コロナ禍の影響で一気に浸透 増加するライブ配信ユーザー
—外出自粛環境下の影響もあり、ライブ配信プラットフォームを楽しむユーザーが拡大。それに伴い、ライブ配信におけるインフルエンサーであるライバーも増えているそうですね。
小坂:私たちはライバーの育成とマネジメント事業を行っていますが、ライバープロダクションの「ピノライブ」は、今年に入ってからライバー数が3倍になり、総配信時間も6倍と大きな成長を遂げています。
リアルイベントが開催できなくなったことで、アーティストの方などもライブ配信に興味を持ち、新しい人たちが多く入ってきています。
水田:「ポコチャ」も新しいリスナーの方に利用が広がり、日本でもここ数カ月でライブ配信が一気に市民権を得始めたと感じています。DeNAの「ポコチャ」のようなソーシャルライブアプリのメインの利用形態は自室。ルームウエアを着てくつろいだ感じでコミュニケーションができる環境のなか配信するのが一般的な使われ方です。コロナ禍で外出を控える状況下、不安な気持ちも含めて他者と共有したいというニーズが強まり、通常時よりライバー、リスナー双方で増加を記録しています。
—2社はどのような協力体制をつくっているのでしょうか。
水田:「ポコチャ」のスタートは2017年。当時、世界的に注目をされていたライブストリーミングという新たな手法を用いた新事業を日本でも立ち上げようと始まったサービスです。ライブ配信というと、中国でのライブコマースの成長が話題になりましたが、その活用にとどまらず国内におけるライブ配信の可能性を広げていきたいと考えています。
このチャレンジには取り組みのデータによる検証が必要。「ピノライブ」のようにデータを活用した仮説検証を一緒にできるパートナーがいることは私たちにとっても心強いです。プラットフォームを提供する私たちは、ライバーの方に対するフィードバックまではなかなかできません。より良いプラットフォームの提供に注力するDeNA、ライバーの可能性を最大化させるためにデータを基にライバーの育成、マネジメントに注力するDirect TechでうまくWin-Winの関係を築いていきたいと考えています。
—「ピノライブ」では、どのようにライバーを育成しているのでしょうか。
小坂:ライバーさんによく話をするのは「コミュニティを創造しましょう」ということです。ライブ配信は1対複数のコミュニケーションであり、ややもすると中央集権的なコミュニティになりかねません。しかし、ライブ配信の魅力とはライバーとリスナーが対等にコミュニケーションできる環境にある。そうした「ライバーごとの独自コミュニティ」をつくり、基盤にするようアドバイスしています。
そのコミュニティがあれば、ライブ配信は投げ銭の文化だけに終わらないはず。「ピノライブ」ではライブコマースをはじめ、その時々のニーズに合わせて企業ともコラボしながら、商品のPRやコマースもできるライバーの育成をゴールとしています。
水田:ライバーさんは必ずしも、アーティストのような方だけでなく、普通の人でもライブ配信を始めることで、その人の持つ魅力が発見され、ファンがついてくるようになります。
そして、そのライバーごとに多様なコミュニティが形成されている。なぜ、特別な人でなくてもライブ配信でファンが生まれるのか。それはライブであるからこそ、何が起こるかわからず、つくりこまれた自己表現の世界ではなく、自己解放の世界になっているからだと思います。
「ポコチャ」では、毎月ライバーが参加できるイベントを数多く開催しています。例えば、有名ファッション誌に登場する権利を競うような企画だと、ライバーのなかには負けてしまって悔しくて、配信中に泣いてしまう人もいる。ライブ配信のなかで、自分そのものを開放しているライバーの姿を見たときに、リスナーは胸を打たれる。そして、このライバーを応援していて良かったなという感情が生まれてくるのだと思います。
狭くても深いコミュニケーション 企業のライバー活用事例も増加
—ライバーとコラボしたマーケティング活動は従来のインフルエンサーマーケティングとどのような点で違いがありますか。
小坂:“ライブ”なので商品に対する反応がリアルタイムにわかります。またその場の温度感のような、編集できないリアルさがあり、そこで生まれるエンゲージメントをどう活かすかがポイントだと考えます。
リスナーの方は、ライバーの配信を視聴することが習慣化していて、両者の間には信頼関係が生まれている。リーチできる広さは狭くても、深い共感とともに情報を届けることができるのがライブ配信だと思います。
加えてライバーの数だけ、多様なコミュニティが存在しています。草の根的に複数のライバーを活用し、同じ商品であってもコミュニティ別に訴求を変えたコミュニケーションも可能になります。
水田:小坂さんが話しているように、私も規模に焦点を当てるのではなく、それぞれのコミュニティの熱量に着目した活用が進んだらと思います。ライバーは自己表現ではなく、自己解放しているからこそ、応援しようとするファンが生まれる。マーケティングにライバーを起用する場合、そのコミュニティ内にある感動体験とセットで商品のPRをすると、それぞれのコミュニティ独自の商品体験をつくりだすことができると思います。
小坂:中央集権的なコミュニティではなく、ライバーを応援する気持ちでつながるコミュニティはライブ配信ならでは、ですよね。ライブ配信を今後P(Person)toCビジネスに広げていくうえでも「共感型コミュニティ」から、「応援型コミュニティ」にしていくことが大切だと思います。
応援型コミュニティの場合、ライバーにPRの依頼が来ると、リスナーはまず「おめでとう」という反応から入るんです。その上で、「○○が紹介するならもっと知りたい」とか「今、コンビニで商品を買ってみた」といった応援の気持ちのなかで、商品が広がっていく。深さに強みを持つ、ライバー活用のマーケティングだからこその価値だと思います。
ライバーの方たちは、これからも長くライブ配信の仕事を続けていきたいという思いを持っています。私たちも今後拡大するライブコマース市場を見据え、ライバーとクライアント企業の良いマッチングを生み出し、活躍できる環境の幅を広げたいと思っています。
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