100億円の資金調達に成功した起業家が考える「逆張り思考」とは?(ゲスト:dely 堀江裕介)【後編】

【前回コラム】「何者でもなかった18歳は後天的に勝負できる経営を選んだ(ゲスト:dely 堀江裕介)【前編】」はこちら

今週のゲストは先週に引き続き、dely(東京・品川)の社長、堀江裕介さん。今回は、日本最大のレシピ動画サービス「クラシル」が誕生するまでの経緯や、堀江さんがビジネスにおいて大切にしている考えなどをお聞きしました。

今回の登場人物紹介

左から、堀江裕介、中村洋基(すぐおわレギュラーゲスト)、権八成裕(すぐおわパーソナリティ)。

※本記事は12月22日放送分の内容をダイジェスト収録したものです。

「クラシル」より前の事業はやめて正解だった

中村:実はdelyを立ち上げてから、2回ほど事業転換しているんですよね?

堀江:正直、何回やったか分からないですけどね。適当に2回くらいって言っています(笑)。

中村:アプリが2300万のダウンロード数(2020年6月1日時点)を誇る動画サービス「クラシル」が現在のdelyのメイン事業なんですけど、一発でここに行きついたわけじゃない。何回も煩悶する時期があったと。最初はどういう事業に手をつけたんですか?

堀江:始まりは2014年ですね。まだ日本人にあまり目をつけられていない状態の「Uber」が、すでに「Uber Eats」をやっていて。他にもアメリカではCtoCの物流サービスが結構あったんです。さらに、日本の統計を見ていると、今後はECの比率が上昇する一方で、労働人口は減少すると分かって。特に、労働人口が減少して、中でもトラックの運転手さんをはじめとした物流を担う人が足りなくなっていくみたいな。つまり、拡大する市場と縮小する労働人口がいつかクロスして、パンパンになってしまうと理解しました。

それがひとつの大きなニーズだと思いましたね。すなわち、今すぐに物を運んでほしいと望む人を10万人強抱えていたら、大きな価値だよねって話です。そこで、何から始めようかと考えたときに、1日の中で最も注文頻度が高いであろう食事に目をつけて、「Uber Eats」のようなサービスをスタートしました。そこでユーザーを抱えることに成功すれば、他のジャンルの物流でも成り立つだろうと考えて。

で、22歳の時に5000万円くらい資金調達したんですけど、その後すぐにダメになりました。大手も同じ市場に参入する中で、「すごい若手が出てきたぞ!」みたいに取り上げられたんですけど、実態は全然上手くいってない。半年ほどで事業をクローズする結果となり、社員もほぼ全員辞めました。その後も1〜2年は何をやっても上手く行かず、またずっと色々なことを考える時期を経て、適当に「クラシル」をやってみたら当たったっていう(笑)。

中村:いや、そんなことないでしょ(笑)!インタビューか何かで見たのは、資金調達してから急成長を目指して、当時一気に人を増やしたもののダメだった。最後は白い社屋にひとりだけになっちゃって、だらんとしてたみたいな。ちなみに、当時のこと覚えています?

堀江:覚えていますよ!サービスをクローズする瞬間も覚えていますね。

中村:それはやめようって思った瞬間ですか?

堀江:いや、事業をクローズするとなった最後の瞬間。ユーザーさんにメールで通知するタイミングのことです。もう社員のモチベーションも無かったので、サービスが終わるって分かって。最後はオフィスに僕しかいなくて、自分の手でメルマガ送ってから、じゃあ帰ろうってなりました。

中村:うおぉ〜、切ない……。

権八:その時はどういう気持ちでしたか?

堀江:周りからは「悲しかったでしょ?」って言われたんですけど、僕的には別にこのサービスを成功させることが目的じゃないからと思っていて。目的は世の中に影響力を持って孫正義さんみたいになることだったので、ただ単に富士山に登るルートが間違っていただけ。だから、「あぶねー!険しいルート選ぶところだった。良かった、引き返せて」と思いましたね。

中村:んー!なるほどね!

堀江:ちょっとね、危ない道もあるんですよ。僕と同じように考えていた競合が、未だにすごく小さい規模で事業をやっていたりして。自分は1〜2年辛い思いしたけど、切り替えて違うサービスにした結果、その後一気にそういう会社を抜いていったわけです。努力の全部が成果につながるわけじゃないので、どうせだったら効率的な道を進む方がいいと思い切り替えただけ。別に、メンタルが狂うとかもなかったですね。

次ページ 「ゼロから「クックパッド」を倒すために圧倒的なスケールで勝負」へ続く

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