こんな時でも、こんな時だからこそ 僕らのモチベーションをあげてくれる広告たち

それでもやっぱり、アウトドアメディアが好き

数カ月前までは街に人が溢れ、ソーシャルメディアやオンラインとの相性の良さからも、旧来からのメディアの中では健闘を続けてきたアウトドアメディア。人がこれまでのように出られなくなってしまったいまでは、メディアとしての価値も未来も、非常に不安定なものになってしまいました。でもやっぱり、私はアウトドアメディアが大好きです。

そこでここでは、パンデミック以前に目立っていたアウトドア広告のキャンペーンとパンデミック以降に実施された注目すべきキャンペーンをご紹介します。どれにも共通しているのは、「コピー主導」のキャンペーンであることです。

① Oatly Milk – 牛乳みたいなものですが、人間のために作られたものです –

スウェーデン生まれのオーツ(麦)が使用されたミルクのブランド「Oatly」。豆乳をはじめとして、日本でも最近ではよく目にするようになった「ココナッツミルク」や「アーモンドミルク」など、「代替ミルク」の選択肢が増えました。健康志向はもちろんですが、「1リットル生産あたりの二酸化炭素排出量」が少ないそれらの商品が、環境のためにも普及してきています。

その中でもこのブランドは、正直でちょっと“尖った”表現をしていて、注目を集めています。「Oatly / OOH」と是非検索してみてください。ラフな手書きの書体とイラストの商品パッケージと共通のデザインで制作された、たくさんの屋外ポスターを見ることができると思います。

「この文章、本当に読んだの?だったら成功。」

「ちょっと動いてくれない?君の後ろのバリスタがこの広告見えるかもしれないから。」

「待ち合わせ?この広告読んでるフリしてクールにいたら?ちなみにオーツミルクの広告だけどね。」

というように、商品自体のことを語るよりも、見ている人に直接話しかけるようなトーンで、その商品名とパッケージを押し出しています。競合ひしめく「代替ミルク」業界の中で、一際目立ち、広くシェアされたキャンペーンでした。

② Postmates – We get it キャンペーン –

Postmatesとは、フードデリバリーから始まりいまでは買い物代行まで請け負う「配達サービス」。

こちらのブランドも、昨年大掛かりなOOHキャンペーンを実施。「We get it(私たちが届けましょう」と名付けられたこのキャンペーンでは(Postmates / We get it で検索)、日常の中で、「あ、あの商品、いま必要だ」「こんな時、こういうもの欲しくなるよね」というあるあるコピーを、シンプルでキャッチーなビジュアルとともに展開しました。しかも、ニューヨークとロサンゼルスそれぞれの市民とその生活に合わせた、一度読み始めたら全部読みたくなるような、名コピーばかりでした。

③ Hun Wine – 誰もみない新商品ローンチキャンペーン –

最後に紹介するのは、この5月に入ってからロンドンで掲出された新しいワインのローンチキャンペーンです。ロックダウンで街には人があまりいないことを前提とした、ウィットに富んだコピーメインのポスターが、街を飛び出しさまざまなメディアを通じて人々の目に触れ、話題となりました(Hun Wine / OOH で検索)。以下がその抜粋です。

「みんな見て!私たちの新しいワインが発売になったよ。誰かいる?いないの?いる?」

「担当広告代理店が、このポスターをここに掲出しました。彼らはもう担当ではありません。」

「(極小文字で)もしこれを読めているとしたら、あなたは近づきすぎだ。」

ロックダウンやソーシャルディスタンスをネタに、思わずにニヤッとしてしまうコピーを数多く展開、その結果、おそらく通常の新発売キャンペーンでは得られなかった多くの認知を獲得したことでしょう。

これらの他にも、世界一履き心地の良いスニーカーを謳う「All Birds」など、数多くのスタートアップブランドが、OOHとソーシャルメディアの組み合わせで話題になるキャンペーンを仕掛けている印象があります。

このコロナのパンデミックは、間違いなくこれまでの広告表現に大きな変化をもたらしました。しかし、それでも「新しい生活様式」の中で、私たちのクリエイティビティがもっと面白い表現、キャンペーン、そしてブランディングを生み出すことができると確信しています。

ニューノーマルな中にも、新しい可能性を。©︎123RF

次回で私のコラムは最終回になります。最後までどうぞお付き合いください。

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曽原 剛(Death of Bad)
曽原 剛(Death of Bad)

1999年博報堂入社。コピーライターとして7年間在籍したのち、2006年にロサンゼルスのTBWAに移籍。Appleや日産など数多くの有名企業のクリエイティブを手掛けた。その後、2014年に日本に帰国し、J. Walter Thompson Japan のエグゼクティブ クリエイティブ ディレクターに就任。2018年には、ロサンゼルスのTBWA\Media Arts Lab時代の同僚、ジョン・ランカリック氏と共同でクリエイティブスタジオ「Death of Bad」を立ち上げた。

曽原 剛(Death of Bad)

1999年博報堂入社。コピーライターとして7年間在籍したのち、2006年にロサンゼルスのTBWAに移籍。Appleや日産など数多くの有名企業のクリエイティブを手掛けた。その後、2014年に日本に帰国し、J. Walter Thompson Japan のエグゼクティブ クリエイティブ ディレクターに就任。2018年には、ロサンゼルスのTBWA\Media Arts Lab時代の同僚、ジョン・ランカリック氏と共同でクリエイティブスタジオ「Death of Bad」を立ち上げた。

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「ロサンゼルスの現場から。~日本語しかできなかったコピーライターが、気付いたら、LAでクリエイティブスタジオを設立していた話~」バックナンバー

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