三井化学は6月25日、炭鉱電車にまつわる音をASMR音源化し、「MIIKE RAILWAY (1891-2020) ISSUE」として公開した。同社の大牟田工場(福岡県・大牟田市)で100年以上にわたり活用されていた炭鉱電車への感謝を込め、未来に向けたレガシーとして活用するために実施している「ありがとう炭鉱電車プロジェクト」の一環となる。ASMR音源のほか、アーティスト・プロデューサーのSeiho氏によるコラボレーション楽曲も同日公開した。企画は、quantumとオトバンクによる、音で企業ブランドなどを表現するレーベル「SOUNDS GOOD®」がともに手がけた。
今回公開した「MIIKE RAILWAY(1891-2020)ISSUE」の音源は、「車掌室3.6」「大解剖、炭鉱電車100年の音」「珍しい踏切と手動の線路切替レバー」「宮浦駅のレトロなものたち」の4種類。SoundCloudなどで配信するとともに、画像の中に埋め込まれた二次元コードを読みこむことで、画像と連携した音を聴くことができる。この画像はポスターなどに使用し、大牟田市内で掲出予定だ。また、これまでのSOUNDS GOOD®のプロジェクトと同様、楽曲制作をする全てのアーティストにサンプリング音源として無料で提供される。
Seiho氏が、「炭鉱を運びその先につながっていく世界、廃止になっても地元や工場の方々の記憶の中で走り続ける電車をイメージして曲をつくりました」と話す楽曲「Sampling – “MITSUI CHEMICALS on SOUNDS GOOD”」は、実際に同氏が、福岡県大牟田市の現場まで足を運び、音源の録音からプロジェクトに参加。炭鉱電車にまつわる音の魅力をアーティスト目線で集音して制作に取り組んでいる。
この楽曲は、SoundCloudなどで配信されるほか、「ありがとう炭鉱電車プロジェクト」の取り組みの一つとして、映画監督であり2020年から大牟田の大使を務める瀬木直貴氏のもと、制作される映像詩「紅い恋人~炭鉱電車に捧ぐ」で、映像用にアレンジしたものが使用予定だ。
三井化学 コーポレートコミュニケーション部 松永有理氏は、次のようにコメントする。「私たちの記憶と密接に関わっている『音』。普段は何気なく聞こえている環境音も、無くなると案外寂しいものだったりします。今回、100年以上の長きにわたり大牟田の町中を走ってきた炭鉱電車の廃線により、町の人にとって普段は気にも留めないその音が失われることは、後になって寂しさとともに思い出されることもあると思います。そんな時、ふと聞いてみることで、音だけでなく景色まで伴って色鮮やかに思い出してもらいたいと思い、『音の記憶』を記録化したいと思いました」。
また、SOUNDS GOOD® 安藤紘氏は、「コロナの影響で当たり前にあったものがなくなってしまうことが、これから当たり前になっていのかも知れません。でも、そういったものを悲しんでお見送りするのではなく、一緒に音として未来に意味のある形で残したいと考えています」と展望を話している。