【前回コラム】「まずは課題理解 アイデアはそこから逆算する」はこちら
販促会議5月号にて、第12回 販促コンペの課題を発表しました。
「なぜこんなにも(企画の)差があるんだろう…」
私が約10年前、いまの会社へ転職してきた当時によく感じていたことです。
社内ブレストでみんなが持ってくるアイデア。
「25mプールにスライム溜めた水泳ゲーム」
「ランドマークからバンジージャンプ」
「世界遺産の無人島でアニソンライブイベント」etc.…
普通に考えれば不可能だろうということを、いい大人が集まり、どうすれば実現できるかを何時間もかけて真剣に考える。「とても不思議な光景だな」と、当時の私は感じていました。
しかし同時に、ワクワクしてもいたのです。
そのころの私と同僚の差は、「スケール」でした。知らずしらず自らにリミッターをかけてしまい、アイデアが小粒になっていたのです。
体感値ではありますが、およそ95%のアイデアは、不可能であることがほとんどです。しかし、まれにではあっても、実現の筋道が見つかることがあります。ブレイクスルーした企画の多くは、一見、実現不可能なアイデアを、「可能」にしたモノだと思います。
「私たちは、クライアントやターゲットが考えつかなった『あっ!その手があったか!』を、世の中に出すプロフェッショナル集団なのだ」ということを、10年前の自分にも伝えてあげたいと思います。
では、企画は、「不可能そうな面白いアイデア」に「実現できる手立て」を加えれば、それでOKなのでしょうか。実はそれだけでは不十分なのです。もうひとつ重要なのは、〈ターゲットインサイト〉→〈アイデア〉=〈!〉マークの数です。
当たり前のことですが、アイデアはおもしろければ何でもいいわけではありません。「ターゲットインサイトを押さえたアイデア」でなければプロモーションとして機能しないのです。そのアイデアにふれた人に、どれだけの〈!〉が浮かぶか。〈!〉が多ければ多いほど、ヒトが動き、モノが動くアイデアだと私は考えます。常識の範囲内のアイデアでは、ヒトもモノも動きません。
アイデアを出すときのコツ。ターゲットインサイトがつかめたならば、スケールの大きい壮大なアイデアを考えてください。
ターゲットインサイトを押さえているのであれば、仮にスティーヴン・スピルバーグ監督を起用した超スペクタクル6秒動画でもいいですし、トランプ大統領をインフルエンサーにしたTwitterカンバセーショナルキャンペーンでもいいと思います。そこからフィジビリティを検証していきましょう。ほとんどのアイデアは、何かしらの原因でスケールダウンするかもしれません。それでもいいんです。最初のスケールが大きければ、スケールダウンしたとしても〈!〉の数はそれでも多いはずだからです。
「どうせ無理だろう」と勝手に思い込むことは、プランナーとしてチャンスをロスしています。極端な表現ですが、もしかすると、あなたの上司のご親族が、日本でスピルバーグ監督のコーディネーターを務めていたかもしれませんよ。あなたの同僚のお姉さまが、トランプ大統領のご息女とママ友かもしれませんよ。可能性はゼロではない。もしかするとつながる(実現する)かもしれません。フィジビリティ(スタディ)は、実現できなさそうな企画をはなから落とすものではなく、実現できる手立てがないかを追求するものだと思います。
それが実現できなくても、日本の超人気監督が、日本の超セレブリティがキャスティングできるかもしれません。
これは、最初のアイデアの“スケール”が大きかったからこそ着地できる企画。よって、〈!〉が多いまま、実現に到れるのです。
逆に、最初から現実的なスケールにして、後から〈!〉を増やすのは非常に困難です。(例なので数字に意味はありませんが)〈!〉の数を10から7にするのと、4から7にするのでは、最終的な数は同じでも、後者のほうは圧倒的に難しくなります。
失敗を恐れず。ケガを恐れず。見る前に飛んでみましょう。いざ飛んでみると、いつもとは違った景色が見えてくるはずです。
東急エージェンシー
エクスペリエンスクリエーションセンター
デジタルコミュニケーション局
ソーシャル&PR部 部長
西村 大輔氏
PR領域をベースに全体プランニングから実施までトータルで展開。新事業開発やコンテンツ制作、新商品ローンチ、大型展示会を多数担当。15年より現職。カンヌライオンズフィルムクラフト部門ブロンズ、ADFESTダイレクト部門ゴールド、ロンドン国際広告賞ミュージック&サウンド部門ゴールドなど。