拡大するメンズ美容市場 「UNO」「バルクオム」の担当者は市場をどう見る?
MimiTVが開催したオンラインビューティーイベント「Beauty Meets」はメーカーやメディア、生活者すべての人が改めて「美容」について考え直す場を提供したいと企画された。ブランド担当者、メイクアップアーティスト、インフルエンサー、小売店、美容の最前線で活躍する人々が登場。オンラインを通して、日替わりのテーマで知見を披露した。
2日目の9月1日はメンズ美容商品を展開する2社と“美容男子”が登壇。「メンズ美容のこれから」をテーマにトークセッションを行った。
登壇者はMimiTV取締役の飯田安紗美氏、資生堂ジャパンの林詩遥子氏、バルクオムの高橋文人氏、MimiTVにも出演する美容家男子Tommy氏の4名で、飯田氏がファシリテーターを務めた。
近年、メンズメイクブームや男性用化粧品の市場規模拡大で「メンズ美容」は身近になってきているという。セッションではまず飯田氏からメンズ美容の盛り上がりについて説明があった後、メーカーの2人が林氏は「UNO(ウーノ)」、高橋氏は「BULK HOMME(バルクオム)」、とそれぞれのブランドの取り組みを紹介。最後に登壇者4人でトークセッションを行う形で進行した。
特別な時より日常に溶け込む、気軽にできるメイクが主流
セッションの冒頭、飯田氏が「メンズ美容の盛り上がりについて」歴史を振り返りながら説明した。
髭剃り後のケアアイテム、ポマードなどの整髪料という形で、戦前から存在していたという日本のメンズ美容。本格的に展開されたのは戦後で、1960年代に日本初の男性化粧品MG5が資生堂から発売された。2000年代には男性スキンケアブランドが台頭し、2018年から19年にかけて男性メイクアップアイテムが普及したという。最近のメンズ美容の傾向として飯田氏は「特別な時のメイクより日常に溶け込む、男性が気軽にできるメイクというコンセプトで各メーカーはブランドを育成している」と語る。
次に飯田氏はGoogleやYouTubeにおける検索結果から、人々がどのように「メンズ美容」を捉えているか、その傾向について解説。検索数は過去10年右肩上がりで、コンテンツのキーワードは「ばれない」が多かったと解説した。
さらにMimiTVが独自に行った調査から「①トレンドは日常的に行うスキンケア、メイクアップに関するものが主流 ②洗顔、化粧水まで使う男性は多いが、メイクアップなどは少ない ③美容に取り組む理由は肌悩みの解決や印象アップ」という結果を披露、特にオンライン会議により自分の顔を見る機会が増え、美容に取り組むきっかけになっていると解説した。
次に2社がそれぞれの会社やブランドを説明した。
まず資生堂ジャパンの林氏が紹介したのは「ウーノ」。1992年に誕生した男性のグルーミングブランドである「ウーノ」は、当初はスタイリングを中心としたラインナップのブランドであったが、2016年のリニューアル後、男性のフェースケア市場に着目し、「男性に『肌』で勝負できる自信を与え、応援する」ことを掲げ、フェースケアのアイテムを中心に展開するブランドに。2019年からは、BBクリーム、アイブロウ、リップなど男性用のメイクのアイテムも展開し始めた。
バルクオムの高橋氏は、最近の取り組みについて紹介。事業開始から8年目を迎えたメンズスキンブランドの「バルクオム」は、事業開始以来メンズ美容、特にスキンケアに特化したブランドで「男性の自信に満ちた表情で、社会を活性化させる」というミッションを掲げている。「バルクオム」の商品は、オンラインでのコミュニケーションを中心に展開してきたが、今年からはマス広告を使い、さらなる認知拡大を目指していると説明した。
コロナ禍でメイクを始める人が増加も「メイク」という言葉には抵抗感
最後に行われたトークセッションでは、事前に視聴者に募集した質問に登壇者が応えるという形で進行した。質問は全部で6点。それぞれ①男性、女性のスキンケアの違い ②スキンケアに抵抗がある男性に対して、有効なコミュニケーション ③新型コロナウイルスの影響 ④今後のメンズ美容 ⑤メンズ美容が当たり前になる時代が来るか、また「メンズ美容」という言葉がなくなるか ⑥「メンズ美容」に取り組む人へのメッセージというものだった。
まず①男女のスキンケアの違いについて、3者とも男性と女性では肌生理は異なるものの、スキンケアという意味や意義において違いは「ない」と結論付けた。ただし「女性にとっては当たり前。男性にはまだ浸透していないので、嗜好品みたいなもの」と高橋氏は指摘した。
次に②「どのような広告やコミュニケーションが有効か」との問いに対しては、「2点あり、1つは『世の中の人は一般的にやっている』というメジャー感。もう1つは、男性は『メイク』という言葉に抵抗を感じているので、その言葉は使わない。クリエイティブにはかっこよさを追求し、顧客には『商品は日常使いのもの』だと伝える」(林氏)、「当社が行った一般男性への調査から、『スキンケアが何かわからない』という結果を得たので、使い方に対する説明が最も大事だと認識し実行している」(高橋氏)と各社の状況を説明した。
新型コロナウイルスの感染拡大により自宅で過ごす時間が増えた2020年。MimiTVが4月に行った「美容オタク世論調査第一弾」によると、「スキンケア」「おこもり美容」「自分ウケメイク」が積極的となったという結果が出ている。
その結果を裏付けるように、登壇者からも「人と会わないので新しいものを取り入れた」(Tommy氏)、「Zoomなどで男性が自分の顔をよく見る機会が増え、メンズ美容に挑戦した人が多かった。メイクアイテムに関しては、3月より緊急事態宣言後の4月の方が、推計販売規模が高くなった」(林氏)との声が聞かれた。
「今後は若者を中心に拡大し、30代以上も徐々に伸びていくと思う。市場が拡大するポイントの1つが、人からのお勧めやプレゼントをきっかけとした利用」(高橋氏)。そして今回、多くの視聴者が気になったのは「皆が当たり前に美容に取り組む時代が来るか、メンズ美容という言葉がなくなるか」という点。Tommy氏は「差別的に聞こえることがあるので、本当は『メンズ美容』という言葉がなくなるといい」と述べ、林氏は「日常生活に組み込まれると、言葉はなくなる」と語った。
最後に「『ばれたくない』という気持ちが先行しているが、自分から率先して公表したほうがいい」(高橋氏)「自分がやりたいようにやるのが正解」(Tommy氏)と視聴者にエールを贈り、この日のセッションを終えた。
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