コピーライターは、褒メサピエンスだ。

本コラムが書籍化されました!

【2022年6月20日発売】
『わたしの言葉から世界はよくなる コピーライター式ホメ出しの技術』

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仕事がオンラインに切り替わってから、
ついTwitterを見る時間が増えました。
つい、仕事と仕事の間に。
つい、あまり面白くないオンライン会議中に。
つい、長い上司の話の合間に。
ついtter。

ただ、クソリプに代表されるような、
「ダメ出し」があまりに多いのが気になります。
面と向かっては言わないことを、匿名で、
直接会う機会はきっとないだろうからと、
辛辣で悪意のこもった言葉で、
だれかを攻撃している場面をよく見ます。

Twitterだけではありません。
企業では上司が部下にダメ出して、
OB訪問では諸先輩方が学生をダメ出して、
家ではママがパパをダメ出しします。
コロナ禍において、
ますますダメ出しの総量が増えている実感があります。

何故でしょうか?
一つには、「ダメ出すのは簡単だから」
というのがあります。
相手が何を言っても、しかめっつらで、
「おもしろくない」「俺はどうかと思うよ」
「考え直してきて」
と言うのは実に簡単です。

また、超情報社会の到来により、
だれもが日々大量の情報に触れるようになり、
「自分って物知り」「人より賢い」 と
勘違いをしはじめたことも大きいと思います。
いわゆる1億総評論家、
総ツッコミ社会です。
それにより、自分の価値観からズレた人を見下したり、
嘲笑したり、叩く傾向が強まっています。

これは「呪いの時代」とも言えます。
マイナスな言葉を相手に放つことにより、
生気を奪い取り、相手を弱らせる。
ダメ出しは呪いです。
社会がどんどん窮屈になってきていると感じるのは、
呪いが蔓延しているからかもしれません。

だからこそ私は「祝いの時代」
つくりたいと本気で思っています。
こういうと「頭の中お花畑」と、
またクソリプが飛んでくるのは百も承知です。
でも、それを具体的につくりたいと思っています。

実は私は、知り合いから
「澤田からかけてもらった言葉を今でも覚えている」
「あのときもらった言葉を糧にしている」
と言われることがよくあります。
つまり、日常的に祝いの言葉をつくり、
大切な人に届けているとも言えます。

では、私がもともと人を「祝う」ことが
得意なタイプだったのか?

全然そんなことありません。
むしろ逆です。

私は帰国子女で、日本の大学に入るまで、
13年以上を海外で暮らしていました。
自分がアジア人で、
英語が不得意という事実に押しつぶされ、
なかなか海外の学校に馴染めずにいました。

いつしか人が苦手になっていました。
人の目を見て話すことができなくなりました。

高校3年生のとき、
私は自分を見られることさえも嫌になりました。
朝だろうが屋内だろうが
サングラスをかけていました。

そんな私が何故、
人にポジティブな言葉を積極的にかけるようになったのか?
それは、私がコピーライターとして働いているからです。

そもそもコピーライターとは何者でしょうか?
その定義自体、時代と共に揺らいでいくため
何をしているかピンとこない方も多いと思います。
端的にいうと、
「言葉を活用し、企業や社会、そして人をより良い状態へと導く人」
です。

分かりやすいのは、
「おいしい生活。」「そうだ 京都、行こう。」
のように、企業広告やキャンペーンなどに
使われるキャッチコピーを書く仕事です。
コピーライターが書いた言葉を、
皆様もネットやテレビ、
電車の中などあちこちで自然と目にしています。

また、企業の理念や姿勢を体現する
「企業スローガン」「タグライン」、
ときには「ビジョン」「ミッション」を
経営者や経営陣の皆様と一緒に考えることもあります。
「社名から一緒に考えてよ」と言われることもあります。
また、行政や自治体のキャッチコピーや、
県全体のスローガンを考えることもありますし、
社会の現象に名前をつけることもあります。

コピーライターのお作法を紹介します。

まずは対象となる商品や企業を「信じる」こと。
そして徹底的に「観察」。
すると、必ず魅力の「発見」へとたどり着きます。
あとは適切な言葉でそれを「表現」する。
これでコピーの完成です。

この一連の姿勢とステップを、
私は「コピーライター思考」と呼んでいます。
そして、ある日気づいてしまいました。

コピーライター思考は、
ふだんのコミュニケーションにおいても有効なのではないか?

お気づきでしょうか。

実はコピーライター思考とは、
「ダメ出し」の真逆の思考法なのです。

相手の粗探しをしたり、
否定的な言葉を投げつけたりするのではなく、
徹底的に相手の魅力を観察し、
発見し、そして言葉にする。
つまり、全力で褒めることなんです。

私は、それを商品やサービスや事業や企業や自治体や
アーティストを起点に行うのと同様に、
目の前にいる大切な人に行うようにしています。

それは、友人でも家族でも
後輩でも取引先でも、誰に対しても。
すると、どうなるでしょうか?

記憶に残る言葉をプレゼントすることができます。

それによって圧倒的にいい人間関係が生まれます。
結果、自分も大きな幸せを感じます。
コピーライター思考は、好循環しか生まないのです。

そう、コピーライターとは、
褒める機能が異様に進化した、
褒メサピエンスなのです。

この連載では、読んだ人全員が、
漏れなく褒メサピエンスに進化することを目指します。

このコピーライターが生み出す言葉を
「褒め」と呼ぶことが的確なのか?
もっと塩梅のいい言葉があるのではないか?
そのあたりも探りながら書いていこうと思います。
無心で書いた先に答えが見つかることは、
コピーライターとしてはままあることだからです。

相手を褒めるのは、簡単なことではありません。
脳に汗をかかなければいけません。
格闘です。
ときには時間がかかります。
中々いい発見に至らないかもしれません。
適切な表現法が見つからないかもしれません。
でも、それでいいのです。
罵詈雑言で相手を倒すのではなく、
褒め倒すんだという
その態度がまず重要なのです。
ダメ出しではなく、ホメ出しへ。
お付き合い、どうぞよろしくお願いします。

澤田智洋(コピーライター/世界ゆるスポーツ協会代表)
澤田智洋(コピーライター/世界ゆるスポーツ協会代表)

1981年生まれ。幼少期をパリ、シカゴ、ロンドンで過ごした後17歳の時に帰国。2004年広告会社入社。映画「ダークナイト・ライジング」の『伝説が、壮絶に、終わる。』や、アミューズメントメディア総合学院の「あなたが生まれなければ、この世に生まれなかったものがある。」等のコピーを手掛ける。2015年に誰もが楽しめる新しいスポーツを開発する「世界ゆるスポーツ協会」を設立。 これまで80以上の新しいスポーツを開発し、10万人以上が体験。海外からも注目を集めている。 その他、UNITED ARROWS LTD.と取り組んでいる、一人を起点に新しいファッションを開発する「041 FASHION」、オリィ研究所と共同開発している視覚障がい者アテンドロボット「NIN_NIN」など、福祉領域におけるビジネスを多数プロデュースしている。

澤田智洋(コピーライター/世界ゆるスポーツ協会代表)

1981年生まれ。幼少期をパリ、シカゴ、ロンドンで過ごした後17歳の時に帰国。2004年広告会社入社。映画「ダークナイト・ライジング」の『伝説が、壮絶に、終わる。』や、アミューズメントメディア総合学院の「あなたが生まれなければ、この世に生まれなかったものがある。」等のコピーを手掛ける。2015年に誰もが楽しめる新しいスポーツを開発する「世界ゆるスポーツ協会」を設立。 これまで80以上の新しいスポーツを開発し、10万人以上が体験。海外からも注目を集めている。 その他、UNITED ARROWS LTD.と取り組んでいる、一人を起点に新しいファッションを開発する「041 FASHION」、オリィ研究所と共同開発している視覚障がい者アテンドロボット「NIN_NIN」など、福祉領域におけるビジネスを多数プロデュースしている。

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