「勉強と楽しさのループ」をつくれる組織へ。伊沢拓司「QuizKnock」成功のきっかけとは?

※本記事は株式会社マスメディアンの『advanced by massmedian』に掲載された記事を表示しています。

ファッションデザイナー、起業家、インフルエンサーなどマルチに活躍するハヤカワ五味さんがパーソナリティをつとめるTOKYO FMの番組「マスメディアン 妄想の泉」。この番組では、さまざまなフィールドで活躍する起業家やクリエイター、アーティストをゲストに迎え、未来を面白くするヒントを“妄想しながら”探っていきます。6月27日(土)の放送は、“クイズ王”こと伊沢拓司さんが登場しました。

「高校生クイズ」で史上初の2連覇

伊沢さんは、東京大学在学中の2016年にWebメディア「QuizKnock(クイズノック)」を立ち上げ、チームでYouTuberとしても活動。公式YouTubeチャンネル「QuizKnock」のチャンネル登録者数は、およそ140万人という人気ぶり。また「東大王」(TBS系)などのクイズ番組をはじめ、マルチに活躍しています。

そんな伊沢さんが、初めてテレビ出演したのは2010年。16歳のときに“高校生クイズ”こと「全国高等学校クイズ選手権」(日本テレビ系)に出場し、優勝。翌年も出場し、史上初の2連覇を達成。“クイズ王”として、テレビ界でも2年近く活躍していたそうですが、「2012年くらいから“クイズ王”を決めるようなテレビ番組が消えてしまって、クイズ王だと示す機会がなくなった。2015~2016年あたりまで、ほとんど出番がなかった」と言います。

再び転機が訪れたのは2016年。「東大生ブームが起こって。(明石家)さんまさんの番組で“東大生をいじったら面白いやん”みたいになって、それから、各局が東大生を呼び始めて。そして、東大生を呼ぶなら“クイズ番組”“難しい問題を出そう”となって、そこからようやく“クイズ王”っぽい番組が始まって、だんだんと盛り上がっていった」と振り返ります。

ハヤカワさんが「クイズって、答えがあるものを探し当てるから、妄想と少し離れたところにあるような印象」とイメージを語ると、伊沢さんは「クイズをつくるとき、“答え”からつくっていくやり方もあるけど、“こういう事実があったら面白いな”ということを探していくやり方もあって。クイズ作家として、“妄想”は好きですよ」と語ります。

なかでも「アメリカ横断ウルトラクイズ」(日本テレビ系)の“〇×クイズ”は、とても面白いクイズが集まっていたそうで、「過去に『タイガー・ウッズは寅年生まれである』という問題が出て、これは妄想しないとできない問題なんです(笑)。12分の1の確率だし、めちゃめちゃ面白い問題だなと。ちなみに、答えは『×』なんですけど(笑)。クイズは、“妄想じゃないつくり方”と“妄想のつくり方”があって、僕は妄想のつくり方がめっちゃ好きです」と打ち明けます。

“消去法”でクイズ研究部に

そもそもクイズとの出会いは、「偶然だった」と伊沢さん。中高一貫の私立開成中学校・高等学校に通っていた伊沢さんは、中学生時代に「部活の勧誘会があって。僕は運動部に入ろうと思っていたので、ひと通り名前を書いて“そこから削っていけばいいや”と。ちょっと時間があったので、クイズ研究部の“早押しクイズ体験ブース”に遊びに行ったんです。それが面白かったので、仮で入部しておこうと思って、名前だけ書いておいた」と意外な経緯を説明。

結局、最初はフットサル部に入部しますが、ふたを開けてみると伊沢さん以外みんな高校生だったそう。「フィジカルがついていけなくて(苦笑)。すぐに辞めてしまったんです。しかも、運動部って、途中入部ができなかったので、残っていたのが(名前を書いておいた)クイズ研究部しかなくて、ほぼ消去法のような形で入った」と話します。

そんなスタートながら、「やってみたら面白いし、当時はクイズブームではなかったので、競技人口が少なくて、大会に出るとすぐ上に行ける世界だった。結果が出やすいのも大きかったし、人数が少なかったので、先輩たちが優しくしてくれたのもすごくよかった」と徐々にクイズにのめり込みます。

そして、「チームでクイズをやるときに、一番楽しいところは“補い合えること”。サッカーや野球だと、ポジションがあるので自分のやるべきことがある。でもクイズは、3人でやる場合、3人の知識をそのまま足し算して“ドカン!”と出せる。そういう意味では、自分の実力を高めることが周りを助けることになるし、自分の足りない分野も得意な人さえ連れてくれば一気に補えるので、チームプレーとしても、すごく足し算がしやすいのがいいところ」と魅力を熱く語ります。

「QuizKnock」立ち上げのきっかけ

その後、「QuizKnock」を立ち上げた2016年当時は「世界的に、フェイクニュースが問題になるなど、情報はたくさん流れてくるけど真偽が怪しく、バイラルメディアの記事の質が低かった。そうした状況を見て、“クイズが活きるかもしれない”と思った。

クイズは、情報を能動的にとる手段。“答える”というのは、答える前に自分で考えなければならない。聞いた情報をもとに、自分で考えて、答えをつくって、その答えが合っているかどうかの情報を確認する、という流れだから、ニュースを流し読みして、受動的に情報を得るのとは“違うな”と思った。ニュースを受け身のままで得ていると流れていってしまうし、情報が合っているのか、間違っているのか、という部分になかなか目が向かない」と説明。

そこで、いままで自身が培ってきた「クイズのいい部分が、社会の役に立てるのではないかと。それができるWebメディアをつくろうと思ったのが、『QuizKnock』立ち上げのきっかけでした」と明かします。

YouTubeを始めて得た“気づき”

伊沢さんが「QuizKnock」を立ち上げときは、大学院への進学が決まっていたため“将来的には研究者かな”との思いもあり、会社化することは頭になかったそう。

しかし、「周りには、僕よりも“すごいな”と思う学生がたくさんいた。その人たちは、大学で学問に触れているので、正確に記述することや情報の捉え方などにとてもセンシティブな人が多かった。だから、その人たちの情報の取り扱い方は社会の役に立てると思ったし、どんどん学生を循環させていける組織、学生の発想を僕たちがうまく記事化して、世の中に届けてあげられる“知の交差点”みたいなものをつくりたい、と妄想していた」と言います。

立ち上げ当初は、Webメディアのみでのマネタイズ(収益化)に苦労したそうで、「学生たちにお願いしているからには、ちゃんと給料を出したかったので、どんどん苦しくなっていった。半年くらいは、ずっと伸びなくて……打破できるようなきっかけがほしかった」と振り返ります。

そんななか、仲間から「YouTubeをやってみよう!」と提案があったものの、伊沢さんは「いまWebメディアをやっているのに、YouTubeをやる余裕はない」と反対。ところが、その反対を強引に押し切る形でYouTubeがスタートしたそうで、「周りの行動力がすごかった。やってみたら、そっちの人気が出てきて(笑)」と予想外の反響が。

それを目の当たりにした伊沢さんは、これまでの“能動的に情報を摂取してもらう場”としてではなく、「『QuizKnock』というサービス全体が、我々の“知の楽しみ方”“知識とどうやって遊ぶか”みたいなところを具体的に示す場なんだな、と。“楽しみ方のディスプレイ”プラス“実際に観ている人も楽しめる”という両輪で『QuizKnock』というサービスを回していけるな、と自信がついた」と心境の変化があったそう。

それからというもの、「コンセプトを、“能動的に知を得る”から“楽しいから始まる学び”に転換した。楽しいから勉強をしたくなるし、勉強をすることによって、より楽しくなる。このループをつくれる組織になれればいいな、という妄想が、いまの『QuizKnock』をつくってくれた」と話していました。

【この記事の放送回をpodcastで聴く】


<番組概要>
番組名:マスメディアン 妄想の泉
放送日時:毎週土曜 24:30~25:00
パーソナリティ:ハヤカワ五味
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/mousou/
番組Twitter:@mousou_tfm


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