嘘が蔓延している世界で、ラジオは「本音」を語るメディア
中村:どんなのがいいんですかね。それこそWEB野郎中村も、吉田さんとかが『やるMAN』でやっていたようなリスナーとの距離が近い、聞いただけで笑っちゃうような、ゲラゲラする企画が好きで。AMっぽいFMになればと思ってやっていたんですけど。今や、実はユーチューバーの方がいい土俵で、ラジオはちょっと違うとしたら、どういう企画が面白くなっていくんでしょうかね。
吉田:テレビもだいぶ自分の心根とか、心の声を出してくる人が多くはなっているけど、ラジオは元々「本音」を大事にしてきたメディアだと思うんですよね。
それが、段々と本音がどのメディアでも見えにくくなっている。時代のせいなのか何なのか分かんないですけど、それが一番煩わっている気がしますよね。昔は枠があるから、枠を突破して、そこを飛び越えて面白いことをやろうとすることでエネルギーが生まれたんだけど、今は枠がないようでいて、思いっきり閉塞感があるっていうね。それが一番大問題だと思うんですよ。
それに色んなメディアが増えたことによって、嘘ってだいぶ蔓延しているじゃないですか。フェイクニュースとか。それから、お金をもらって力がある人に加担して喋る人がいっぱい出てきちゃったしね。そうすると、そういう人たちに負けないような本当の本音、本当の心の声とか、自分の考えみたいなものをもっともっとストレートに出せるラジオ番組ができた方がいいと思うんですよね。
澤本:分かります。
吉田:それは、今はないと思うんですよね。あるときから“忖度”っていう言葉がすごく時代を悪くしちゃった感じ。本来忖度っていい意味だったわけだから。人を思いやって、いいことをしてあげるっていうね。その人のためにいいことをするっていう方向が、その人のことを思って悪いことをする方向になっちゃった。今は言葉もどんどん破壊されている時代になっちゃって、喋る人の足もとも揺らいでいるかなって気がとてもするんですよね。
それに、今は新聞とテレビだけだと本当の情報って得られないじゃないですか。僕もバカなこととかくだらないことだけをずっとやってきたんですけど、2011年くらいからはちょっと報道チックな番組をラジオでもやるようになって。そうなってくると、本当の真実を知りたくなるわけですよ。何が本当なんだと。
そうすると嘘を言ってくる人とか、嘘のニュースを発信している人の多さにやたら気づいて。日本のことが本当に見えてくるから海外の情報も知りたいわけですよね。そういう努力をしないと、今はマイクの前に立っちゃいけないんじゃないかなっていう気がしてます。別にストイックな気持ちじゃなくて、マイクの前で喋る人は、それくらいじゃないと本当はいけないのかなって、この年になってくると思いますよね。
前はめちゃくちゃばっかりやっていたんだけど、今は見えているものをはっきりマイクの前で喋れる人が、たぶん光ってくると思うんです。後になって「騙された」「ひどいことやられちゃったな」って人が生まれてくるような時代になっているので、これをなんとかしたいなって老婆心ながら思う所ですよね。