【前回コラム】「レジ袋有料化スタート!コンビニのコミュニケーションはどう変わるのか」はこちら
コンビニの“廃棄”事情知っていますか?
バブル期の1990年、ローソンに入社した私。店舗に配属されておよそ1週間ほど経ったころから、発注を任されていました。その時店長からは、「弁当や日持ちしない食品は、全体の売上の3%(現在は2%の場合が多い)が廃棄予算だから」と指示されました。
「お客さまに、鮮度が高い商品を常に品揃えしておく事」がコンビニのミッションであり、”販売機会損失”は悪だと言うことを研修で叩き込まれていました。但し廃棄予算がある事は理解していなかったので最初は戸惑いがありました。
発注を任されるまでの1週間は、賞味期限の1時間前に売場から弁当や惣菜などを下げてレジ廃棄登録をしてゴミ袋に入れる。からあげクンなどのファーストフード、ベーカリー、デザートなども同様で、特に牛乳など紙パックに入ったチルド飲料は、ゴミ袋が重くなったり、途中で破損して漏れないように、シンクに中身を流してからゴミ袋に捨てるという、かなり抵抗のある作業でした。
最初は、「もったいないなあ」という感情も湧いていましたが、「お客さまへのミッション」と「予算」を考えると、罪悪感が無くなるまで時間も要せず、あっという間に廃棄作業は“日常”となっていきました。
勤務しているアルバイトに対しインセンティブとして廃棄食品を持っていって貰えばいいのに、と思う方もいるかもしれません。しかし、期限切れの商品を食べてアルバイトが体調不良になったら責任を持てないという事と、廃棄を配ると持ち帰りたい商品を廃棄が出るようにお客さまに見えにくい位置に隠して陳列したりするなど不正を助長するようになってしまうため、基本的には認められないルールになっている店が多いのです。
年間30万トンの食品ロスをなくすためには?
コンビニでは、1店舗あたり、1日に10~15キロ程度の食品を廃棄していています。累計すると年間では約20~30万トンの食品ロスが発生していることになります。これは日本全体の食品ロスのうち約3〜5%を占めると考えられています。工場での廃棄も含めると、たくさんの“もったいない”が生まれてしまっているのは間違いありません。
コンビニではPOS(Point of sales)やカードデータなど、様々なデータを駆使して単品の販売率などで廃棄率のチェックが出来るものの、消費者の自分でも理解出来ない突発的な購買行動を予測するのは難しく、分析は困難を極めます。AI(人工知能)を活用し分析しても、廃棄をゼロに近づける事は不可能に近いとも言われているのです。
ちなみに、カードデータからは、商品の購買リピート率でロイヤルユーザーの特性などは分析出来ますが、商品開発には本質的にあまり活用出来ておらず、カード分析から生まれ、ヒットした新商品の実例も無いに等しいです。
2019年の24時間営業から端を発するコンビニ問題をきっかけに、経済産業省の「新たなコンビニのあり方検討会」からの報告書によると食品ロスの取り組みは、
—「廃棄の取り扱いについて、現行の手法を見直すことも検討に値するのではないかと考えらえる。さらに、各店舗における見切り販売など、加盟店の積極的な創意工夫を促すことに本部が取り組むことも期待される。本部、加盟店、消費者にとってのインセンティブが適切に働くことで、食品廃棄の削減を実現する仕組みの構築が重要である」
「新たなコンビニのあり方検討会」報告書から
(経済産業省、2020年2月)
との見解が出されて、各コンビニでは様々な取り組みをスタートしました。
値引き販売については、本部は利益配分や薄利多売合戦で値引き競争がほとんどの店舗で実施されると本部・オーナーともに収益を悪化するなどの懸念で、消極的でした。しかしながら現状は一部のチェーンを除き、食品ロスの取り組みを優先。希望するオーナーがあれば、原価を下回る不当廉売など行き過ぎた安売りの法違反を除いては容認する方向に変わっています。因みに現状では値引き販売を実施している店舗も少なく、薄利多売合戦にもなっていません。
セブン-イレブンでは、販売期限が近付いたおにぎりや弁当などを購入するとnanacoボーナスポイントを付与する施策を全国で実施しています。現状は自社のnanacoに限っていますが、金融事業者のポイントも利用出来るようにしたり、他のコンビニでも同様の取り組みが始まれば、顧客にもメリットがあり、食品ロス削減の一助となる仕組みとなることでしょう。