頑張って伝えようとすればするほど、「伝わらなくなる」
『伝わっているか?』小西利行
新型コロナウイルス感染症の拡大で、在宅勤務へ移行し、家族と居室を共にする時間が増えている方、反対に、人々の暮らしを支えるために勤務時間が増え、家族と過ごす時間が減っている方――ライフスタイルがこれまでと異なっている方は少なくありません。
自宅学習が求められていて、
「子どもにもっと勉強させたいのに、何を言ってもやる気を出してくれない」
という悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。
在宅勤務のために「リビングの掃除をしてほしい」。それを手伝ってもらうにはどんな伝え方をすればいいのか。
感染症の流行がなくたって、人は毎日、仕事をして、ふつうに暮らしていたとしても、コミュニケーションの悩みにつきまとわれます。
この本には、そうした悩みを解決するための伝わる言葉の作り方、「伝わるメソッド」の精髄がまとまっています。
言葉の表現の本質は、26人の視線が交わるところにある
キャッチフレーズは単なるレトリックと言われることがあります。もしそうなら、どれほど楽だったことか……と感じる方もいるのではないでしょうか。
「面白いこと言うね」「うまいね」で終わるのと、予算を割き、仕事として「実現したい」と心を動かすのでは、雲泥の差があります。
こうした、コピーライターが持つ「言葉を使って心を動かすスキル」は、ビジネス全般で使える万能スキルです。どんな仕事であれ、言葉を使って人と人をつなぎ、他者と思いを共有する必要があります。だからこそ、そのメソッドは各人各様となるのです。
それでも、部分部分で、同じことを異なる仕方で表現しているのでは……と思えることがあります。
『コピーライティングとアイデアの発想法~クリエイターの思考のスタート地点~』
トップクリエイター26人それぞれの「アイデア発想の起点」を紹介しているこの本では、
アイデアを横へ横へと広げ、ともすれば本質から遠ざけてしまう「切り口」という言葉の落とし穴、「社会」と向き合い、知り、感じ、それと響き合う何かを見つけることの大切さ――
〈違い〉は重要だけれど、それは受け手が求めているポイント?――
知れば知るほど、情報を集めれば集めるほど、自分の視点が「ふつうの人」から遠くなっていく。だから最初の感覚を記録しておく――
など、十人十色のエピソードに基づいて、「伝わる」ようにするための要点がふんだんに盛り込まれています。
同じ山であっても、違う角度から見れば、その姿(表現)は変わるもの。しかし、元は同じ山でもある。
26人の視線が交差するところには、どんな本質があるのか。
それを探しながら、各著者の要点をご自身の仕方で結んでいってみてください。
〈並のコピーライター〉ではなく、〈いいコピーライター〉になるために
お店に人を呼べないなら、eコマースを活発化させて、1人でも多くの人に商品を届けたい――いま、数多くの方がそう考えているのではないでしょうか。
ECサイト自体や、商品のキャッチフレーズを書いてみよう、という機会はこれからもっと増えるかもしれません。
法人でなくても、C to C(個人間)のECも利用する場面が多くなってきています。
そうして、より「広告コピー」に関心が出てきた方におすすめしたいのが、
『広告コピーってこう書くんだ! 相談室(袋とじつき)』谷山雅計
です。
「コピーライターに『向き、不向き』はありますか?」
「どうすれば、自分らしい個性のあるコピーが書けますか?」
「自分の発想に自信を持てなくなることがあります」
など、前作『広告コピーってこう書くんだ! 読本』の読者から寄せられた多くの質問より、普遍的なテーマをピックアップした第一部、
キャンペーンコピーの作り方について体系化し、
「シンボルとして、合言葉として目に飛び込んでくるか、強く耳に残るか」「くり返されると、どうなるか」「どんなプラスを残していけるか」「単に面白いだけではなくて、〈実現したいもの〉になっているか」
などのチェックポイントを解説した第二部となっています。
本の隅々には、
人間は、少しでも頭を使って「わかった!」と思ったことは、長く記憶しているもの――
人々やメディアがキャッチフレーズを口にするとき、ほとんどは冗談であったり、からかうように見出しにしたりする――
といった鋭い洞察がちりばめられており、
意味のない文がひとつもない一冊です。
前作『広告コピーってこう書くんだ! 読本』未読の方は、そちらから開かれることをおすすめしますが、
逆に『広告コピーってこう書くんだ! 相談室』→『広告コピーってこう書くんだ! 読本』→『広告コピーってこう書くんだ! 相談室』の順だと、なるほど感が倍増します。