日本アカデミー賞俳優の“存在感消しすぎ”問題(ゲスト:吉沢亮)【後編】

キスシーンだけ、リリー・フランキーさんが監督をしていた!?

澤本:共演者の話をちょっと聞きたいんだけど、リリー(フランキー)さんはどうでした?

吉沢:リリーさんは面白かったです。

浜崎:ははは(笑)。

吉沢:それこそ僕と堤さんのキスシーンは、リリーさんが演出でしたから。

浜崎:リリーさんも自分の出番が終わったんだから帰ればいいのに、ずっといて。僕よりビジコンの前にいましたから。

澤本:ははは。

吉沢:しかも、そのシーンまでは「早く俺の出番来ねぇかな」みたいな。

浜崎:そうそう!

吉沢:「もう帰っていい、俺?」みたいなこと、ずっと言っていて。「いや、ちょっと待ってくださいよ」ってみんなで止めていたのに、あのシーンになったらいきなり誰よりも張り切り出して。

浜崎:そうなんですよね。

吉沢:「亮君、もうちょいゆっくりだな」「ここ一回止めて」「カメラワークもそうじゃなくて、なめるようにいくんだよね」みたいな。めちゃくちゃ演出つけだしましたから。

浜崎:すごかったですね。あんな前に出てくるリリーさん、見たことなかった。

吉沢:もう監督でしたね。

浜崎:リリー監督、すごかった。何テイクも撮って。それで、「これだったらいいんじゃないか」みたいな(笑)。「監督かよ」って!

吉沢:あと、やっぱり堤さんとリリーさんのタッグはすごいですね。

浜崎:もう、すごかった。

吉沢:安心感というか、お二人が出ているだけで笑えます。

浜崎:永遠に掛け合いをやっていられるくらい、すごいですよね。

吉沢:「安心して笑える感じがすげぇな」って見ていましたけど。

澤本:吉沢君は今回の映画を見たとき、どんな感想を持った?

吉沢:「面白いな」って思いました。どこかしら、大なり小なり笑いが入って来るから、ずっと飽きずに見られますし。それに意外にも、最後には家族の物語というか、ジーンと愛を感じさせるシーンが来るので、ただの笑いにはなっていない。その構成がすごくうまいなと。

浜崎:小ネタの応酬ですよね。

吉沢:最高でした。

浜崎:相手が倒れるまで、ずっとジャブを打ち続けるスタイルですよね。

吉沢:あとは、小澤(征悦)さんをはじめとする悪役が、愛すべきバカというか。

浜崎:本当にそうですね。

吉沢:悪役だけというわけではないから、そこも笑えるポイントなんだろうなって思います。登場人物全員、嫌な人がひとりもいない。

浜崎:確かにそう。

吉沢:みんな愛せるキャラというのが、安心して見られるポイントなのかなと。

浜崎:なるほど。今回は個性がしっかりある、コメディ向きの方が多かったですよね。

澤本:役者さんからすると、浜崎監督はどういう印象ですか?

吉沢:ずっとテンションが変わらないというか。

浜崎:ははは(笑)。

吉沢:朝から晩まで、ずっとこのテンションで。

澤本:ねえ。病気だよ。

浜崎:確かにそう。よく「飲んでます?」って言われるけど、「いや飲んでないから」って(笑)。

吉沢:でも、逆に安心するというか。監督の機嫌を伺いながら演技をしなくていいし。色んなテイクはやらされますけど(笑)。

浜崎:ベストを探っているんですよ!

吉沢:そういう感じもするし、そこで監督がつまんなそうに「今の違うな」とかにもならないし。楽しそうに見てくれていて、「違うパターンもちょっと一回見てみたいな」って。監督がずっとそのテンションでいてくれるから、やっているこっちとしては安心します。

浜崎:嬉しいですね。

吉沢:ただ、芝居中に笑うのはよくないですよね。

浜崎:ははは。

吉沢:カメラが回っている時はさすがに(笑)。

浜崎:言われちゃった(笑)。

吉沢:それはちょっとダメでしたよね(笑)。

澤本:あと、カットをかけるタイミングが早い。

浜崎:やっぱりCMのクセで。CMは「ここはもう使わないな」っていうところでダラダラとカメラを回していると、「監督、回しすぎですよ」とか言われるから。その経験が、10年20年続いているとね。

澤本:面白かったのは、浜ちゃんが吉沢君に演技つけに行っているときに、周りのスタッフが「監督、たぶん今度『強いのちょうだい』って言うよ」って予想してたの。それで浜ちゃんが戻ってきたら、撮った後に「ちょっと強いのちょうだい」って。

浜崎:すごいっすね!

澤本:もう読まれていて、「どうせ言うんだろ」って思われているんだよね。

次ページ 「『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督と2度対面」へ続く

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