失敗すれば「乱」、成功すれば「革命」
松村:高杉晋作も徳川幕府の時代に「こうなったらもう、殺されるぐらいだったらイチカバチカやるかー」って88人で挙兵して、長州藩の保守的な人たちを倒して、藩を乗っ取って結局幕府を倒すことになると。高杉の乱とは言わないんですよね。勝っちゃったから、これは革命になるんですよね。歴史のそういうところがちょっと面白いですよね。
澤本:なるほど。乱の定義って改めて考えるとそうだなあ。
松村:そうなんですよ。だからコマーシャルでも思い切ったことをやると、「あいつは革命を起こしたな」っていうのと、ちょっとそれが芳しくなかったら、「あのディレクターは小さな乱を起こしたな」ってなっちゃうし。乱を革命にする作業っていうのは、それぞれみんな大変なんじゃないかなと思いますよね。乱で何事もないのは胡蝶蘭と、伊藤蘭だけだったよね。まぁいろいろ言う人がいるけれど。
権八:そんなこと言う人いないよ(笑)!
松村:乱、乱ってね、鈴木蘭々じゃないけど、やっぱり乱って実は怖いんですよね。だけどその小さな乱を起こしたことで、後から人たちが立ち上がる場合もあるんで。結果的にプラスになる乱かも分かりませんしね。とにかく大河ドラマを見て学びましたよね。
源氏が白い旗で平家が赤い旗を持っている。じゃあ「紅白歌合戦」って、源平合戦から来たんだ!っていう風に勉強になったりもする。平清盛は家族を大事にするから、平家一門というのは家族を大事にして、社員をあまり大事にしてないからファミリー企業だなあ~とか、源頼朝は兄弟が仲悪かったり、親子が喧嘩したり。どこかの家具店と一緒で……。家族が仲悪いけど社員を大事にする。
鎌倉幕府では、家来のことを“御家人”と呼んで、家来のおかげですよと示してた。家来を大事にするところって成功しますよね。やっぱりスタッフを大事にするCMプランナーの人はみんな!澤本さんもね、権八さんも中村さんもそういう風に。
権八:ありがとうございます。
澤本:いえいえ。
松村:人づくりでしょうね。「町工場が夢見て何が悪いんだよ!」
一同:(笑)。
澤本:でもあの『麒麟がくる』(NHK、2020年1月~)は、(明智)光秀の過去っていうか、ある程度以上の前って誰も知らないから……。
中村・権八:うん。
松村:脚色できると思いますよね。明智の里があって、斎藤道三の家来みたいな感じで、息子と仲良くなっている。そこに西村まさ彦さん演じるおじさんもいるんだけど、「十兵衛、逃げろ!逃げて逃げて、明智の家を頼んだぞ!俺はここで死ぬ。十兵衛、逃げるのじゃ!」。明智の家って早口なんだなって思いました。
一同:(笑)。
松村:長谷川博己さんも、西村まさ彦さんも。明智の家ってみんな早口なのかなって。
一同:(笑)。
松村:ドラマを見る限りでは、優秀な中途社員ってやっぱり斎藤道三のとこでもうまくいくし、朝倉でもうまくいくし、信長のとこで、またさらにうまくいく。
明智光秀も、平和な麒麟を連れてくる人は道三かな?いや違う、信長だ!と思ったけど、結局、それも違ったと思って、最終的に本能寺の変で信長を討っちゃったんでしょうけど。明智はいい技術者ですよ、鉄砲を撃つのもうまければ何でもできる。優秀な中途社員って、やっぱりどこ行っても飯が食える人ですよね。だから明智という臼の中に天下餅があったのかな、天下餅は明智が動かしたのかなとか思いますけどね。明智なくして、信長もいなければ秀吉もいなければ、家康もいないんじゃないかな。
「織田がつき羽柴がこねし天下餅すわりしままに食うは徳川」っていうけどさ。徳川家康が最後おいしい思いをしたけど、これも明智という臼の中で餅が出来上がったんだなと思うと、やっぱり明智のプロデュースの上で成り立っているわけですよ。
澤本:うんうん。こういう話も上手だなあ。
松村:本能寺の変っていうか、“変”も天下は取るけど潰されるから“変”ですからね。
中村:(笑)。
松村:『ここがヘンだよ日本人』(TBS、1998年~2002年放送の討論バラエティー番組)みたいなもんで、変だよってことですよね。乱と違うのは一回天下取るけどやられるっていう。三日天下っていうのが何となく変ですかね。変だなあ、うまくいかないんですよ。
澤本:会社員に例えると分かりやすいなあと思って。つまり中途採用ですもんね。
松村:コマーシャルの撮影でいうと、優秀なプランナーですかね。「うちに来てくれないかな」って引く手あまたな人たちって強いですよね。職持ってるなーっていう。
僕なんかはやっぱりひとつの会社を最後まで通すのが、筋かなと思って。平成だろうと令和だろうと昭和のような生き方をしたいなと思うんですけど。本当に能力のある人は中途でいろいろ見て、自分の道を行くのもいいんじゃないかなとは思います。僕は安全パイで行きたいと思いますけど(笑)。