第3回 ポストコロナ コロナで変わる新しい世界の言葉

「希望を伝える」トム・ロバーツ氏の独自インタビュー

『Great Realisation(大いなる気づき)』というタイトルは、イギリスの作家チャールズ・ディケンズの小説『Great Expectations(大いなる遺産)』をもとにしています。

ディケンズの『大いなる遺産』は、「田舎」と「都会」という二つの世界を対比して、産業革命で盛り上がるロンドンでの人間の強欲を描写しました。ロバーツ氏の『大いなる気づき』は、その見事な翻案です。

私はロンドンのロバーツ氏にコンタクトし、メールでインタビューに応えてもらいました。下記は私による抄訳です。英語の全文は本コラムの最後に掲載しています。

質問 1

子どもに架空の物語を読み聞かせるという形式にしたのはなぜですか?

回答

※1
「希望」を伝えるために最も適していると思ったからです。この数ヶ月間、ずっと家で家族の子どもたちに読み聞かせをしてきました。そこで、これは人が勇気や希望について学ぶ素晴らしい方法だと気がつきました。

質問 2

この作品の中で、ご自身で最も気に入っているのはどのセリフですか?

回答

※2
And so when we found the cure and were allowed to go outside,
We all preferred the world we found to the one we’d left behind.
やがてウイルスの治療法が見つかり、人々はまた出かけるようになりました。
だれもが、ふと思いました。以前よりも、この新しい世界のほうが、素晴らしいと。

これまでの「普通」に戻るのではなく、世界はもっと良くなるし、そうあるべきです。私はその新しい世界で生きていきたいと思っています。

質問 3

「ニューノーマル」を象徴する言葉があるとすれば、何だとお考えですか?

回答

※3
「コミュニティ」です。新型コロナウイルスは私たちを家に閉じ込めました。しかしそれによって、家族とのつながりを取り戻し、地域社会に貢献する機会を得たことも確かです。これは、暗い時代であったとしても、ポジティブな結果が得られる証だと思います。希望を持ちましょう。辛い中でも、幸せは見つけられるはずです。

最後に、トム・ロバーツ氏がワシントンポストの取材に答えたメッセージを借りて、このコラムを終わりにします。

My job as a poet extends as far as to ask a question and allow brighter minds than mine to venture answers.
詩人としての私の仕事は、問いかけること。私よりも賢い頭脳が大胆な答えを導き出せるようにすることです。

言葉には、人を謙虚に、クリエイティブにする力があるのではないか。26歳のトム・ロバーツ氏は世界に問いかけています。

コロナ禍で広まる世界の言葉。ご高覧いただきありがとうございました。

リサーチ・分析協力:Atsuyoshi Ishizumi (morph), Kimi (morph), Juli. E. Kibe (morph)
 
*1 I settled on that decision as I felt it would be the best way to present the idea of hope. For the last two months I have been in the UK living at home in lockdown with my little brother and sister. We often read bedtime stories and I find that they are a brilliant way to learn of bravery, good overcoming evil and hope. I thought this would be the perfect way then, to present this hopeful message to people.
 
*2 My favourite line in the poem is this:
“And when they found the cure and were allowed to go outside, they all preferred the world they found to the one they’d left behind”
 
The reason it is my favourite line is because it is the essence of the idea. If we collectively made the decision to use this moment to reevaluate the imbalances in our lives and worked towards setting them straight, then we might indeed prefer the new world we build to returning back to ‘normal’ as you sometimes hear people expressing. I think that would be infinitely better than returning to normal as the world was good in so many ways, but without question could and should be infinitely better. I want to live in that world.
 
*3 Community. We are forced to return to the most basic of tasks and interactions. Coronavirus has restricted us to our homes, but in doing that we have the opportunity to reconnect with our families and be useful in our communities. This proves that even in the darkest of times, positive outcomes can be found. Stay hopeful. In the bad, try and find the good.
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小塚泰彦(morph transcreation 共同代表/トランスクリエイター)
小塚泰彦(morph transcreation 共同代表/トランスクリエイター)

2004年博報堂入社。コピーライターを経て、デザイナーに。ソーシャルデザインに従事しながら、博報堂生活総合研究所研究員を経て、ブランドデザイン部門でコピーライターとアートディレクターを兼務。2012年退社し渡英。Royal College of Art(英国王立芸術大学院)イノベーション・デザイン・エンジニアリング学科MPhilを中退して、リサーチコンサルティング会社FlamingoのリサーチャーだったKieran Hollandと共同でロンドンで創業。「トランスレーションからトランスクリエーション®へ」を標榜して株式会社 morph transcreationを東京で設立。主にグローバル企業の経営企画、ブランド戦略、マーケティング、PR、広告に関する複数言語の言葉のクリエイティブ・コンサルティングを行う。東京とロンドンを拠点として、アトランタやニューヨークにも主要メンバーを持ち、日・英・米・中・韓・独などマルチリンガルなチーム。
会社HP:https://morphtc.com

小塚泰彦(morph transcreation 共同代表/トランスクリエイター)

2004年博報堂入社。コピーライターを経て、デザイナーに。ソーシャルデザインに従事しながら、博報堂生活総合研究所研究員を経て、ブランドデザイン部門でコピーライターとアートディレクターを兼務。2012年退社し渡英。Royal College of Art(英国王立芸術大学院)イノベーション・デザイン・エンジニアリング学科MPhilを中退して、リサーチコンサルティング会社FlamingoのリサーチャーだったKieran Hollandと共同でロンドンで創業。「トランスレーションからトランスクリエーション®へ」を標榜して株式会社 morph transcreationを東京で設立。主にグローバル企業の経営企画、ブランド戦略、マーケティング、PR、広告に関する複数言語の言葉のクリエイティブ・コンサルティングを行う。東京とロンドンを拠点として、アトランタやニューヨークにも主要メンバーを持ち、日・英・米・中・韓・独などマルチリンガルなチーム。
会社HP:https://morphtc.com

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