくと、今後、中国人が美しいと思う顔やメイクが、ステイタスになって行くかもしれません。そうしたビジネス面での実利のみでなく、思想までもが影響を及ぼす規模になってきたとは思います。
坂井:フーマーはどうですか。スマホで注文するとすぐ届けてくれる食品スーパーとして日本でもよく取り上げられるようになりましたが。
藤井:一旦、急激な伸びは止まりました。なぜ止まったかと言うと、ターゲットが25~35歳で結婚してて、価格より品質や鮮度を優先する層なんです。そういう人が住んでいる場所については、アリババでデータ上わかる。それでお店の出店計画を立てて行くわけですが、もう出尽くしたんです。今やっているのは違う業態、例えば、市場風の店舗を出しているんですが、こちらは郊外でまとめ買いをするような30~40代の人をターゲットにしているようです。
坂井:デリバリーそのものが中国は多いですよね。
藤井:共働きが一般的で、家であまりご飯を作りませんからね。
陳暁:中国では、大人数で食事をするか、外食をするかのどちらかが多くて、お一人様の食事は出前で済ませちゃう文化が根底にあります。中国の家は、基本マンションか団地形式で、その一角に配達用のロッカーが置いてあったりします。スーパーは家から30分圏内に一軒大型スーパーがある状態です。家までの配送は、フーマーができる以前から普通のスーパーでもやっていたサービスなので、フーマーが受け入れられたのはどちらかというと、圧倒的な品質でしょうね。
坂井:中国のエンタメ系はどうなるの?
陳暁:スキルが高いアーティストは、海外のレーベルと契約しちゃうんですね。特に歌手は、国内にスキルの高い人が少ないように思います。でもグローバルを狙ってエンターテインメントをやるからこそスキルが伸びるので、活動を国内に閉じるのがいいわけではありません。私の仕事でいうと中国の劇場に日本のアーティストを送り込みショーを作るプロデュースをしていますが、彼らが要求するレベルはすごく高いんですよ。