「実務者ブランド論」でブランドづくりをスタートしよう!

 

私がブランド向上にまだ少ししか貢献できていない理由

最後に、ブランドの実務者の方々に知っておいて欲しいことをまとめました。

実務者ブランド論を偉そうに語る私が、自社のブランド向上にまだ少ししか貢献できていない理由(言い訳)であり、皆さんが必ず直面するブランドについての課題です。

1.「ブランド」は、中長期的に儲け続けるためにこそ役立つものだから

企業は儲からなければ、倒産してしまいます。
だからこそ、ブランドをつくる目的は儲けるためなのです。

もちろん、ブランドは「儲かる」ことに役立ちますが、実は「儲け続ける」ことにこそ最も役立つ手段です。短期的に「儲かる」手段は、ブランドよりも有効なものがたくさんあるはずです。

現在の株式市場においては「短期的に儲かること」と「中期的に儲け続けること」を比べれば、「短期的に儲かること」が重要視されています。結果として、企業は「中長期的に儲け続ける(ブランドが貢献)」ことよりも、「短期的に儲かる(ブランド以外が貢献)」ことに力点をおき、その結果、企業活動におけるブランドへの取り組みの優先順位は下がりがちです。従って、ブランドで貢献するのは大変なのです。

2.ブランド論の守備範囲以外の方法でブランド価値は高まる

第1回のコラムで、私が担当するダイキンのブランド価値は、世界最大のブランディング会社の調査において、日本のグローバル企業の中で21位と非常に高く評価されていると紹介しました。私は、その理由が「優れた経営者のもと、よい製品をつくり、強い営業力・サービス力を持つから」であると考えています。

つまり、優れた製品づくり、巧みな企業買収によっても、ブランドの価値は高まります。ブランド論で説明されていることだけが、ブランド価値を上げることに貢献するわけではないのです。私も含めて、ブランド実務者の多くはマーケティング担当、広告担当です。実務者の手の届かない部分の企業活動の方で、ブランド価値が上がる企業は多く存在します。

例えばダイキンの場合は、私が日夜頑張っている「なんとなく好き」なブランドをつくる活動よりも、企業買収の方がブランド価値にはより貢献します。

そのため、相対的に私の活動の貢献の割合が少なくなるといえます。

3.実務者ブランドづくりには、ブランド論だけでなく方法論が必要

「ブランドなんか大嫌いなブランド担当者が33年かかって、たどり着いたブランド論」は今回で終了となります。

ありがとうございました。

「定義」と「目的」がはっきりしたところから、ブランドづくりはスタートします。でもそこから、実務者がブランドをつくるには、まだまだ課題山積です。

なぜなら凡人ブランドづくりの方法論は、ブランドの教科書には書かれていません。「定義」と「目的」がわかっても、方法論なしでブランドをつくるのは本当に難しいのです。

ということで、

少しお休みをいただき、次は方法論についての連載、「ブランドなんか大嫌いなブランド担当者が33年かかって、たどり着いたブランド論(実践編)でご紹介します。

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片山 義丈(ダイキン工業 総務部/広告宣伝グループ長/部長)
片山 義丈(ダイキン工業 総務部/広告宣伝グループ長/部長)

1988年ダイキン工業入社、総務部宣伝課に配属。1996年広報部 広報担当、2000年広報部広告宣伝・WEB担当課長を経て2007年より現職。業界5位のダイキンのルームエアコンを一躍トップに押し上げた新ブランド「うるるとさらら」の導入や、ゆるキャラ「ぴちょんくん」ブームに携わる。現在は 統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)による企業ブランド構築、マスとデジタルのB2C商品広告展開、広告媒体の購入、グローバルグループWEB統括を担当。日本広告学会員。

片山 義丈(ダイキン工業 総務部/広告宣伝グループ長/部長)

1988年ダイキン工業入社、総務部宣伝課に配属。1996年広報部 広報担当、2000年広報部広告宣伝・WEB担当課長を経て2007年より現職。業界5位のダイキンのルームエアコンを一躍トップに押し上げた新ブランド「うるるとさらら」の導入や、ゆるキャラ「ぴちょんくん」ブームに携わる。現在は 統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)による企業ブランド構築、マスとデジタルのB2C商品広告展開、広告媒体の購入、グローバルグループWEB統括を担当。日本広告学会員。

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