『実務者ブランド』に上流階級は、絶対無理! 目指すべきは、中流階級まで?

ブランドの階級は5段階。凡人ブランドが目指すべきものは?

続いて、③スーパースターブランドではない『凡人ブランド』が目指すべきものとは何なのか、です。これが今回のコラムの本題です。

実務者がブランドに取り組む際に、絶対に知っておかないといけないこと。それは「ブランド=妄想」のレベル(価値)が5段階であることです。

ブランド界は、我々人間社会よりも、格差、階級社会となっており、5つの階級に分かれています。

5階級はこのようになっています。もちろん(スーパースター)「約束」が一番上位であり頂点であることはいうまでもありません。

■ブランド界の階級 5つのレベル
① 約束・絆・大好きレベル(絶対選択してもらえる・スーパースターブランド)
② なんとなく好きレベル(選択時に有利・優秀なブランド)
③ 嫌いではないレベル(選択肢には入る・凡人のブランド)
④ 知っているレベル(知らないよりはまし・赤ちゃんブランド)
⑤ 知らないレベル(この状態では妄想がない=ブランドではない)

では、一番下のレベル(価値の低いもの)から順に説明していきます。

⑤ブランドではないレベル

最下層レベルは「知らない」階級。正確には、まだブランドではない存在です。

今後ブランドに進化する可能性があるので、今はブランドではないのですが、あえて5段階には入れました。繰り返しになりますが、知らないものには「妄想」はありません。「妄想がない=ブランドがない」となります。
企業や製品が知られていない段階では、まだブランドという存在ではないのです。

④ブランドとして最低レベル(ブランドの赤ちゃん)

4階層目はブランドという存在ではあるものの、ブランドとしては最低レベルの(赤ちゃん)ブランドです。ブランドを思い出すきっかけに触れたときに、「知っている。それだけで何もでてこない」レベル。

「知っているだけで、何のイメージもないのであれば、そもそも‘妄想’はないのでは?」との質問はごもっとも!「妄想」という一言に置き換えた弱点です。ブランド定義の完全版『(ブランドを)思い出すきっかけになるものに出会ったときに(→知っていることに気づき→)その瞬間に頭の中になんとなく自然に浮かんだ勝手なイメージ』を完全に置き換えることができていません。

完全に置き換えることはできていないのですが、「無色透明の妄想?がある」とか「知っているけど、何だったっけという妄想」があるという苦しい説明でお許しください。

③凡人レベルブランド

ほとんどのブランドが、このレベルのブランドとなります。
企業・商品は知られては、いるのです。
単に知っているだけでなく、何となくイメージは、あるのです。
でもただそれだけ。
そのイメージを一言でいうと、嫌いではないということになりますが、
興味はないので正直いって別にどうでもいい。

ブランドを思い出すきっかけに触れたときに、頭の中に浮かぶのは、「知っている。そもそも興味はないが、あえていえば嫌いというイメージはない」というレベルです。

②なんとなく好きレベルブランド

企業や商品が知られていて、なぜか本人にも、わからないのですが、「何となく好き」というレベルです。

皆さんも各々、私はなぜかこの商品がなんとなく気に入っていて、人に勧めるほどではないけど、買うことが多いものがあると思います。

凡人ブランドが目指すべきは、
この「②何となく好きレベルのブランド」です。

このレベルまで、実務者のブランドが進化すれば大成功です。偉業です。

なぜなら、③のレベルに止まっている凡人ブランドと比較した場合に、②のなんとなく好きレベルのブランドは、段違いに価値があるからです。

先ほどのミネラルウォーターの例でいえば、「あなたがミネラルウォーターを買おうと、お店に入ったら2種類並んでいました。一方は③レベルの「嫌いではないが興味がないミネラルウォーター」、もうひとつは②レベルの「なんとなく好きなミネラルウォーター」だとします。もちろん同じ値段なら間違いなく②を買います。そしてなんと、②の方の値段が高くても②を買う人が多く出てきます」

なんとなく好きレベルの妄想(ブランド)は素晴らしい価値を持つのです。

①約束レベルブランド

ブランドの究極の姿はブランド論の教科書で代表事例として使われるスーパースターブランドです。ブランドの階級レベルでいえば最上流階級です。アップルやスターバックスのように、「約束」とまでいえる、その商品への‘愛’が存在します。「なんとなく好き」などという、あいまいな妄想ではありません。まさに愛です。他のものと比較したりなどしません、選択するまでもなく、その商品を選んでもらえるブランド(妄想)がそこにはあります。

これをひとつにまとめると、このブランド階層図となります。

ブランドの教科書では見たことがないと思います。

実務者はお手元において、すぐにありがたいと思ってしまうブランドの認識を改めてください。

凡人ブランドは、スーパースターブランドにはなれないことを自覚し、身の丈に合った、凡人向けの方法論でブランドをつくることが何よりも大切です。

実務者が目指すのは、あなたの企業・商品と生活者の間に「約束」をつくることではありません。まず「知ってもらうこと」、つまりブランドになることが何よりも重要です。次に「嫌いではない」と思ってもらうこと。そしで最終的には「なんとなく好き」になってもらうことです。

つまりブランディングは、妄想づくりです。そしてブランド戦略は妄想をつくる戦略です。最終回では、ブランド戦略の基本と、偉そうにブランド定義している私が第1回コラムで書いたように、実務者としてブランド向上にまだ少ししか貢献できていない理由(言い訳)を書きます。ブランドは本当に難しい。

最後までお付き合いいただければ、うれしいです。

※本コラムの8回目記事公開は、2020年4月16日(木)を予定しています。

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片山 義丈(ダイキン工業 総務部/広告宣伝グループ長/部長)
片山 義丈(ダイキン工業 総務部/広告宣伝グループ長/部長)

1988年ダイキン工業入社、総務部宣伝課に配属。1996年広報部 広報担当、2000年広報部広告宣伝・WEB担当課長を経て2007年より現職。業界5位のダイキンのルームエアコンを一躍トップに押し上げた新ブランド「うるるとさらら」の導入や、ゆるキャラ「ぴちょんくん」ブームに携わる。現在は 統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)による企業ブランド構築、マスとデジタルのB2C商品広告展開、広告媒体の購入、グローバルグループWEB統括を担当。日本広告学会員。

片山 義丈(ダイキン工業 総務部/広告宣伝グループ長/部長)

1988年ダイキン工業入社、総務部宣伝課に配属。1996年広報部 広報担当、2000年広報部広告宣伝・WEB担当課長を経て2007年より現職。業界5位のダイキンのルームエアコンを一躍トップに押し上げた新ブランド「うるるとさらら」の導入や、ゆるキャラ「ぴちょんくん」ブームに携わる。現在は 統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)による企業ブランド構築、マスとデジタルのB2C商品広告展開、広告媒体の購入、グローバルグループWEB統括を担当。日本広告学会員。

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