父は世界的指揮者、母はモデル。超芸術一家のプライベート秘話が明らかに(ゲスト:小澤征悦)【後編】

実は、もともと監督志望だった

権八:リリーさんはまさにモノ書きで、独特の佇まいでやっている方だと思うんですけど、小澤さんは若い頃からお芝居をやられていたんですか?

小澤:訓練というか、そういうことですか?

権八:どういう経緯で俳優に?

小澤:もともと子どもの頃に映画が好きで、単純に「監督とかできたらいいなぁ」と思っていたんですよ。マニアックに好きだったわけじゃなくて普通に『E.T.』とか、『インディー・ジョーンズ』『スター・ウォーズ』とか。大学時代に、一年間休学してボストン大学に語学の勉強で留学したんですね。その時に語学をやりつつ、もうちょっと自分のやりたいことがないかなぁと思って、映画を撮る方の勉強も始めたんですよ。カット割りの勉強とか。そうしたらやっていくうちに撮られる方、まぁ役者ですよね。

芝居もちょっと勉強してみようかなと思って、アクティングクラスも受けてみました。そこでやっていたのが、「スタニスラフスキー・メソッド」っていう、例えばジェームズ・ディーンとかマーロン・ブランドとかがやっている昔からある演技法なんですよね。一番有名なのが「リンゴの木になってください」という。リンゴの木になるってどういうことなんだろう?両手を広げて立てばリンゴの木になるのか、もしくは内面的に考えたり。

あとは「エチュード」といって台本なしで、兄弟とか家族とか恋人とか設定だけ決めて、芝居を始めるんです。そういうクラスを受けていて、期末テストではひとり芝居をしたんですね。終わった時に先生が「ワンダフル!」って言ってくれて、「自分のやっていることを、人が見て何かを感じとるってすごいことだな」って思って。役者って面白いんだなぁって思ったのがきっかけで役者になったんです。ただ最初にあった監督業ということも、いまだに夢ではなくて目標として持っていますので、いつかやりたいなぁと思っています。

澤本:もともと監督志望だったんですか?

小澤:そうです。だからよく現場でいろんな人の芝居とかを見ちゃうんです。あと監督が現場で何をやっているかも、「なるほどこうやって撮るんだー」とかね。役者って主観なのであんまり客観的になっちゃいけなくて、自分の役からみた主観としているべきなんです。客観とか俯瞰とかになってくると変わってきちゃうので。ただそうやって見ちゃう時はありますね。

中村:小澤さん、ご家庭がすごいから勝手に超芸術一家なのかと思っていました。

小澤:どうですかね。ただ表現という意味でいうと、うちの親父はクラシックを通じて自分を表現していますし、母はもともとモデルで。姉はそれこそモノ書きで小説やエッセイを書いたりしているので、まぁ、その影響があったかもしれないですね。

中村:厳格なご家庭だったりしたんですか?

小澤:全然違います。

中村:好きにやれみたいな?

小澤:もう好きにやれですね。うちの親父は指揮者で舞台上だと厳しい顔をしていますから、すごく厳しい人なんじゃないかという風によく言われるんですけど、うちでは本当に変な話、パンツ一丁で新聞読んでいるような人ですから。

澤本:へぇーーー!あの世界的指揮者が!?

小澤:あの世界的指揮者が。俺が言っちゃダメですけどね(笑)。そういうフランクな人なので、クラシック音楽も逆に「やるな!」って言われていましたから、子どもの頃。

澤本権八中村:へぇーーー!!

小澤:大変だから。「大変だから」って言葉の中には、自分と同時期に音楽を志して途中でいろんな形で挫折していった仲間とかを見ているので生半可にはね……。自分は努力したけれど、ここにいられるのは運もあるっていうことを知っている人なので。おそらくうちの両親はちゃんとした会社に勤めることを望んでいたかもしれないです。けど、気が付いたら役者っていうね。ほぼ変わらない、不安定な道を選んでしまった自分がいますけれども。血は争えませんね。

次ページ 「小澤家は根っこがおかしい!?」へ続く

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