自分で自分の商品を愛せているか?
尾上:(今回、お話をうかがったのは、伊良コーラの)小林さんという方なんですけど、覚悟を決めてコーラ小林と名乗って活動されているという。ブランドをつくるっていっても、「なんか流行ってるからやろう」という動機だと、あそこまでキラキラしないだろうということですね。で、ひとつめのトピックがターゲット論です。ターゲット論は特殊なので、それについて聞いた内容を流しますので、見ていただければと。
尾上:「伊良コーラ」のコアターゲットを自分にしてるというお話がすごいいいなと思っていて。なかなかそう思えない、普通にやっていると。そう思ったきっかけって?
小林隆英:そもそも売ろうと思って誕生した商品じゃないので。単純に自分が楽しくてつくっていて。自分が飲みたくてつくっていたものの延長延長で、そのまま来ているという感じです。
尾上:といった感じで、とにかく、自分のつくったものを愛している。
嶋野:大事ですね、やっぱり。
尾上:やっぱり、(嶋野さんも)、仕事されていて、クライアントさんでも、そういうクライアントの仕事のほうがうまくいくとか。
嶋野:そうですね。私、取材モノが多くて1個のテーマについて10冊くらい読んでから企画するので。先方となるべく近いレベルの知識を得てから、感情というか、思いが入ってから取り組んだりしますね。
尾上:そうですね。僕ら側もですよね。基本、担当者さんは商品のことをとても愛していて、そこに僕らが愛が足りてないとすぐバレちゃうというか。
嶋野:バレますね。
尾上:企画も(商品を)愛してるな、というほうが世の中に伝わりますよね。
嶋野:わかります。
尾上:企画側もそこまで愛さなきゃいけないですし、逆にこれからブランド立ち上げる人も、それくらい(自社商品を)愛せているかということが大事ですよね。
嶋野:そうですね。ただ小林さんの場合、盲目の愛じゃなくて、すごくバランスがよかったんですよね。このあとの話にもあると思うんですけど。自分の好きなものと、世の中の好きなものがちゃんと一致している状況を目指しているというのが、いいなと思いましたね。
自分がワクワクできるか? がエンジンになっている
小林:お店は自分がやりたいことを表現する場という感じなんですけど。でもそれはお店でいうと、どうやったら人が楽しんでもらえるかなというか。でもそれも自分がワクワク、どんな感じだったらワクワクするかなっていうのを基準に考えているので。自分がどんなことを感じたらワクワクするかというのが場所になって。人が来てくれたら楽しんでもらえるという、そういう流れですね。
尾上:といった感じであの、自分がワクワクできるかどうか、という点をすごく大事にされている。そのワクワクには自分だけじゃなくて、どうやったら人が楽しんでもらえるかという視点が入ってるのが、独りよがりになっていない部分なのかなと思いますね
嶋野:たしかに。彼は職場をワクワクするようにされていると話してましたけど、尾上さんは、そういうのしてたりするんですか?
尾上:ワクワクするようにですか?今リモート(ワーク)なんで、職場も何も、家なんですよね。だからあんまりワクワクしない……
嶋野:はっはっはっは(笑)
尾上:いやでも、どうでしょうね。なるべく、今やっている仕事に対してワクワク、仕事というか広告全体にワクワクするために、いろんな本買って、周り本で囲んでます
嶋野:すごい。
尾上:ちょっとの合間に見て、「こんな偉大な仕事があるんだから、自分もがんばらねば」と思ってますね。
嶋野:すごいっすね。真逆です、オレ、何もないところでやってます。
尾上:だって後ろにグリーンバック敷いてますもんね。
嶋野:そうそう、無機質……あれは部屋がきたないから敷いてるだけだけどね。
尾上:嶋野さんはあんまりワクワクしないんですか。
嶋野:わりと“無”で作るほうが好きというか。
尾上:ほう、じゃあ真逆ということですか。
嶋野:真逆でしたね、今。
尾上:あら、珍しいですね。そういうやり方もある、そもそも今回聞いたら、まだお一人ですからね。これから先、お話を聞いていく中で、「“無”で仕事しているよ」という人もいるかもしれない、ということですよね。
嶋野:うんうんうん。小林さんの下落合(のお店には)みなさんぜひ、行ってみてほしいんですけど、本当にかっこいいというか、一個一個が揃っているわけではないんだけれども、全体で見ると、ひとつの道があるようなデザインだったりするんで。とてもおしゃれなところでしたね。
尾上:いやあ、よかったです。自分がブランドを体現している空間だと思いました。じゃあどうやってワクワクするようになるのか。いろんな人が悩むところだと思うんですけど、ワクワクするきっかけは、小林さんの場合どうだったのかという話ですね。