※本記事は株式会社マスメディアンの『advanced by massmedian』に掲載された記事を表示しています。
メディアのあり方を考える
安部さんが代表を務めるRidiloverでは、「社会課題を、みんなのものに。」をテーマとして、社会問題の現場を訪れる体験型学習プログラム「スタディツアー」。社会問題をひも解き、問題の構造について理解を深める記事で読者と社会をつなぐWebメディア「リディラバジャーナル」の運営など、さまざまな課題解決に尽力しています。また、自身はコメンテーターとしてメディア出演するなど、その活動は多岐にわたります。
安部さんがメディア出演するうえでポリシーとしていることがいくつかあるそうで、その1つは、「煽らないこと」。しかし、「煽って過度なラベリングをつけて対立するような人ほどメディア側からは重宝される」と側面に触れつつ、「それはある意味、過激な(記事)タイトルをつけてPV(ページビュー)を稼ぐバイラルメディアのやり方とほぼ変わらない」と指摘します。
さらには、「いま、大きいメディアもだんだんと体力がなくなってきていることもあるけど、観ている人をバカにしすぎ。もっと難しい話や大事な話とかも、伝え方をちゃんと工夫すればみんな関心を持つと思う。非常に単純化されたものを届けたがるのは視聴者に対するリスペクトがない」との苦言も。
自身がメディア出演をする際には、煽らないことのほかに「“中立的にあろうとすること”“具体的であること”“建設的であること”。これらをすごく意識している」と言います。そして、スタンスとして「(出演者たちで)いろいろな議論がかわされるなかで、『具体的にはこうで、論点はこれだね』と整理をしたうえで、最後はちゃんと自分のポジションを取る」。しかし、そんな自身とは相反して「ポジションを取らない人が多いよね」と実感を語ります。
一方、よく目にする失敗は「当事者側から炎上するパターン」。外野の人と当事者との線引きが見えずに発言している人が多いことを挙げ、「当事者を傷つけるのは良くない。そういう要素のある発言をするときは、大きな確信と覚悟を持って言うべき」と主張。そして、メディアで発信することは影響力が大きいだけに「できれば別の仕事もしていてほしいよね。なぜならメディアに出ることが仕事のすべてになっちゃうと、メディアや制作側の意向に従ってしまう」とパワーバランスについても言及します。
この意見にハヤカワさんは、「自分もある意味、“出ても出なくてもいいけど……”くらいのスタンスであるからこそ、逆に忖度なく言える部分や、本来この状況であればこう発言すべき、というときにそれが言えるというのはある」と同意します。
安部敏樹は昨今の「自殺報道」をどう見る?
安部さんがコロナ禍で気にかけていることの1つは、増加傾向にある「自殺の問題」。
世界保健機関(WHO)は、著名人の自殺に関する報道に対して「メディア関係者に向けた自殺対策推進のための手引き」なるガイドラインを作成しています。厚生労働省もそれをもとに、メディアが自殺関連報道をする際の「やるべきこと」「やってはいけないこと」などについて注意を呼びかけています。
しかし、「いまのメディアはそれを全然守っていない」と安部さんは話します。視聴者や読者に情報をいち早く伝えようと「速報主義」が先立ってしまい、「伝えてはいけないことまで伝えてしまっている」と指摘します。
さらに、自殺の問題で知ってほしいこととして、「自殺問題の支援をしているNPOは寄付金を集めづらい」という点を挙げます。1つでも多く自殺を防ぐべく活動しているものの、「自殺の情報を言えば言うほど、誰かの自殺を促してしまうから迂闊に話を広められない」。情報を出すことが自分たちの存在意義と相反してしまう、という難しさを抱えているがゆえに「支えていくことの必要性」を訴えました。
Ridiloverが事業として成立している理由
Ridiloverが事業として成立している理由について、「ビジネスセクターでの知見を自分がしっかりと学んで実装したことが一番大きい」と安部さんは話します。「Ridiloverは本来、経済的な合理性が回らないところに、一定の事業性を持ち込もうとしているような社会的事業。そのため、普通にビジネスマンが事業に取り組むよりも、より高いレベルで事業に対する理解を持っていないと厳しい」と分析します。
また、安部さんは「会社とNPOは、ほとんど変わらない」とキッパリ言い切ります。長年にわたりさまざまな社会問題と向き合い、Ridiloverを運営してきた経験から、「会社の必殺技は“資本調達”です。株式を渡してあげるかわりに最初にお金をもらえるという仕組み。最近、スタートアップが盛り上がる理由はこれがあったから」と解説します。対してNPOの必殺技は「寄付」であると語ります。「NPOは税制控除を受けやすくなるので、払う(寄付する)側の人にもメリットがある。これは実は“税金を自分でどこに使いたいかを選べる権利”とも言える。その人が行政に納める全体のお金の一部というのは、(NPOへの寄付であれば)行き先が選べるようになっている。これが寄付のポイントです。それをもっと知ってもらうためにも、もっと頑張らないといけない」と力を込めます。
ハヤカワさんは「それはもっと(多くの人に)知られたほうが良さそう」と関心を示し、「寄付ってハードルが高いというか、お金持ちでないとやれないことなのかなと思いがち。だけど、小口からも受け付けているし、ある意味、“自分が納税する予定だったものの一部”という捉え方をすると違うんだなって思う」と感想を口にしていました。
【この記事の放送回をpodcastで聴く】
<番組概要>
番組名:マスメディアン 妄想の泉
放送日時:毎週土曜 24:30~25:00
パーソナリティ:ハヤカワ五味
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/mousou/
番組Twitter:@mousou_tfm
コンテンツパートナー記事とは
AdverTimes.編集部が注目する広告界のオウンドメディアから
読者に届けたい記事を厳選し掲載しています。