困難を共に乗り越える — 顧客と“共犯”の関係をつくるオールユアーズのファンコミュニケーション

実店舗の営業自粛が広がる中、接客をはじめとするリアルな顧客との接点の機会が大きく失われつつある。この状況で、いかに顧客との関係性を維持できるか。多くの企業が、オンラインでの新たな接点づくりにチャレンジをしている。
そうした中でも、先陣を走るのが「インターネット時代のワークウェア」をコンセプトに、着心地を重視した商品を提供するALL YOURS(オールユアーズ)だ。
 
オールユアーズは東京・池尻大橋に店舗を構えているが、コロナ禍で、店舗については当面の営業を自粛せざるを得ない状況が続いている。しかし、そうした中にあっても、アプリやオンラインの繋がりを活用した「zoomプライベート接客」や「かんたん質問箱!」「ご自宅お試し制度」「リモートワーク応援プラン」といった、新たな顧客接点づくりに取り組んでいるという。
これまで培ってきたファンとの深い関係性をベースにオールユアーズが取り組んでいる、新しいファンコミュニケーションについてヤプリの金子洋平氏が話を聞いた。

店舗の営業自粛でも、Zoom接客でファンとつながる

4月22日、ヤプリ主催、宣伝会議協力でオンラインセミナー「困難をファンと共に乗り越えるオールユアーズの強さとは」がライブ配信で実施された。「インターネット時代のワークウェア」をコンセプト
に、着心地を重視した商品を提供しているオールユアーズは、24カ月連続のクラウドファンディングを成功させるなど、ファンとの深い関わり方でも注目を集めているブランドだ。

オールユアーズでは、すでにオンライン接客を始めている。

聞き手となったのは、クラウド型アプリ開発プラットフォーム「Yappli」を運営する、ヤプリ 執行役員CCOの金子洋平氏。オールユアーズ商品の愛用者だという金子氏はファンのひとりである。「もともとオールユアーズは、自社のファンのことを“共犯者”と呼ぶなど、強いファンに支えられているブランド。SNS上の双方向コミュニケーションを実現していて、従来型の企業から消費者に一方的に情報を発信するマスマーケティングとは一線を画している」(金子氏)と、その独自性に言及した。

金子氏の指摘を受けて、オールユアーズ・代表取締役の木村昌史氏は「社内の会議で社員が発するアイデアよりも、UGCの声を重視している。なぜなら僕らのアクションを自分ごととして考え、発信してくださる方たちは、もはやマーケティングのターゲットである消費者ではないと考えていから。SNSでは、僕らが提供すること以上に、“共犯者”の発信が意味を持つ。僕らがブランドをつくるのではなく、僕らと共犯者の相互関係の中でブランドがつくられていく」と語った。

セミナー参加者からは「UGCを生み出すには、どんな仕掛けが必要か?」「クラウドファンディングでバズったのは、なぜか?」などの質問が集まったが、セミナーを受けての本対談では、参加者の質問に答える形で進んでいく。

4月22日に配信されたWebinarの様子。ここで視聴者から寄せられた質問に答える形で、後日の対談を実施している。

SNSの本質は「“n=1”の解像度を上げれば上げるほど、広く伝わる」

金子:社会全体が大きく変革する中、スマホのアプリをはじめ、企業と顧客が直接繋がることができるプラットフォームやツールを活用しながら、「直接繋がる」という流れが加速していくと思います。大量生産・大量消費、そのためのマス広告活用、という構図とは違った企業と消費者のコミュニケーションの形が生まれつつあるのではないでしょうか。

木村さんのお話を聞いていると、SNSの活用法、対面販売、自店舗展開など、すべての手法が、その「新たなコミュニケーションから生まれるブランドづくり」の哲学に紐づいているような気がしました。個々の手法もユニークですが、決して「点」の施策の話にはおさまらないですよね。

木村:そうですね、セミナー後に集まった質問の中にも「UGCを生み出す仕掛けは?」「UGCがユーザーの中で自然発生するようになるまでが、難しい」などの声がありました。そうした質問に回答するとしたら、「目の前の人に対して『自分がされて嬉しいことは何か?』を考え、スタッフ全員が純粋に楽しんで発信すること」なんですよね。

金子:それは、人のコミュニケーションの本質的な話ですよね。

木村:僕らのやり方は、“n=1”を徹底して考えるということなんです。SNSで発信すると考えずに、目の前にいる相手と話す時と同じように振る舞う。目の前にいるひとりが、どんなふうに話したら喜んでもらえるのか、普通のコミュニケーションで考えることをやればいい。

それなのに、なぜかネットに投稿するというと「全世界に発信する」と捉えてしまいがち。まずは目の前にいるひとりにちゃんと伝えることが、実は大事。僕の投稿に「いいね」をくれるのは、僕と仲の良い人たちです。でも、その人たちが「めちゃくちゃいいね」と言ってくれたら、その熱量が、友達の友達へと伝わっていきますから。

金子:フォロワーが多いかどうか、よりも、熱量が大事なんですね。

木村:SNSには、ある“n=1”の周りに、同じような属性の人が集まっているという特徴があります。つまり、“目の前のひとり”の解像度を上げれば上げるほど、知らない人まで伝わっていく。「クラウドファンディングでバズった要因は?」という質問もありましたが、拡散を前提にするのではなく「いま応援してくれている人たちに、しっかり届いているのか?」「応援して、支持してくれている人たちが『言いたくなる』状態ができているか?」が、もっとも重要です。そして、その人たちが、僕らがまだ出会ったことのない人たちに伝えてくれるのです。

「インフォメーション」ではなく「インスピレーション」を解釈の余白が、ブランドをつくる

金子:SNSのコミュニケーションがなかなかうまくいかない、と思っている企業の担当者も多いと思います。

木村:マスコミュニケーションにおける「発信者」と「受信者」の関係を思い描いていると、うまくいかないのかもしれません。ブランドがインフォメーションを投げかけて、お客さんのリアクションを促してきたのが、従来のコミュニケーション。双方向のやり取りが可能なSNSでは、インフォメーションを出して、どう浸透させていくか、というよりも、そこにどう参加してもらうかの方が重要です。参加、というのは皆が解釈できるということ。みんな“私の解釈”を発信したいのです。

だからこそ、これからのブランドは、インフォメーションより、インスピレーションを与えることが大事になってくるのではないでしょうか。自由に解釈できるような「余白」をつくっておくと、お客さんが参加できる余地がありますよね。

金子:SNSの登場により、優れたカスタマージャーニーや、企業視点でのブランドストーリーを描くことよりも、企業やブランドが介在することで、人と人とが繋がれるようになることが、重要になっているのかもしれません。オールユアーズさんは、ファンのつぶやきにもよく反応していらっしゃる。フラットで新しい関係性ですよね。

木村:日本では、ガイドラインを決めて、そこからはみ出さないようにすることを「ブランドマネジメントである」と考えている企業も多いと思います。でも、僕は「勝手に解釈されたもの」も含めてブランドであり、“共犯者”であるファンと僕らが共につくっていくものだと考えています。

金子:そう考えると、SNSでの発信に悩んでいる企業は「会社が好き」「そのブランドのことを、寝ても覚めても考えている」ような人を、SNS担当に選任してはどうかと思いますね。「好き」があれば、たとえ解釈の幅が広がっても、ブレない。

木村:拡散を狙うのではなく、「共感が連鎖するから、結果的に拡散する」。そのためには、解釈できる余地が必要である、ということです。

金子:新型コロナの流行の前後で、消費のあり方や買い物の仕方が、本質から変わるような気がしています。外出自粛で、店舗におけるセレンディピティが圧倒的に減っている。次は「人から人へ」のコミュニケーションが、そのセレンディピティの役割を担っていくのかもしれません。

アプリもまた、ファンコミュニケーションのツールであり、ファンと深く繋がれる方法のひとつです。自分のスマホ画面にアイコンを置くなら、やはり、好きで応援しているブランドのアイコンを置きたい。アプリというソリューションにおいても、やはり木村さんの言う「目の前の人を大事にする」コミュニケーションが本質になってくるのではと思います。

株式会社ヤプリ 執行役員CCO
金子 洋平氏

1979年生まれ。大学卒業後、GMOインターネットにてマーケティング、新規事業立ち上げを経験後、起業。「ファッションメディア」、「ファッションEC」の会社を11年経営し、2016年よりアプリ運営プラットフォーム「Yappli」の株式会社ヤプリに参画。

 

株式会社オールユアーズ 代表取締役
木村 昌史氏

「インターネット時代のワークウェア」をつくる、オールユアーズの代表です。インターネットを利用して、アナログなコミュニケーションを取ることに躍起になったりしています。最近は「ウェルビーング」の事を考えています。趣味は読書。友達が少ないので仲良くしてください。

 


お問い合わせ
株式会社ヤプリ マーケティング本部
mktg@yappli.co.jp

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