ブランドたちは、どう反応したか。
パンデミック下の苦しい生活に寄り添う意思を宣言したものから、リモート生活を題材にしたもの、そしてパンデミック後の明るい未来を感じさせるものまで、たくさんのブランドによるコミュニケーションがこの数カ月の間に生まれました。そして今、この人種差別問題に対しても、様々なブランドが声を上げています。もちろん過去にも、このテーマを扱ったコミュニケーションは存在しましたが、これまでと大きく違うのは、より「行動」が求められていることだと感じています。
例えばナイキは、ブランドスローガンの「Just do it」をモチーフに、「Don’t do it」という言葉を使って、この問題に対する会社の姿勢を示すビデオをいち早く制作。上手に練られたコピーワークとシンプルで力強い映像に感銘を受ける人が多くいた一方(ライバルのアディダスもこのビデオを賞賛し、シェアしました)、「で、言うだけじゃなく、何をしてくれるの?」「そもそもナイキ の会社の幹部は、白人だらけ。広告で使うアスリートは黒人ばっかりだけど」というような批判の声もありました。
広告としてだけでなく、これまで以上に多くのブランドがPRや声明を通じて、彼らがいかに真摯にこの問題を捉えて対応していくかを発表しました。総じて言えるのは、「行動」を伴わない口だけのブランドは批判を浴び、「行動」を伴うブランドは支持されるという構図があります。この際の批判とは、社外からの批判のみならず社内の社員からの批判もあることがポイントです。そしてここでいう「行動」とは、「アフリカン・アメリカンの雇用を増やすこと」だったり「支援金を寄付すること」だったりします。
従来では、こういった社会問題に対する態度や行動が問われるのは、政府や公共機関のみだったのですが、今回のように、より会社やブランドにも求められるようになったのは、新たな動きだと感じました。考えられる理由としては、「なかなか変わらない・変えられない」政府よりも、自分たちが働いている会社やブランドから「変えていく・変わっていく」ことの方が、より早く、効果的だという意識と狙いがあるのではないかと思います。
さらにこの「行動で明らかにしていく」ということは、クライアントサイドだけの話ではなく、代理店やプロダクションといった我々クリエイティブコミュニティにおいても言えることです。バーガーキングのグローバルCMOであるFernando MachadoがTwitterで投稿した内容が、それに関して以下のように端的にまとめています。
「親愛なるクリエイティブコミュニティの皆さんへ。どうかこれ以上、アフリカン・アメリカンコミュニティをサポートしていることを言うだけの、話題づくりのためのアイデアを送ってこないでください。その代わりに、あなたの会社でもっとアフリカン・アメリカンの人々の雇用を進めてください。そして私たちの会社のダイバーシティプログラムを推進するために手を貸してください。広告ではなく、行動を。」
今ほど、広告のためのアイデアだけではなく、行動のためのアイデアが求められていることはないのです。