監督は「王様」として君臨しなければいけない
権八:澤本さん今回は現場によく行ったんですか?
澤本:よくは行ってないけどロケの時とか……。
浜崎:たまにね。
澤本:でもそれは、CMのようにディレクターの横に僕がずっと座っているとダメだって言われたから。
権八:そうなんですか?
澤本:うん、現場で監督は王様として君臨しなきゃいけないじゃない。CMの時は、僕が横にいて「はまちゃん、セリフこう変えて!」って……言って。
中村:リスナーに説明すると、澤本さん、権八さんみたいなCMプランナーって、撮影する時に監督の横にいて、コンテの中にないんだけど現場で思いついた「これ面白いんじゃない?」っていうことを監督に口添えしたりすることがあるんですよね。そうやって現場の中の空気感からたまたま生まれるものをうまく取り込んでいくというのがあって……。それをやっちゃダメなんですね?
澤本:僕がそういうふうにやっているとまず進まないじゃない。進行として遅いし。
中村:確かに。
澤本:あと何か横にうるさそうな奴がいて、こちょこちょ監督に言ってるぞっていう。いろんな役者さんから見ると、まず僕もいらないし「監督もうちょっとしっかりしろよ!」みたいに言われちゃう。
浜崎:見え方としてね。
澤本:だから僕が一番はじめの面接の時に監督の横に座ったことがあったんだけど、後で「澤本さん、監督の横にいない方がいい」って言われて。それからずっと後ろの方でお菓子食って……。
一同:(笑)。
澤本:映画はやっぱり監督が走り切らないと、CMみたいに横に人がビタッといすぎるとたぶんできないですね。映画自体ははまちゃんのものなんだな、ってその時思ったんですよ。
中村:素人には分かんないんですけど、テレビCMだと演出コンテがあって、それが実際に撮るカットを表しているじゃないですか。映画はないから……。
浜崎:映画はないですね。
中村:助監督とかカメラマンと、どういう説明をしてつくっていくんですか?
浜崎:あれが不思議で、スタッフがその日に集まって、このシーンを撮るぞとなったら、「じゃあとりあえず芝居をやってみようか」とバーッとみんなで演技を見て。そこから「あ!こういう動きをするんだ」とカット割りを決め始めるっていう……。
中村:えーー!
浜崎:そこから頭の中でコンテをつくっていくというか。それが日本映画のスタイルなんですって。すごい大勢のシーンはコンテがあったんですけど。絵コンテないと人が多いんでみんな右往左往するし、いろんなキャストが勢ぞろいする時は割と絵コンテがあって、その通りに撮ってくみたいな。でも毎回はコンテはなくて、どうやってカットを割っていくのかっていうと、台本が指針になっているんですよ。
権八:それは絵コンテを書いちゃった方が楽ってことはない?
浜崎:でも現場でけっこう変わるんですよ。例えば僕が思った以上にこの人すごく動き出したとか、カメラのアングルを変えないとこの絵コンテ通りにならないとかがあって。あと思ったより現場でやったほうが面白くて、じゃあこうやって撮ろうかとなるから意外と絵コンテが崩壊していくんですよ。
その人間の立ち位置とかでも随分変わっちゃうし、なかなか思ったようにいかないから、現場でこうやった方がいいなって思うことがけっこうある。CMの場合は多くて20カット、30カット以上になることはないからね。映画って意外とカット割りじゃなくてみんなストーリーを見に来ていたり、流れを見に来ているから、長いストーリーを細かく割ってあんまりガチャガチャやるものではないなと思ったり。とにかく芝居が大事だと思って……。
権八:こんな真面目な話をしているの、初めて見た!
浜崎:ほんと?そう?確かにそうかも(笑)。
権八:一切笑わずにしゃべってたもん。