日本におけるブランドづくりは、いばらの道。だからこそ取り組む価値がある。

日本企業は本質的にブランドが苦手?まだまだ続く担当者のいばらの道

とはいえ、ブランドのつくり方がわかっただけでは、日本企業におけるブランドづくりは進みません。なぜなら日本企業は本質的に、ブランドが苦手だからです。

日本が戦後の高度成長を成し遂げたのは、モノづくりの力があってこそ。品質を大切にし、良い製品をつくることにすべての力を注ぎました。「製品やサービスの質を高めることが正しく、すばらしいことである」という価値観で一生懸命、頑張って日本は成長しました。

モノづくりの力とは、すなわち機能性を高める力のこと(高性能なものをつくること)です。それは日本人の強みであり、誇りであり、日本人の国民性です。日本では『良いもの』さえつくれば売れる時代が長くありました。その成功体験が、ブランドづくりをいばらの道にしているのです。

機能的な価値に差が付きにくい今の時代においては、「機能的価値よりも情緒的な価値が圧倒的に重要」になってきています。それなのに「機能的価値」だけでモノが売れた高度成長期の価値観はなかなか変わりません。「機能的価値」が商品の素晴らしさを数字や言葉で論理的に、きちんと説明できるのに対して、「情緒的価値」は、数字や言葉で説明することが難しい。「情緒的価値(ブランド)」は、極論すれば、価値のないものをイメージでごまかすちょっと卑怯な手法との認識すら残っています。

企業・商品が儲かるためには、企業・商品が生活者にとって良いものであることが大前提です。でも、良いものがあふれているのに、良いものさえ作ればそれでいいと思考停止していては、もはや儲けることはできません。ブランドづくりは、企業・商品の価値を実力以上に良く見せるためのテクニックではなく、企業・商品が本当に持っている価値を、正しく伝えるための本質的な活動なのです。ものづくりに力を注いで終わりではなく、その価値をきちんと生活者に届けることに今まで以上に知恵をしぼり、汗をかかなければならないのです。今の時代に最も必要な仕事であると考えています。

私がブランドづくりに取り組み始めた時、私自身も情緒的価値に懐疑的だったことや社内の理解が得られないこともあり当初は、連載のタイトルどおり「ブランドなんか大嫌いなブランド担当者」でした。33年経って情緒的価値の本当の重要性を理解できるようになった今、やっと「ブランドが何となく好きなブランド担当者」になれました。

今回ご紹介したビジネスの場で使える「実務者にとってのブランドづくりの方法論」は、まだまだ発展途上であり改善すべき点がたくさんあります。もっともっとわかりやすく共感できるものにして、ブランドづくりに関係しない人にもその価値を理解してもらえるものにしなければいけません。そしてより効率よく、より短期間でブランドづくりの成果がでるように進化させていく必要もあります。

今後もブランドをつくる仕事に誇りをもって取り組むと同時に、ビジネスの場で日々実践することでブランドづくりの方法論をもっと使えるものにします。そして機会があれば、その進化を皆さんにお伝えしていきたいと思っています。

長らくお付き合いただき、本当にありがとうございました。

本コラムの前編「ブランドなんか大嫌いなブランド担当者が33年かかって、たどり着いたブランド論」は、こちらよりご覧をいただけます。

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片山 義丈(ダイキン工業 総務部/広告宣伝グループ長/部長)
片山 義丈(ダイキン工業 総務部/広告宣伝グループ長/部長)

1988年ダイキン工業入社、総務部宣伝課に配属。1996年広報部 広報担当、2000年広報部広告宣伝・WEB担当課長を経て2007年より現職。業界5位のダイキンのルームエアコンを一躍トップに押し上げた新ブランド「うるるとさらら」の導入や、ゆるキャラ「ぴちょんくん」ブームに携わる。現在は 統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)による企業ブランド構築、マスとデジタルのB2C商品広告展開、広告媒体の購入、グローバルグループWEB統括を担当。日本広告学会員。

片山 義丈(ダイキン工業 総務部/広告宣伝グループ長/部長)

1988年ダイキン工業入社、総務部宣伝課に配属。1996年広報部 広報担当、2000年広報部広告宣伝・WEB担当課長を経て2007年より現職。業界5位のダイキンのルームエアコンを一躍トップに押し上げた新ブランド「うるるとさらら」の導入や、ゆるキャラ「ぴちょんくん」ブームに携わる。現在は 統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)による企業ブランド構築、マスとデジタルのB2C商品広告展開、広告媒体の購入、グローバルグループWEB統括を担当。日本広告学会員。

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