“存在感ない”という存在感を演じる
澤本:浜崎さんと最初に会ったときは、どんな印象でした?このよく喋るオジサン。
浜崎:いやいや、初対面はそんなに喋っていなかった(笑)。
吉沢:いや、めちゃくちゃ喋っていましたよ(笑)。
浜崎:あっ、喋ってた?
吉沢:なんか楽しそうな人だなっていう印象でした。でも、現場に入ってそれがより明確になったというか、「ずっと楽しそうだな、この人」みたいな。そのおかげで現場の雰囲気が保たれていた感じもありました。やっぱりスケジュール的にも結構大変だったじゃないですか。夜中の3時まで撮影していたり。
浜崎:そうそう。あれはキツイっすよね。
吉沢:しかもキャストの方たちもめちゃくちゃ豪華だから、すごい緊張感があって。けど、そのなかで監督がすごく楽しそうにしていたから、こっちも楽しめました。
浜崎:もうあんなことは、なかなかないというかね。出てくる人全員がすごかったじゃないですか。
吉沢:すごいですよね。でも、監督、全然緊張していなかったですよね。
浜崎:僕、緊張してもいいことがないので、基本的に極力そうならないように普通でいようとしてました。考え過ぎちゃってもね。でも、「すごい人来た」と思うと、やっぱり固くなっちゃう。
澤本:浜ちゃんがものすごい真面目な映画とか撮っていたら、騙されたと思うよね。こんな人が撮っている映画が、コメディじゃなかったら怒るよっていうくらい。
浜崎:真面目な顔してね。
吉沢:でも、監督がめちゃくちゃ真面目なサスペンスとか撮っていたら、逆に面白そうですけどね。
浜崎:そうっすよね!
澤本:でも、浜ちゃんが『新聞記者』の監督だったら、ビックリするね。ほんとに「この人?」みたいな。社会派映画なんて、撮らないもんね。
浜崎:あんまりないですね。でも、「やってください」って言われたらできるかもしれない。
吉沢:逆に。
浜崎:1時間くらい考えて、「無理かも」って思うかもしれないけど。
澤本:でも、かっぱ寿司のCMみたいに、ちょっとエモいのも得意じゃん。
浜崎:そうそう。そういうのもできる。
澤本:できるよね。ただ、そのとき現場で笑っちゃダメ。
浜崎:今回の映画でも、笑っちゃって録音の人に怒られちゃったからな。CMの録音の人って、割と控えめで来るんですけど、映画の録音の方って、スタッフのなかでもかなり上位の人たちで……。
吉沢:確かに。録音部と照明部は強いですね。
浜崎:強い、強い、強い……。
吉沢:印象として。
浜崎:だから僕が笑ったりしていると、「すみません、今の採れていません!」みたいに、ピシって言われるんですよ。「やべっ、俺だった」って。
澤本:それは、浜ちゃんが悪いんだよ。
浜崎:確かに。食い気味で笑っちゃうからね。
澤本:浜ちゃんは、吉沢君に最初に会った時の印象は?
浜崎:イケメンだなっていう。
澤本:そりゃそうよ。見たままじゃん。
浜崎:今回は松岡という存在感のない役をどうつくっていこうかと思って、メガネをかけたり前髪をちょっと伸ばしてもらったりしたら、「あっ、こんなにも変わるんだな」って。あと吉沢君がすごいのは、歩き方とか。ちょっと前かがみでね。「存在感ないヤツって、こういうヤツだな」みたいな。「こうやってください」って言うこともなかったんですけど、やってみてもらうと松岡になっているって思ったんですよね。
澤本:台本にも「松岡は存在感ない」って書いてあったけど、役づくりってどういう風にしたの?
吉沢:でも、“存在感ない”っていう存在感があるじゃないですか。だから、めちゃくちゃリアルにやり切るっていうより、割とオーバー気味に役をつくった方が面白いかなっていうのはあって。もちろん見た目もメガネをかけて前髪を伸ばしたり……あと、リュックの持ち方を工夫したりしました。
浜崎:あれ、すごくよかったね。
吉沢:すごくわざとらしくして、走り方もめちゃくちゃダサくしたりとか。
浜崎:そう。走り方が運動できない感じで、『キングダム』の役と違ったね。
澤本:『キングダム』では、運動できたじゃない。すっごいキレッキレだったからね、あの役は。
浜崎:「役でこんなに違うんだ」と思いましたね。
吉沢:リアルに演じるところはリアルに演じるけど、笑いになるまで持っていかないといけないと考えて、ちょっとオーバー気味に演じていました。
浜崎:ああ、なるほどね。