ブランドパーパスを見事体現したブランド それがAppleとEverlane。
最後に、明確なブランドパーパスをもとにビジネスに成功している2つのブランドをご紹介しましょう。
To make a contribution to the world by making tools for the mind that advance humankind.(人類を前進させようという志にこたえるツールを創造し続けることで、世界へ貢献すること。)
この言葉は、80年代にスティーブ・ジョブズがインタビューの中で答えたものです。Appleではおそらく明確にブランドパーパスを規定したことはないと思いますが、この言葉がAppleのその後のブランドイメージを確立させ、いまなお、すべての従業員、商品、サービスの在り方に通底しているのは明白です。
コミュニケーションにおいては「Think Different」キャンペーン、商品においては「iMac」「iPhone」、そして店舗においては「Apple Store」と、数々のイノベーティブなキャンペーンや商品、販売チャネルをつくり出してきたAppleですが、同社は、ブランドパーパスという言葉が一般に流通する遥か以前から、その存在意義(パーパス)をベースにブランディングしてきたのです。
さらに、商品自体はもちろんのこと、その売り方やブランドキャンペーンというコミュニケーションまで首尾一貫しているところが、このブランドの強さだと思います。
もうひとつの例が「Everlane(エバーレーン)」です。日本ではまだ知らない方も多いかもしれませんが、2010年に米サンフランシスコで生まれたD2C型のアパレルブランドです。2016年には100億円のレベニューを達成したと言われ、現在では38カ国に展開し、その勢いを伸ばしています。シンプルでモダンなデザイン性が人気の要因ではありますが、このブランドには他のブランドにはない明確な存在理由があります。
それは、サプライチェーンに関する“徹底的な透明性(Radical Transparency)”の確保です。前提には、創業者のマイケル・プレイズマンのファッション小売業への不信感がありました。他の業界、例えば食品業界であれば、商品に栄養や添加物が明記されているのはいまや当然ですが、小売業界はそうではなかった。なかでもファッション業界ではサプライチェーンの透明性が確保されておらず、そのことをプレイズマンは“壊れている”と表現し、批判しました。
そこでエバーレーンでは、販売している洋服の原価(材料費、縫製費、関税、輸送費、利益)を自社サイトで公開。その結果、他の典型的なアパレルブランドがどれだけ莫大な利益を生み出しているかが明らかになったのです。
また製造工場や製造者を積極的にオープンにすることで、醜悪な製造労働環境が指摘される他のファッションブランドとは一線を画したコミュニケーションを実施し、ミレニアルやジェネレーションZから大きな支持を集めています。
その規模は世界の巨大ファストファッションブランドにはまだ遠く及ばないが、それらブランドから大いなる脅威として見られているのは間違いありません。そして、このブランドパーパスをもとに、今後どのような発展を遂げていくのかが非常に注目されています。
ブランドパーパスが、一過性のバズワードとして終わってしまうのか、それともブランディングや経営において欠かせない新たな指針となるかは、企業のブランドパーパスへの正しい理解とその有言実行、というごく当たり前の企業姿勢にかかっているのではないでしょうか。
ブランドパーパスについては、他にも参考になる事例やポイントはあるでしょうが、今回はこの辺で。
次は、いまだ感染に歯止めがかからない新型コロナウイルスについて。米国では過去最多の死者数を記録するなど、予断を許さない状況ですが、特にロサンゼルスでは?企業・ブランドはこの未曽有の事態にどう行動したか?などについて、本コラムの趣旨に引き付けてお話できれば、と思います。
それでは、次回もお楽しみに。