首相でありながら「ひとりの人間」として発信
ジョンソン首相はスピーチの出だしで、国民一人ひとりが新型コロナを収束させようと不便な毎日を送りながら努力していることに触れ、感謝の意を示している。そして、彼が入院した際に尽力した数多くの医療従事者などの人的努力にも触れた。
具体的には、自分の命を救ってくれたすべての医療従事者をたたえ、そして個々人の名前を呼び、さらに48時間自分のそばでつきっきりでいてくれた2人の功績を称えている。一国の首相がそのスピーチの中で、世話になった個人名を連ねて呼んだのは、驚くべき事実だ。
忙しい医療従事者たちが、このスピーチを聴いていたかどうかは分からない。ただ、一般個人の存在をそこに表したこと、そして「細心の注意を払い、正確に行動しているNHS(National Health Service)のスタッフが数十万人いることも知っています」とすべての医療従事者への配慮も見せたことで、国民にとっても非常に身近な話として響いたはずだ。首相という立場ではあるけれど「ひとりの人間」であることが伝わる、
世界中で問われるリーダーシップ
新型コロナの問題が大きくなり始めたころ、とある人と「コロナは人を選ばない」という話をした。一国の首相だったとしても、罹患してしまうことがある。有名・無名、老若男女、いずれにもかかわらずだ。彼の場合一時期危険な状態だったとのことだが、無事回復し退院することができた。ある意味幸運だったと言えるだろう。
だからこそ、国民一人ひとりが耐えている事実を労い、医療従事者への感謝を示すことに意味があった。ウイルスに打ち勝ち、かつそれに征服されないこと、それは愛の力であることを自らの経験をもって訴えている。
さらに彼は、「ソーシャル・ディスタンシングのルールを守り、家にいて、NHSを守り、命を救いましょう」とも語った。スピーチは始めから終わりまで、分かりやすい単語と短いセンテンスで構成されていた。感情のこもったメッセージが多くの人の心に届いたことだろう。
この新型コロナの蔓延により、世界中でリーダーシップの如何が問われている。そんな時に力を発揮するのは、身体を張って力強く愛あるメッセージを伝え、人々を先導できるリーダーだ。退院して復帰されるジョンソン首相。政治的方針や彼を支持するしないはさて置き、新型コロナの恐ろしさを自ら体感し、復活した首相として、今後のご活躍に注目したい。