アフターコロナの世界でも、ブランドづくりの基本は何ひとつ変わりません!

今の時代が、機能的価値よりも情緒的価値が圧倒的に重要な理由

ではなぜ、今の時代においては、情緒的価値が重要なのでしょうか。

先ほどガソリン代ゼロの車、年間電気代1円のエアコンを例に用いました。その時、みなさんは「そもそも、そんな車やエアコンは現実につくれないのでは?」と思いませんでしたか?
そうです。“今の時代”の技術ではつくれません。

しかしながら、歴史を振り返ると、馬車で移動していた時代から自動車の時代へと変化した際には、大きな技術革新によって機能的な価値が大きく変化し、その価値が高く評価されました。固定電話から携帯電話へ変化した際は、誰もが持ち運べる、いつでも通話できるという機能的価値が今までよりも圧倒的に高くなることを感じました。

でも“今の時代”においては、機能的価値を以前や競合と比較し、『価値が高くなったと感じる』ことは非常に難しいのです。技術が進歩して、高いレベルまで成熟化しているので、画期的な進化が生まれにくくなったり、すぐに競合に追いつかれてしまいますから。

エアコンでいえば、A社の年間電気代は5万円。B社は5万100円。機能的価値の差(100円)は確かにありますが、ごくごくわずかな差。

生活者からみれば、正直どちらも同じ価値に見えています。

これでは電気代という機能的価値では、残念ながら差をつけられません。

仕方がないので、情緒的価値で差をつけることが重要になってきます。

なぜなら生活者が商品を購入する際に、機能的価値は同じで差がない場合、情緒的価値(ブランド)が高いと思う商品を購入するからなのです。

このように機能的価値が同じと感じてしまうのは、すでに機能的価値が、生活者が求めるレベルよりも高くなっていることも理由として挙げられます。

私は、ラーメンが好きです。スーパーマーケットで買えるインスタントラーメンは美味しいですよね。有名メーカーに限らず、スーパーのプライベートブランドのインスタントラーメンも十分に美味しいです。今、日本でまずいインスタントラーメンを探す方が難しいと思います。言い換えると、どれを買っても大きな差がない。まずいインスタントラーメンと、美味しいインスタントラーメンが存在した時代には、美味しいインスタントラーメンをつくれば、売れました。でも、みんな美味しいのですから、美味しいのはあたりまえで、その高いレベルの美味しさで差をつけることはどんどん難しくなっています。

だから機能的価値(美味しいラーメン)を開発して差をつけることに、今まで以上に取り組むのは当然だけれど、同時に情緒的な価値(なんとなく好きなラーメン)も頑張ってあげる努力をして、両方の価値の合計で差をつけないと買ってもらえない時代なのです。

次ページ「情緒的な価値を高めるための、本当のブランドづくりが必要」へ続く

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片山 義丈(ダイキン工業 総務部/広告宣伝グループ長/部長)
片山 義丈(ダイキン工業 総務部/広告宣伝グループ長/部長)

1988年ダイキン工業入社、総務部宣伝課に配属。1996年広報部 広報担当、2000年広報部広告宣伝・WEB担当課長を経て2007年より現職。業界5位のダイキンのルームエアコンを一躍トップに押し上げた新ブランド「うるるとさらら」の導入や、ゆるキャラ「ぴちょんくん」ブームに携わる。現在は 統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)による企業ブランド構築、マスとデジタルのB2C商品広告展開、広告媒体の購入、グローバルグループWEB統括を担当。日本広告学会員。

片山 義丈(ダイキン工業 総務部/広告宣伝グループ長/部長)

1988年ダイキン工業入社、総務部宣伝課に配属。1996年広報部 広報担当、2000年広報部広告宣伝・WEB担当課長を経て2007年より現職。業界5位のダイキンのルームエアコンを一躍トップに押し上げた新ブランド「うるるとさらら」の導入や、ゆるキャラ「ぴちょんくん」ブームに携わる。現在は 統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)による企業ブランド構築、マスとデジタルのB2C商品広告展開、広告媒体の購入、グローバルグループWEB統括を担当。日本広告学会員。

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