freeeが提案した「#取引先にもリモートワークを」80社超が賛同するまで

6月1日には新たに「宣言文」を発表

5月に緊急事態宣言が全面解除されたのち、6月1日には新たに本プロジェクトの「宣言文」を発表している。「仕事のやり方、元通りはもったいない。」という呼びかけから始まり、「人のことを思いやれるいい距離感をリモートと呼びましょう。」「いいキョリで、いいシゴトを。これからも。」といったフレーズが盛り込まれている。

6月1日には「宣言文」を発表。

5月の段階で、6月以降に多くの企業で「従業員を出社させるべきか」を迷う事態が想定された。だからこそ、この宣言でfreeeが伝えたかったのは「緊急事態宣言の解除以降も、相手を思いやる働き方を続けていきましょう」という思いだ。

navy Experience Designer/Creative Director 才川翔一朗さん

この宣言文を手がけたのはADKグループのクリエイティブブティック・navyのクリエイティブディレクター、才川翔一朗さん。ADKは賛同企業のうちの1社で、次なる展開のメッセージを共につくり上げるメンバーとして参画した。

才川さん自身も個人の実感として「このまま元の働き方に戻ってしまったらもったいないのでは」という強い思いがあった。そこから生まれたのが「仕事のやり方、元通りはもったいない。」というコピーだ。

「リモートワークはリアルの代替ではないし、アナログと共存していくべき部分もある。つまり相手を思いやって、働き方や距離感を選ぼうという意志を表現できればと考えました。“いい距離感”は職種や業界によって違うので、ソーシャルディスタンスならぬ、ビジネスディスタンスを考えるきっかけになればという思いでした」。

freeeとしても、企業の判断が分かれるなかで「働き方をもとに戻すべきではない」などといった強い提言をしたかったわけではない。「リモートワークができる会社は進んでいるのだと主張したいわけでもないし、そのように思われたら本意ではありません。そんな私たちの真意を的確に表した言葉が『もったいない』。今のスタンスに近い表現だと思いました」(山本さん)。

この宣言文は賛同企業のプレスリリースや、各社のトップらがSNSで発信する際にも使われ、シェアされるなど反響を呼んだ。「今回は賛同企業の皆さんのスタンスを表現する社会記号としてこの宣言文と向き合い、シェアされたという現象が多くの目に留まることが重要だった」と才川さん。

 

宣言文の制作期間は、5月の連休明けから約2週間。インハウスのコピーライターとして関わる銭谷さんも「プロジェクトの賛同企業と一緒にメッセージをつくり出す、という関係も新しかった。通常の広告制作プロセスにはない座組みでした」と振り返る。ちなみに、このチームは6月末現在、まだリアルの場で顔を合わせていない。完全にリモートで制作を進めた形だ。

「行動を喚起する」企業ブランドへ

特に、freeeという会社にとって企業ブランディングに取り組む目的は「いかに行動を喚起できるか」という点にある、と銭谷さんは考える。

「今や企業はパーパスやビジョン、ミッションを掲げるだけでは意味がない。これらに共感し、同じ目的のもと行動する人を増やしていく存在であるべき。ブランドは“管理・コントロールするもの”と思われがちですが、これからのブランドは、パーパスに対して社員、ユーザー、取引先も行動できるテーマと場所をつくる“ブランドエンパワーメント”という機能が求められていると思います」。

金融事業部門を統括する山本さんも「機能性や競争優位性の訴求だけでは、事業への賛同を得ることが難しい。スモールビジネスであるほど、ブランドが必要」と感じている。「特に中小企業の経営者の意思決定は、その事業が持つ世界観への共感といった要素も重要になる。そういうときに『freeeって、なんかいいよね』と思わせてくれるブランドがあることは強いです」。

今回のプロジェクトを通じて、銭谷さんはインハウスのコピーライターの立場から改めて実感したことがある。それは「クライアントの器を超えるクリエイティブは生まれない」ということだ。

「だからこそ、クリエイターと共創でアウトプットできる関係をつくることが重要。僕らがオリエンをして、案を出してもらって、さあ選びましょう、というプロセスでは今回のような表現は生まれなかったはず。同時に、事業主側も成長しながら、すべての社員にクリエイティブ発想を根付かせていくことも大事だと思います」。

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