SDGsで、ブランドなんかつくれません! 「ブランド論の幻想」に反論します。

企業を好きになるポイントは、時代によって変化する

では、なぜ大企業においては、SDGsでブランドづくりは正しいのでしょうか?

『世のため人のため地球のため』は長いので、最新のはやり言葉である「SDGs」で説明します。

なぜ大企業においては、SDGsを掲げたブランドづくりが正しいということになるのでしょうか? ブランドをつくる(最終)目的は、あなたの企業・商品が儲かること、これはいつの時代も不変です。しかし、儲かるためには、あなたの企業・商品を「なんとなく好き」になってもらうことが必要です。

人が「〇〇」を好きになるポイントは、「〇〇」が変われば当然、異なります。

人が「異性」を好きになるポイントと、「ポテトチップス」を好きになるポイントと、「大企業」を好きになるポイントが異なることは言うまでもないことです。

そして、その好きになるポイントや基準も、時代によって変化します。

重要なことは、「好きになるポイントが時代によって変化する」ことを認識し、昭和や平成ではない令和時代の好きになるポイントをきちんと理解し、そのポイントでブランドをつくることです。

たとえば、人が異性を好きになるポイントは、時代によって変わってきました。

異性を好きになる際の重要なポイントのひとつは(残念ながら)容姿です。

平安時代から鎌倉時代の美人は、「しもぶくれ、たれ目、おちょぼ口、長い髪」といわれています。百人一首のかるたに書いてある姫の顔を思い浮かべてください。今の時代と美人の基準が異なりますよね。好きになるポイントや基準が変わったことがわかります。

企業を好きになるポイントも、昭和から今の時代では変わってきています。

昔は、「よいものをつくって、(安く)提供する企業」に対して生活者は好意を抱きました。

今でも、小さな煎餅屋さんであれば、「よいものをつくって提供する」ことでも好きになってもらえます。「醤油煎餅にこだわる」を自らのブランドアイデンティティ(存在価値)とし「山形県の米と醤油にこだわる醤油煎餅が日本一美味しいと思っていて、あなたもこの醤油煎餅を食べたら絶対美味しいと思う」をブランドプロミス(約束)と決めて、努力すればなんとなく好きになってもらえそうです。
※「なぜ、煎餅屋?」と思った方は、本連載の前回前々回記事を参照ください。

一方で、大企業の場合はどうでしょう。

今回は、巨大な保険会社を例に考えてみます。

ある巨大な保険会社の
ブランドアイデンティ(存在価値)を「困っている人を助けたい」
ブランドプロミス(約束)を「困っている人が求める保険をどこよりも安く提供します」
だとします。

巨大な保険会社は、この「約束」を果たそうと努力しますが、競合企業がすぐに追いかけてきます。結果的に「どこよりも安く保険を提供する」約束が果たせないケースがよくあります(煎餅屋ならともかく、巨大企業ではすぐに競合に真似をされるのです)。

それより重要なことは、今の時代においては「安く提供することが、必ずしも好きになってくれるポイントでない」ということです。仮に「約束」が果たせたとしても、好きになってもらうのは難しいかもしれません。

次ページ 「「存在価値」を、生活者が好きになってくれる視点に変換するのが「約束」の役割」へ続く

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片山 義丈(ダイキン工業 総務部/広告宣伝グループ長/部長)
片山 義丈(ダイキン工業 総務部/広告宣伝グループ長/部長)

1988年ダイキン工業入社、総務部宣伝課に配属。1996年広報部 広報担当、2000年広報部広告宣伝・WEB担当課長を経て2007年より現職。業界5位のダイキンのルームエアコンを一躍トップに押し上げた新ブランド「うるるとさらら」の導入や、ゆるキャラ「ぴちょんくん」ブームに携わる。現在は 統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)による企業ブランド構築、マスとデジタルのB2C商品広告展開、広告媒体の購入、グローバルグループWEB統括を担当。日本広告学会員。

片山 義丈(ダイキン工業 総務部/広告宣伝グループ長/部長)

1988年ダイキン工業入社、総務部宣伝課に配属。1996年広報部 広報担当、2000年広報部広告宣伝・WEB担当課長を経て2007年より現職。業界5位のダイキンのルームエアコンを一躍トップに押し上げた新ブランド「うるるとさらら」の導入や、ゆるキャラ「ぴちょんくん」ブームに携わる。現在は 統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)による企業ブランド構築、マスとデジタルのB2C商品広告展開、広告媒体の購入、グローバルグループWEB統括を担当。日本広告学会員。

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