利益を出そうとする意識が、UXを変える
坂井:中国のビジネスが2017年ごろまでに一機に盛り上がった理由としては、国と企業がガッチリ 組んでいるというところが大きいんでしょうか。
陳暁:はい。藤井さんが先ほどおっしゃっていた「ブラックリスト」方式による国の下支えに尽きると思います。それから、稼ごう、利益を得ようという意識を持つかどうかで、UIとかUXの作り方は変わってくると思うのですが、日本はそこに利益を直接結びつけて考えられていないので、作り手のエゴが出過ぎてしまう。手順が煩雑でユーザーファーストじゃないんですよ。
中国では、トライアルのサービスなら全部タダで、ワンタップで行けるようにしている。そこで獲得した1億人のユーザーに課金すればいい、まずは広く売って絞る。という考え方で、ビジネスとしてシンプル。UXが優れていたことも、サービスが盛り上がった理由だと思います。
藤井:UX志向じゃないとデジタルトランスフォーメーションもできないはずです。デジタルのビジネスは、教えてもらわなくても勝手に使えてなんぼみたいにユーザーファーストで、かつずっと関係性が続くような構造にならないといけない。UXは重要な経営課題なのに、そのことに皆さんなかなか気づかないんです。
陳暁:儲けたいと本気で思えばその先に最適な法整備やUI/UXにたどり着くはずなんですよ。そこまで切羽詰まってない経済ムードだからかなと。
坂井:そうそう。
藤井:UXが下手=商売が下手、ってことなのかもしれないですね。
陳暁:「お客様は神様」というフレーズがあるにもかかわらずユーザーファーストではなく社内ファーストを優先していることが多い。その結果UX一つとってもややこしくなってしまう。
藤井:UXを上げることがお金儲けにつながるという考え方がゼロなんですよ。どう考えてもUXを上げないと誰も使わないと思うんですけどね。
陳暁:日本で語られるUXは、どちらかというとデザインの話になっていて。本当はお客様とどうコミュニケーションをとるか、という話になっている。クリック率、リピート率、滞在率ともに本来の目的は全部売上のためじゃないですか。でもなぜか利益について語らない。
藤井:中国の会社は、ユーザーからデータを集めたら、それでUXをよくして、たくさん使ってもらえるようなループを作って、そこから金儲けするっていう構造です。一方で、日本はデータを取るとそれですぐ金儲けしようとする、それではユーザー側も怒ります。
坂井:利益を出そうという気質が、結果的にUXを変え、活気的な新サービスを生み出していたんですね。