【前回コラム】「告白…「私は、間違ったブランド施策をご機嫌でやりつづけていました」」はこちら
「ブランドなんか大嫌いなブランド担当者が33年かかって、たどり着いたブランド論(実践編)」の3回目は「ブランドの基礎づくり」について、です。
今回のテーマについて話を始める前に前回、第2回の失敗を訂正させてください。
ブランドは、広告でつくるものではありません
「実践編」第2回では、わかりやすさを優先するあまり、うっかりテレビ広告でブランドをつくる話を事例に用いてしまいました。これは実務者ブランドづくりの例としては不適切で大失敗でした。「ブランドづくり」と「広告」の話が一緒に語られる機会が多いことが、実務者を間違えさせる原因のひとつになっているからです。いうまでもなく、ブランドは広告でつくるものではありません。
第2回の記事を読んで、ブランドづくりは、広告を使わないとできない。やっぱりブランドは広告でつくるものだと思われた方がいたようです。
お金をかけなくても、広告なんかしなくてもブランドはつくれます。
実務者ブランドづくりとは、いわば、お金をかけないブランドづくりなのです。
あなたの商品には、すでにブランド(妄想)があります
あなたの商品を「知っている人」や「嫌いではないと思っている人」の頭の中には、すでに何らかしらのイメージ、つまりはブランドが存在します(広告をしていなかったとしても、ブランドは頭の中に存在しているのです)。
でも、そのブランドとは、人任せであり、時の流れに身を任せてできたものです。ですから、そこで抱かれているイメージが、企業や商品の本当の価値と異なっていることもあります(この話は、詳しくはコラム前編の第6回を参照ください)。それだけではなく、せっかく商品がもっているブランド(妄想)が、お金を儲けることにまったく役に立たない場合も多いのです。仕方がありません。それは「勝手に」できるているものなのですから。
実務者ブランドづくりは、「勝手に」ではなく、「意図的に」ブランドをつくるお仕事。儲かることに役立つブランドを意図的につくります。
あなたが、煎餅屋(せんべいや)の店主だったとします。
世の中には美味しい煎餅が溢れているので、美味しい煎餅づくりに毎日励んでいるだけでは儲かる店にはなりません。美味しい煎餅をつくることだけでなく、ブランドづくり(あなたのお店の煎餅のことを知ってもらって、何となく好きになってもらうこと)にも頑張らないと儲けることはできないのです。
でも、あなたは、なんとなく好きになってもらうために、何をしたらいいのかわかりますか?
ブランド(妄想)の基礎・土台となるところを、きちんと決めましょう。
あなたの企業・商品をどんなブランドにしたいのかを決めるには、ブランドの教科書で紹介される方法論が役立ちます。当たり前のことですが、ブランドの教科書に書かれていることは基本的には正しいです。だだ、教科書のやり方だけだと、実務において正しい答にたどりつかないので、教科書の方法論に、実務者方法論を足し算することが必要になります。
ブランドの基礎づくり、土台となる部分で決めるべきなのは、ブランドの教科書に書いてある
①ブランドアイデンティティ(存在価値)
②ブランドプロミス(約束)
③ブランドパーソナリティ(人格・個性)
の3つです。
①②③の英語部分、つまりブランドアイデンティティ、ブランドプロミス、ブランドパーソナリティ等のブランド用語や定義については、ここで示した以外にもブランド論の世界にはいろいろ存在します。ブランドミッション、ブランドバリュー、ブランドビジョン等々です。最近の流行はブランドパーパスでしょうか。実務者にとっては、バリューだろうが、アイデンティティだろうが、カタカナの部分がどんな言葉であるかは正直どうでもいいです。ざっくりといえば、ブランド論の世界における宗派や時代による違いだけですから。
重要なのは日本語の部分「存在価値」と「約束」と「人格・個性」です。この3つで十分ですし、この3つだけは、絶対に必要といえます。