「性的消費」で炎上相次ぐ Twitter担当者はなぜ常識と“乖離”する?

炎上はダブルチェックや社員教育で本当に防げる?

では、同様の炎上案件が相次いでいるのにもかかわらず、常識の「乖離」があり続けるのはなぜなのだろうか。

私はアツギ、タカラトミーの謝罪対応で気になった点がある。アツギは、謝罪文の中で「今回、お寄せいただきました皆様からのご意見を真摯に受け止め、(中略)、社員教育の改めての徹底と、ソーシャルメディアポリシーの遵守、運営管理体制等の全面的な見直しを進めてまいります」とコメントしている。

また、タカラトミーはウェブメディアからの質問に「通常は公式Twitterでツイートする際はダブルチェック体制を取っているが、今回は、公式Twitterの担当者の裁量に任せていて、ダブルチェックできていなかった」と答えている。

両社とももっともらしいコメントだが、社員の再教育やダブルチェックの徹底で果たして問題が解決できるのだろうか?再教育しなければならないのは会社の常識そのものではないだろうか?

ウェブリスクの専門家は、「企業Twitterの担当者の中には、アカウントの人気があがればあがるほど「井の中の蛙」になってしまう方がいるようだ」と指摘する。つまり、自社アカウントのフォロワーを中心とした狭く閉じた世界観の中での活躍や名声を享受して、広い世界を知ろうともしない人たちが出てくるのではないかと言うのだ。

そして担当部門も企業も、成功をよしとして担当者個人に任せきりになってしまうのではないか、と。とすれば、世間との常識の乖離は起こって当然だろう。現に、アツギもタカラトミーも1人で担当していたようだ。

定期的に炎上事例をチェックしよう

では、Twitter担当者および企業は、どのような炎上対策をとることができるだろうか。最も簡単な方法は、定期的に炎上事例をチェックすることである。

私自身も、専門の危機管理広報はいまやウェブと切り離すことができないため、定期的に炎上事例をチェックしている。例えば「レピュ研」(ジールコミュニケーションズ)。毎月、前月の炎上状況や炎上事例ピックアップした解説記事が投稿される。もう4、5年、月一度の儀式みたいなものとしてチェックしているだけだが、それだけでも、ネット運用に関する「常識」は、世の常識とそれほど乖離していないと感じている。

企業の公式Twitterアカウントは、多くのTwitterユーザーが好意的に受け止め、広報やプロモーションのプラットホームとして、さらなる発展が予想されている。であれば、その大事なプラットホームを活用する企業は、担当者任せにするのではなく、担当部門もさらには会社全体も、「井の中の蛙」の常識に甘んずることなく、広い世界も見るようにしてほしいと願う。

山口明雄(やまぐち・あきお)
アクセスイースト 代表取締役

東京外国語大学を卒業後、NHKに入局。日本マクドネル・ダグラスで広報・宣伝マネージャーを務めたのを皮切りに、ヒル・アンド・ノウルトン・ジャパンで日本支社長、オズマピーアールで取締役副社長を務める。現在はアクセスイーストで国内外の企業に広報サービスを提供している。2018年2月、『危機管理&メディア対応 新・ハンドブック』(宣伝会議刊)発売。

 

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