告白…「私は、間違ったブランド施策をご機嫌でやりつづけていました」

【前回コラム】「アフターコロナの世界でも、ブランドづくりの基本は何ひとつ変わりません!」はこちら

ブランド施策のほとんどが間違い!? なぜ、担当者は間違いに気づけないのか?

このコラムを読んでいただいている方は、所属する企業や担当する商品のブランド戦略の企画・実施に携わっている当事者の方、外部協力会社の立場から、ブランド戦略立案や広告、ブランドサイトの企画・制作をされている方など、ブランドの実務を担っている方が多いと思います。

そんな皆さんはきっと、「自分はちゃんとブランド施策を企画・実行しているし、ブランド広告やブランドWEBサイトによってブランドの価値を高めている!」と思っていますよね?

前回のコラムで「ブランド施策のほとんどが“間違い”であり、ブランディングと称して世の中に溢れているマス広告は、半分以上は何の意味もないから、今すぐやめても何の影響もない。お金の無駄遣いである」という、尊敬する著名マーケターのお言葉を引用しました。

僭越かつ失礼ながら、「ブランド施策のほとんどが間違い」と指摘されても仕方のない状況だと私も思います。

皆さんが日々取り組んでいる施策のほとんどが間違っているとしたら、それはなぜなのでしょうか。長きにわたり、間違えていた私だからこそできる『間違えてしまうその理由』の分析と、『実務者ブランド方法論におけるブランド広告は、批判されているブランド広告と何が違うのか』の説明をしていきたいと思います(これは尊敬するマーケターのお考えではなく。あくまで私が考えるブランド施策が間違いの理由です。念のため)。

世の中には「商品を売らなくていいブランド広告」が溢れている

例えばブランドサイトは、売りに走らない方がよい。とにかくカッコいいデザインで、ブランドの空気感(?)を伝えるべきといわれています。もちろん、これは典型的な間違いです。

ブランド広告というのは、「商品を売らなくていい広告」「商品の魅力や性能についてくどくどと説明するのではなく、イメージ訴求する広告」のことだと思っている実務者が多いですが、これも大間違いです(後で説明しますが実務者ブランドにおいては、ブランド広告の対極にあると思われる「商品名を連呼するおもしろテレビコマーシャル」は、立派なブランド広告と考えます)。

※余談ですが、デジタル広告をメインにお仕事をされている方々からは、このブランド広告なるものは、短期的な売り上げにつながらないと目の敵にされていて全く意味がないと酷評されます。現在、間違ったブランド広告が多いので、そうした指摘が起きるのも無理もないのですが、一方で「(短期的な)売り上げに貢献しない広告がすべて無駄である」というデジタル広告業界の皆さんの極論は、間違いだと思っています。こちらはまた別の機会があれば論じます。

一生懸命に仕事に取り組む実務者の私が、かつてやらかしてしまっていたように…間違いを犯してしまうのには、もちろんきちんとした理由があります。

間違える理由は、この連載でずっと言い続けてきたこと。つまりはブランドの定義があいまいで、目的もあいまいのままに、ブランド広告をやろうとすることが原因です。

※詳細は「ブランドなんか大嫌いなブランド担当者が33年かかって、たどり着いたブランド論」をご覧ください。

整理すると、多くのブランド広告には以下の2つの問題があるから、間違えてしまうのです。

①手段が目的にすり替わっているから

ブランド広告やブランドサイトの目的が、「ブランド広告をする」「ブランドサイトをつくる」ことになっている。手段が目的になってしまっているために、間違った施策になっているケースがほとんどです。「ブランド広告をする」ことが目的である以上、ブランド広告をやれば目的は達成されて、めでたしめでたしとなります。

②絶対に達成できない目的が設定されているから

ブランド広告をつくる目的が設定されている場合も、少ないですが、あります。その目的は、ブランドの教科書に載っているような、ブランドの定義である「約束」「差別化」をつくることとされているケースが多いです。すなわちブランド広告の目的は、広告によって商品と生活者の間に「約束」や「差別化」をつくることになります。

この目的も間違っています。

なぜなら、それは達成することが不可能な目的だからです。あなたがブランドづくりに取り組もうとうしている商品は、AppleやNikeのようなスーパースターではありません。もともと他社の商品と比較して、大きくは優れてなどいない、平凡な商品なのです。生まれながらに才能がないのに、『約束』など絶対にできません。

※詳細は「あなたの企業・製品・サービスは凡人です! ブランド論の教科書が与える幻想」を参照ください。

スタート地点が、そもそも違うのに、生活者と商品の間に「約束」をつくらないといけないと考えてしまうから、どうしていいかわからなくなって、みんながAppleの広告を真似てしまうのです。

そして、そんな無駄なブランド広告ばかりがいっぱいできて、結果として、「商品を売らなくていい広告」や「商品の魅力や性能について、くどくど説明するのではなく、アートでイメージ訴求する広告」が、ブランド広告のスタンダートになってしまったのです。

このようなブランド広告を実施してしまう実務者の頭の中は、こんなふうになっています。

「現在のブランドを、目指すブランドである『約束』へ進化させる」。

これは理屈としては正しいのですが、そもそも達成できない目的なので、どうやったところで無駄な広告になります。

■無駄なブランド広告をつくってしまう担当者の頭の中

次ページ 「「実務者ブランド方法論」における、正しいブランド広告とは?」へ続く

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片山 義丈(ダイキン工業 総務部/広告宣伝グループ長/部長)
片山 義丈(ダイキン工業 総務部/広告宣伝グループ長/部長)

1988年ダイキン工業入社、総務部宣伝課に配属。1996年広報部 広報担当、2000年広報部広告宣伝・WEB担当課長を経て2007年より現職。業界5位のダイキンのルームエアコンを一躍トップに押し上げた新ブランド「うるるとさらら」の導入や、ゆるキャラ「ぴちょんくん」ブームに携わる。現在は 統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)による企業ブランド構築、マスとデジタルのB2C商品広告展開、広告媒体の購入、グローバルグループWEB統括を担当。日本広告学会員。

片山 義丈(ダイキン工業 総務部/広告宣伝グループ長/部長)

1988年ダイキン工業入社、総務部宣伝課に配属。1996年広報部 広報担当、2000年広報部広告宣伝・WEB担当課長を経て2007年より現職。業界5位のダイキンのルームエアコンを一躍トップに押し上げた新ブランド「うるるとさらら」の導入や、ゆるキャラ「ぴちょんくん」ブームに携わる。現在は 統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)による企業ブランド構築、マスとデジタルのB2C商品広告展開、広告媒体の購入、グローバルグループWEB統括を担当。日本広告学会員。

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