モチベーション/スキルアップのための動画活用 ワークスタイル変革時代の自社でできるインターナルコミュニケーションとは

リモートワークが推奨される中、従業員がどこで働いていても、自発的に仕事に取り組め、高いパフォーマンスを発揮できるような環境づくりが、経営上の喫緊の課題となっている。そんな中、注目を集めているのが、情報量が多く、正確に素早く情報が伝わる「動画」を活用したインターナルコミュニケーション施策だ。では、どんな動画活用が有効なのか。ここでは、インターナルコミュニケーションに積極的に取り組む、エン・ジャパンとヤッホーブルーイングの事例、そして動画の配信・制作ソリューションを提供するJストリームの視点から見た社内動画の活用ポイントを紹介する(2020年7月31日に宣伝会議がライブ配信した「ワークスタイル変革時代のインターナルコミュニケーション モチベーション/スキルアップのための動画活用セミナー」の一部を掲載)。

エン・ジャパンのYouTube社内報

エン・ジャパン株式会社
ブランド企画室 広報 清水朋之氏

エン・ジャパンは現在、社員数3,500名、求人サイトの「エン転職」をはじめ、20以上のサービスを5カ国で展開しています。インターナルコミュニケーション施策として、2006~2009年は紙の社内報、2010~2015年は社内限定公開のWeb社内報をつくっていましたが、現在は

1. Webの社内報「en soku!」
2. YouTube社内報「しみねーのWelcomeエン・ジャパン」

の2つを運営し、社外への公開もしています。

Web社内報「en soku!」は基本、毎営業日更新。運営開始から4年で2000本以上の記事を載せています。記事を書くのは、広報だけではなく、100名以上の社員レポーターです。

YouTube社内報「しみねーのWelcomeエン・ジャパン」は、私とエン・ジャパンで働く社員の対談形式の動画。社長から入社したばかりの社員まで登場し、1回あたり3~10分くらい。毎週月曜日更新しています。目的は社内エンゲージメントの向上。動画社内報を始めた背景には、社員数の増加により「どんな仕事があり、どんな社員がいるのかわからない」状態が生まれていたことがあります。Web社内報は「最近、読んでいない」などの声も出てきたことから、多様な社員、部署、仕事を紹介し、キャリアパスのイメージを具体化できるような動画コンテンツをYouTubeにアップすることを考えました。

撮影は全部スマホで動画はコストがそこまでかかりませんし、画像や文字だけ、もしくは声だけよりも臨場感があります。またYouTube上にアップするなら社員も手軽に見ることができます。さらに「YouTubeはじまったの?」という話題性につながるのではないかと考えスタートしました。

動画を始めてから「入社前から働くイメージが持てた」「ほかの社員がどんな仕事をしているかわかった」「毎週楽しみにしています」といった声が社内から届くようになり、継続的に見てもらえるコンテンツになっています。

この取り組みは『おはよう日本』(NHK)など、メディアでも紹介されました。社員の家族や入社を検討してくださっている方、取引先にも社内風土が伝わり、はからずも採用広報や販促にもつながっている側面があります。

当社も4月から全面的に在宅勤務になりましたが、Zoomで撮影しながらYouTube社内報は止めずに更新しています。入社したばかりですぐに在宅になってしまった1年目社員や、家事と仕事を両立しなければならないワーキングマザーの社員向けにターゲットを絞ってコンテンツを届けたところ、視聴率も高く、「自分だけじゃないんだ。頑張ろうと思えました」というような声につながっています。

動画配信を社外にも公開することによって、社内からの評判はもちろん、コロナ禍でもエン・ジャパンが事業運営していることを社外に伝えることもできたと思っています。社内報は、社員がつながるためにありますが、社外公開することによって、外とのリレーションを感じられるのがメリットです。

YouTube社内報「しみねーのWelcomeエン・ジャパン」より

ヤッホーブルーイング、社長による動画配信「てんちょ通信」ほか

株式会社ヤッホーブルーイング
よなよなエール広め隊(広報)所属 道本美森氏

ヤッホーブルーイングは「よなよなエール」をはじめとした個性豊かなエールビールを専門に製造販売しています。「ビールに味を!人生に幸せを!」をミッションに、ビール市場にバラエティを提供して、新しいビール文化をつくることで、ビールファンの方々にささやかな幸せをお届けしたい。そんな気持ちでビールづくりを行っております。フラットな組織のもとで自ら考え行動することを大切にしていますので、インターナルコミュニケーションについても、広報がすべてを担うのではなく、全社に関する課題があった時には、それを課題だと思った人が自ら手をあげて、行動をしていく文化があります。

今回紹介する事例も、広報だけでなく、たくさんの社員がかかわっています。大きく3つに分けて紹介します。

1. 社長による動画の配信「てんちょ通信」
私たちはニックネームでお互いを呼び合う文化があり、社長のことを「てんちょ」と呼んでいます。「てんちょ通信」は、社長による経営方針の共有のための動画。今年の4月から始めました。コロナ禍における市場状況や社長の考え、方針を伝えています。不定期ですが、だいたい2週間に一度のペースで配信され、テレビ会議システムの「Google Meet」で録画したものを社長がメールで配信しています。

これまで社長から全社員に直接話をする機会がありましたが、有事の時には月1回では足りない、という課題がありました。メールであれば、いつでも情報を共有できますが、文字だけだと温度感が伝わらない。動画であれば早く、正確に伝えられるということで、取り組みを始めました。

「てんちょ通信」より

社長からタイムリーに情報共有があることで、スタッフは自律的に動けると考えています。先行きの見えない中で前向きなメッセージが配信されると、不安が払拭され、ポジティブな思いを抱くきっかけになります。社長自身も在宅勤務を続けているため、なかなかスタッフと会う機会がないのですが、動画は新たな接点になっています。

2. 社員による動画の活用「朝会」
全社員に対して共有したいことがあったら、自ら手を挙げ、それぞれ動画を作成して、メールで共有しています。1カ月に1度の配信ペースです。ただ資料を共有するよりも動画のほうが有効であると考えて、このような取り組みを行っています。

3. 社内外に向けた動画活用
キャリア採用の説明会は、生配信と事前収録しておいた社長メッセージ、会社説明の動画などを組み合わせて、オンラインで行いました。午前・午後2回で合計300人以上が参加しています。

また、地域貢献活動について有志のスタッフが解説動画をつくったり、公式ビアレストランのスタッフ向けに、オンラインで醸造工程に関する研修を行ったりもしています。

動画は思ったよりも気軽に制作することができ、かつ、文章よりも正確に内容を伝えることができるのが素敵な点です。お互いの顔が見えにくいリモートワークを支える存在でもあります。動画をいかに見てもらうかについては、まだ課題がありますので、今後も工夫を続けていきたいと思います。

動画コンテンツを活用・自社運用するTips

株式会社Jストリーム営業本部
カスタマーリレーション部 部長 小室 賢一氏

私たちJストリームは、97年の創業以来、動画の配信サービスを行い、加えて映像制作やサイト構築、運用サポートも行っています。いま企業の中での動画活用は多岐にわたっており、コロナ禍においては従来の6倍の問合せがありました。その背景には、人を一箇所に集めて情報共有する場であった、リアルのセミナーやイベントを開催しにくい状況があり、リモートワークで点在する社員に向け、均一に情報配信する必要性が高まっています。

動画のメリットについて、私は、3つに分けて整理しています。

1. 情報量が多い
現場の雰囲気、臨場感、講演者の人柄、声の強弱などといった情報も届けられるのが動画です。例えばトップメッセージならそれ自体がコンテンツになり得ますから、テキストコンテンツのように、コンテンツを成形する労力もかかりません。

2. 正確にすばやく伝わる
人伝いに物事を伝えると、どんどん情報がそがれ、正しい情報が伝わらないことがあります。動画で正確に伝えることができると、次のステップの行動に移しやすくなります。

3. 記憶に残りやすい
動画と、テキストと音声で、同じ情報のコンテンツを並べて実験したところ、動画の方が7倍近く記憶に残りやすかったという実験結果があります。つまり、効率のよい情報の発信のしかたであるということです。

ただし、動画を用意すれば、見てもらえるわけではありません。視聴してもらうために工夫ももちろん必要です。これも3つポイントがあります。

1. 業務の動線にコンテンツを配置する
社内ポータルサイトや、eラーニングのシステムのように、日頃から従業員の方が触れるところに動画を正しく配置することが重要です。

2. 適切な動画の長さにする
10分を過ぎると「長いと感じる」というアンケート結果が出ています。もちろん事業戦略を話すときなど、収まらないものもありますが、ひとつの目安にしてください。

3. 視聴者側の利便性を高める
倍速再生して効率よく見られる機能をつける、字幕を入れる、といった工夫は、配信側の機能を活用すれば可能です。

配信にはライブ配信とアーカイブ動画の2つがあり、それぞれメリット・デメリットがあります。

ライブ配信とアーカイブ動画のメリット・デメリット

ライブ配信は、一度にたくさんの人に同じ情報を提供できるので、トップメッセージや社内イベントに向いています(チャット機能でリアルタイムに視聴者とコミュニケーションをとることも可)。アーカイブ動画は、いつでもどこでも視聴できますが、視聴するための動機も必要。業務マニュアルや、社員、拠点紹介などに適しています。このライブ配信とアーカイブ動画を掛け合わせた配信形式もインターナルコミュニケーションで使われています。

さらに最近では疑似ライブという手法も出てきました。予め収録した動画を指定した時間にライブのように配信する。この手法であれば内容のチェックや配信設定の手間も減らせて、安心してライブ配信を実施できます。

こうした動画配信は、専用機材がなくても身近なパソコン、スマートフォンを活用することで実現できます。動画の特徴を正しくとらえて、動画の活用を進めてもらいたいと思います。

エン・ジャパン、ヤッホーブルーイング、Jストリームの3社が、リモートワーク下で有効な動画活用について鼎談した記事の資料は、以下からダウンロードいただけます。
 
社内でできる!ワークスタイル変革時代の動画を使ったインターナルコミュニケーションとは
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