【前回コラム】「“スベらない”パーパス・ブランディング — 「省エネルック」と「クールビズ」の成否を分けたものとは?」はこちら
表面的な消費者理解では捉えきれない、コロナで変わる変化の本質
現在のコロナ禍によって、消費者の行動や意識が大きく変わっています。
その変化で生まれる新しい欲求と、企業やブランドが提供する価値にギャップが生じてしまうと、ビジネスは縮小方向に向かってしまう。だからこそ、今は事業やブランド、製品・プロモーションの戦略を、消費者理解から点検すべき時だと言えます。
消費者の行動や意識の変化は、共感のスイッチや非共感ポイントも変化させます。私が代表を務めるデコムの共感研究で、「消費者が求めているが実現できていない願望」が、共感を生みだす原動力になっていることがわかっています。その願望をうまく捉えなければ、製品やプロモーションは不発に終わってしまうだけなく、嫌悪感を生んでしまうこともあり得ます。
デコムではこの度、コロナで変わる消費者行動(n=1)1,005件を収集し、インサイト分析を行いました。その結果、Withコロナの消費者欲求が8個、Afterコロナにも続くと考えられる消費者欲求が12個、明らかになりました。
コロナ禍における消費トレンドを、「巣ごもり消費」という現象面だけで捉えても、その背後にある変化の本質は理解できません。近視眼的に現象を追いかけるだけでは、消費者の新しい“欲しいの本質”を捉えたことにはならないのです。
コロナ禍が一定程度の収束をみるまで強まると考えられる“Withコロナの消費者欲求”に加えて、コロナ禍が一定の収束を迎えた後も続く“Afterコロナの消費者欲求”も含めて、ニューノーマル(新常態)における消費者理解を掘り下げるべきです。表面的な消費者理解では通用しない変化が、起きているのです。
ニューノーマル(新しい日常)における20の消費者欲求、「ニューノーマル・プラネット」とは?
分析の全体を通じてわかったことは、これまで存在しなかったまったく新しい価値観が出現するわけではなく、これまでくすぶってきた欲求が加速するという変化が生じていることです。これらニューノーマルにおける20の消費者欲求を、私たちは「ニューノーマル・プラネット」と名付けました。
ニューノーマル・プラネットの一つひとつの欲求は、次の情報で構成されています。
【消費キーワード】
ニューノーマルにおけるビジネス(マーケティング)機会を象徴するキーワードです。消費者の変化で生まれた新しい欲求に応えるために、With/Afterコロナにおいて企業がマーケティングを通じて提供すべき価値を表しています。
【共感スイッチ】
コロナ禍で生活行動の変化を余儀なくされた消費者や、ニューノーマルにより良く適応しようとする消費者が、求めているが十分に充たされていない欲求です。消費者が、その“未充足の欲求”を充たしてくれそうだと感じれば共感が生まれます。共感の心のスイッチともいうべき、企業が応えるべき消費者の欲求です。
【非共感ポイント】
消費者の興味関心が薄く、スルーされてしまう可能性があることを示しています。場合によっては、消費者の反感につながることも考えられるため、企業が感じさせてはいけないことです。
【代表する消費者事象(n=1)】
この消費キーワードを象徴する具体的な消費者の行動。共感スイッチを読み解く基となったn=1の定性情報です。
【Beforeコロナの価値】
ニューノーマルにおいて、消費者が重視する価値の変化を理解するための従前(Beforeコロナ)の価値です。
【WithコロナまたはWith/Afterコロナの価値】
ニューノーマルにおいて、消費者が重視する価値で、企業が提供すべきことです。
今回は、20の欲求の中の一部、消費キーワードである「失われた五感回復消費」と「ソーシャルエクスキューズ消費」の2つについてご紹介します。