三菱鉛筆は2020年10月19日、デザイン会社のGRAPH と協業し新ブランド「3&bC」をスタート。高機能なボールペン「3&bC Pt7」を発売した。
CONCEPT:とらわれない
既存商品の付加価値を高める
「3&bC(スリーアンドビーシー)」は、「とらわれない」というコンセプトを掲げた文房具ブランドだ。一体どんなブランドなのか。ブランディングを手がけるGRAPH 北川一成さんは、次のように説明する。「3&bCは、既成概念にとらわれず、自由な発想で三菱鉛筆の既存商品の付加価値を高めていく、アートとテクノロジーをテーマにした実験的なブランド。スペックは同じでも、色やタイポグラフィなどを変えたり、ファッションブランドなどとコラボレーションしたり、3&bC 独自の見立てで新しい価値が生み出せると考えており、既存商品とは違った販路も開拓していく」。
3&bC の第1 弾商品である「Pt7(ピーティーセブン)」は、三菱鉛筆が2001年から販売している加圧ボールペン「パワータンク」の0.7 ミリタイプとスペックは同じだ。「パワータンク」の特徴は、上向きでも濡れた紙にも、氷点下でも書けること。それを今回の3&bC では、商品名とロゴを変え、ボディーのデザインや素材はそのまま、色を一新した。インクは黒色で、軸は全6色。パワータンクは200円(税別)だが、Pt7は600円(同)で販売する。
「色を変えることで、色が演出する“ポップさ”と凹凸のある立体的なフォルムの“ゴツさ”とで、ダブルイメージを生み出した。他ブランドとのコラボ商品はアート性がより高まり、トリプルイメージになる」と北川さん。パワータンクのボディーには2 種類の素材が使われており、それぞれを着色して色を合わせている。素材の異なるものをひとつの色に統一するのは容易ではなく、検証は何度も繰り返して行われたという。
3&bC のユニークな点は、ブランドを立ち上げた狙いのひとつが、三菱鉛筆社内のデザインに対する意識改革であることだ。日本の文具業界をけん引する筆記具メーカーのひとつである同社だが、国内の文具・事務用品の市場は成熟し、もはや機能性の高さだけでは差異化が難しいこともある。そのため機能性に加えて、デザインやストーリーなど情緒的価値を付加した商品開発にも着手。3&bCの取り組みは、その一環だ。
三菱鉛筆独自の技術力に情緒的価値をかけ合わせることで、唯一無二の価値の創出を目指す。三菱鉛筆の既存商品の価値を見直していくために、「とらわれない」に加えて、「very open」「no rules」「live differently」というサブコンセプトも設定。今後はまず、ミナ ペルホネンとコラボした限定モデルを発売予定だという。
GRAPH 代表取締役/デザイナー 北川一成さん。
『ブレーン』2020年12月号
【特集】
コンセプトからヒットを生む広告と商品デザイン
・花王「アタックZERO」
・クラシエホームプロダクツ「mä&më」
・江崎グリコ「カフェオーレ」
・アクア・ライブ・インベストメント「カワスイ 川崎水族館」
・三菱鉛筆×GRAPH「3&bC」
・トリコ「FUJIMI」
・ヤギ「VIBTEX」
・タガヤ「Nœud.TOKYO」
・豊上製菓「信州アップルパイ研究所Q」
・伊良コーラ
・パッケージデザインの好意度をAIで評価ヒットを生むことは可能か/小川亮(プラグ)
【企業・ブランドの本質的な魅力を伝える「ブランデッドコンテンツ」の活用法】
・事例にみるブランデッドコンテンツの定義と役割/眞鍋海里(PARTY)
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【青山デザイン会議】
デジタル全盛時代に見直されるアナログの価値
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