【前回コラム】「巣ごもり消費は単なる“現象”にすぎない コロナ禍における消費者の新・欲求」はこちら
消費者は、自分らしく価値あるニューノーマルを探す旅を始めた
コロナ禍で変わる消費者に関して、さまざまな現象やデータが断片的に報じられています。一時的な現象なのか、持続性のある変化なのか。一体なにが事の本質なのか。そこを見極めるには、深い消費者理解が不可欠です。
インサイトを見誤ると、マーケティング施策は不発に終わります。表面的な消費者理解でトライアンドエラーを繰り返しているうちに、消費者インサイトをうまく捉えた競合に先を越されてしまうかもしれません。「うわぁ、うまいことやられたわ~」とは、なりたくないでしょう。
この度、私が代表を務めるデコムで「With/Afterコロナに企業が注視すべき消費者の新・欲求“ニューノーマル・プラネット”」の第二弾を発表しました。第一弾は、緊急事態宣言下の4~5月に行った調査に基づくものです。今回は、宣言が解除された6~7月に調査を行い、前回と比較をすることで、一時的ではなく、これから加速するであろう欲求が見えてきました。
緊急事態宣言が発令されステイホームを続けていた時と、宣言が解除された後で、消費者の行動や心理は変化していました。緊急事態宣言下では、現代人が経験したことのないパンデミックの事態に“混乱し場当たり的に動く消費者の姿”が見て取れました。
宣言解除後では、コロナ禍での生活が長引く中で、ある種冷静に“自分らしく価値ある新しい日常を模索する消費者の姿”に変化しています。
消費者は、コロナとの長期戦に腹をくくって、自分らしく価値あるニューノーマルを探す旅をはじめています。それは、世間一般に共通する正解を求める旅ではなく、コロナ前からも増して“自分らしさ”を重視した旅路です。
それらの新・欲求は、「ニューノーマルへの7つの旅路」として、下記のように整理することができました。
まったく新しい価値観が出現しているわけではない
緊急事態宣言下に行った調査を分析する前は、「現代人が経験したことがないパンデミックで生活は一変してしまった。生活者の価値観も一変しているだろうか?まったく新しい価値観の出現はあるだろうか?」という視点でも、大量のn=1の定性情報に向き合ってみましたが、そんなことはありませんでした。
コロナ禍によって、消費者にまったく新しい価値観が出現しているわけではなく、次のような変化が起こっていたのです。
・これまでは弱くくすぶっていた欲求が、強くなった
・これまで感じている人や感じられる場面が少なかった欲求の、感じる人や感じる場面が増えた
つまり、これまでも存在していた欲求で、加速しているものと減衰しているのがあるのです。
加速する欲求に応えることができれば、それは自社にとってのオポチュニティ(機会)となります。逆に、これまで自社が提供していた価値が、減衰している欲求に応えようとするものだった場合、ビジネスは縮小に向かってしまいます。
この加速と減衰の変化を見極めて、自社ブランドから消費者にどんな提案ができるのかを考えなければなりません。
消費者は、日々コロナの感染者数のニュースに触れ、感染拡大に注意を払いながらも、ニューノーマルに向かって動き出しています。
そこでは、新しい欲求が新たな生活/消費行動を生んでいます。
この“新・欲求”と企業が提供する価値にギャップが生じると、ビジネスは縮小に向かいます。
逆に、このギャップをいち早く発見し、埋めて行くことができれば、それは大きな機会となるのです。
「消費者の欲求の変化をいち早く捉え、素早く実行に移して頂くための示唆を提示する」
これが今回発表したレポートに込めた想いです。