本書を読んでまず思い出したのは「自立の反対は依存と勘違いされている。自立したいなら依存先を増やすべき。」という、東京大学先端科学技術研究センター准教授の熊谷晋一郎先生が語っていた言葉(広告とは無関係の発言だったが)。博報堂ケトルは設立以来“手口ニュートラル”というコンプトを掲げてきたが、それでも日々企画をしていると、つい“いつもの手口”に逃げてしまうことがある。案外人は一つの手口への依存から自由になれないのだ(“手グセ”ってやつですね)。
でも、本書にもあるように、行き詰まったら仲間に相談することはその突破口になりやすい。仲間との出会いが手口を拡げてくれる。依存の反対は、もっと多くの依存先。つまり相談相手(仲間)が多ければ多いほど、自分の企画(手口)の自由度も一気に無限大になる。「人間は依存しないと生きていけない」と前述の熊谷先生も語っていたが、本書も依存を全面肯定している。日々の仕事に一人で奮闘してちょっと行き詰まってしまっている人にこそ読んで欲しい内容だ。
ここ数ヶ月間、世界中で交わされてきた「対面VSリモート議論」に関しては、一旦「どちらも良し悪しアリ」ということに落ち着きつつあるが、この本を読んでいると「やっぱり対面はいい」と思わされてしまう。本書のキーワード「フェイス・トゥ・フェイス」をせずとも仲間をつくることができる時代も来るのだろうか…。
博報堂ケトル クリエイティブディレクター
皆川壮一郎(みながわそういちろう)氏
1978年生まれ。営業職、マーケ職などを経て、現職。趣味と実益を兼ね、夜な夜なスマホ片手にSNS界隈をパトロールし、実際にそこから企画のヒントを得ることも。主な受賞歴は、カンヌライオンズ シルバー、ACC CMFESTIVALゴールド、新聞広告賞大賞、JAAAクリエイターオブザイヤー メダリストなど。