カバーを外すと印象が変わる「Inside/Out ─ 映像文化とLGBTQ+」図録のブックデザイン

早稲田大学演劇博物館で2021年1月15日まで開催中の企画展「Inside/Out─映像文化とLGBTQ+」。戦後から2020年初頭までの、映画やテレビドラマにおける多様なLGBTQ+表象に着目し、その製作ノート、パンフレット、スチル写真、台本、そして映像などの資料と共に歴史を振り返る内容だ。

 
この展示をまとめた図録が9月28日から、同博物館内を中心に販売されている。ブックデザインを手がけたのは、グラフィックデザイナー畑ユリエさんだ。担当した経緯を「今回の展覧会も担当された久保豊先生の企画による、演劇博物館主催の国際シンポジウム『クィアな記憶を発掘する─映像メディアとアーカイブの実践を通じて』(2019年1月)とトークイベント『エンパクに虹をかける ─ LGBTQ入門』(同7月)の2企画のメインビジュアルデザインを担当してからのご縁で、それらの活動の集大成となるこの展覧会の図録制作の依頼を受けました」と話す。

表紙には竹尾のOKACカードを、カバーにはホログラムの美しい五條製紙のスペシャリティーズNo.716-Nを用いた。「久保先生からは初めに、図録としては少し小さめのA5サイズ程度にしてほしい、とご相談を受けました。軽やかなつくりにして多くの人に手に取ってもらいたいということと、個々人のアイデンティティに触れる部分もあるテーマなので、家に持ち帰った際に主張が強くなりすぎない形にできれば嬉しい、ということが理由でした。それを受け、カバーを外してシンプルに保管することもできる今の装丁をご提案しました」(畑さん)。

光の当たり方によってさまざまな色を見せるホログラムペーパーを使用したのは、「LGBTの連帯を示すためにレインボーカラーを用いることがありますが、各カラーに意味があり、実際はフラッグの6色だけでなくたくさんの色や色の組み合わせが使われている」ため。光輝くペーパーは、展覧会のテーマでもある「映像」を想起させるとも考えたという。

「図録で重視するのは『遺す』こと。情報を整理して掲載することはもちろん、展覧会の空気感や資料が持つ価値やそのたたずまい、そして企画者の方の想いをも『遺す』ことを目指しています。まずは皆さんにお届けできる形になったので、ぜひ実際にお手に取っていただけたら嬉しいです」(畑さん)。

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畑ユリエ
監修
岡室美奈子(早稲田大学坪内博士記念演劇博物館館長)
編著
久保豊(金沢大学人間社会学域准教授)
編集
埋忠美沙(お茶の水女子大学准教授)、向井優子(早稲田大学坪内博士記念演劇博物館学芸員)

ecd:エグゼクティブクリエイティブディレクター/cd:クリエイティブディレクター/ad:アートディレクター/企画:プランナー/c:コピーライター/d:デザイナー/演出:ディレクター/td:テクニカルディレクター/flash:flash制作/me:マークアップ・エンジニア/pgr:プログラマー/epr:エグゼクティブプロデューサー/pr:プロデューサー/pm:プロダクションマネージャー/ap:アカウントプランナー/ma:録音/st:スタイリスト/hm:ヘアメイク/crd:コーディネーター/i:イラストレーター/cas:キャスティング/ae:アカウントエグゼクティブ(営業)/na:ナレーター

 

『ブレーン』2020年12月号

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