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コロナ語を話せますか?最終回
1949年、イギリスの作家ジョージ・オーウェルは細菌性の感染症である結核に苦しみながら小説『1984』を出版しました。オーウェルはそこで“Newspeak(新語法)”という架空の言語を描いています。文法と単語を単純化することで、人間の考えを単純化する。言葉を制限して、体制側が国民を管理しやすくするための言語です。
ロンドン大学の言語コンサルタントを務めるトニー・ソーン氏はNewspeakになぞらえて“Coronaspeak(コロナ語法)”と題し、こちらは逆に、コロナ禍で生まれた1,000を超える多様な新語や造語を集めています。
その中から「ポストコロナ」に関連する一部を紹介します。
Covexit
Covid+exit
ロックダウンや経済的苦境からの出口戦略
イギリスのEU離脱で「ブレグジット(Brexit)」という造語が広まりましたが、“Covexit”はそのCovid-19版です。
Coronalit
Corona+literature(文学)
コロナをテーマにした文学
今回のパンデミックにインスパイアされた映画や舞台などあらゆる芸術がこれから生み出されると思いますが、このように新たなカテゴリーが成立するのかもしれません。
Generation C
コロナ世代
「ジェネレーションC」はもともと“Generation Connected Collective Consumer(みんなでつながりあって消費する世代)”でソーシャルメディアネイティブの若者を指す言葉ですが、コロナ以降は“Generation Corona/Covid-19”のことも意味するようです。
Coronials
Corona+millennials(ミレニアム世代)
コロナによる自粛期間中に命を授かった子どもたち
2020年後半以降にベビーブームが予測されています。“Coronials(コロニアルズ)”が十代になった時には、隔離を意味する“Quarantine(クウォランティン)”と“Teen(ティーン)”をかけて“Quaranteen(クウォランティーン)”と呼ばれるとも言われています。
ニューノーマルのニューローカル
2003年頃にアメリカで使われ始め、2008年の世界金融危機で定着した“New Normal(ニューノーマル)”という言葉。緊急事態宣言が全面解除された日本では、ニューノーマルについて多くの論点で語られています。一方、ニューノーマルと大袈裟にいうほどのことでもないという論調も目にします。
海外ではどうでしょうか。コロナによる被害の度合いとその影響は国と地域によってかなり大きく異なります。これから企業や各種組織が他国・他地域とコミュニケーションを再開して進める上で、「それぞれの地域のニューノーマル」とその論調を知り、細かなニュアンスの違いに配慮することは欠かせなくなるでしょう。
もちろん大きな枠組みとしては、社会的距離を保つ、清潔にする、リモートワークを推奨するなど共通しています。しかし、各国各地域で暮らす人々が「新しく共感すること」は、それぞれのローカルで微妙に異なるのかもしれません。