「金属」ゆえにメタルバンドが応援歌
その波及効果は社内外のステークホルダーに留まらず、外部からもユニークなコラボレーションの提案が入ってくるようになった。オリックス球団から「大阪ドームに広告を出してほしい」というオファーが入ったり(2016年)、映画『鋼の錬金術師』とのコラボ広告が実現したり(2017年)、金属を扱っていることにちなんで音楽情報サイト「BARKS」から「メタルバンドによる応援歌を制作したい」と提案があったり(2019年)と、「古河気合筋肉」というコンセプト自体を面白がってくれる企業やクリエイターからの問い合わせが増えた。
中でも「BARKS」を運営するジャパンミュージックネットワークの代表取締役社長、今井壱克さんは並々ならぬ熱意をもって提案に訪れた1人だ。今井さんは「とにかく御社と面白い企画を実現したい」と熱弁をふるい、メタルバンド「オリンポス16闘神」を起用。経営理念やビジョンを歌詞に埋め込んだハードな楽曲が生まれた。
さらに今井さんからは「せっかく面白いコンテンツ資産がたくさんあるのだから、さらに企業ブランディングにつながるプラットフォームをつくるべき」という提案もあり、2020年3月にはブランディングサイトのリニューアルが実現。これまで展開してきた「古河気合筋肉」のコンセプトや関連動画を集約し、改めて「社会の筋肉」としての古河機械金属の歴史や事業内容を一望できるようにした。
伝統ある企業で、なぜ企画が通った?
ロックドリルやユニックなど自社の製品を魅力的なストーリーで見せる動画制作にも力を入れている。そのひとつが2017年にスタートした「超人カナコ」シリーズ。高校生のカナコが産業機械のスケールと勇敢さに惚れ込み、社会人になると古河機械金属に入社。広報部員として製品の良さを伝えるために大活躍するというストーリーとなっている。手がけているのは映画監督の岡太地さんで、すでに8本の動画が制作されている。
「岡さんは以前から当社の製品紹介動画を撮っていたので特長をよく知っていました。その知識を活かし、一般の方にもリーチできるドラマ性のある物語にしたのが『カナコ』シリーズ。ただストーリーが面白いというだけではなく、製品もしっかり訴求できる内容になっていると思います」。
いずれのケースもクリエイターと一緒にアイデアを出し合うプロセスを大事にしている。ただし実制作に入ってからはプロの感性を信じ、細部にあまり口を挟まない。自身はいかに企業ブランディングに資する企画であるかのロジックをきちんと持つことに徹している。
「奇抜なだけに社内で好き嫌いどちらの反応もあります。動画などを制作したのち一般向けに印象調査を行っても、100%好感を持ってもらえるケースばかりではありません。ただ、元々が非常に堅いイメージの企業なので『イメージが変わった』『親しみがわいた』という好意的な評価をいただくことが多いのが現状です。それこそが私たちのような伝統企業にとっては重要な効果なので、客観的な見え方をしっかり把握するようにしています」。
コロナ禍においても「古河気合筋肉」を基軸とした交通広告は継続していく予定。この春にリニューアルしたブランディングサイトを活用しながら、今後もより企業ブランディングにつながるコンテンツ制作を進めていきたいと考えている。