商品のファンにもキャラクターのファンにも愛される企画とは
次に、実際にキャラクターコラボを企画する際に注意すべきことは何でしょうか。こちらについては3つにまとめてご紹介していきます。
1 商品・ブランドとの親和性を意識する
商品・ブランドの理念・コンセプト、イメージ、ターゲット像と親和性のあるキャラクターを選定し、その世界観・ストーリーに合致する形でコミュニケーション開発をしていくことが重要であると考えます。こういった点を意識せずに企画をしていくと、商品・ブランドのユーザー(ファン)・キャラクターファン双方から反感を買ってしまうおそれもあるので注意すべきです。近年では、いわゆる「懐かしのキャラクターの実写化・リメイク」によるコラボも見受けられますが、こうした親和性も意識して企画されていると推察されます。
2 コアファンへのリスペクトを忘れない
キャラクターとのコラボ企画にあたってはキャラクター・作品自体へのリスペクトは当然ながら、その作品を支えているコアファンへのリスペクトも忘れてはいけません。①とも関連しますが、「このコラボ企画、よく分かっている!」といったファンからの反応を得ることが重要で、その先にSNSへの拡散や実際の購買といったアクションへとつながっていくのです。よって、コラボするキャラクター・作品の理解を深めるほか、ファン心理をきちんと理解した上で企画開発していく必要があると考えます。
3 違和感を共感に変化させる
特にマンガ連載やアニメ放送などが長く続くキャラクターとのコラボに該当するケースですが、マンネリのリスクを回避していく必要があります。版元の理解・協力を得ながら、チャレンジング企画として“いい意味での違和感”を生活者やファンに与えることが、話題化や購買につなげる“きっかけ”となります。(一定のネガ意見も見越して)それを共感に変化させていくことがポイントとなります。
『鬼滅の刃』コラボはなぜ成功事例が多いのか
映画の大ヒットも追い風に、『鬼滅の刃』に関するコラボ企画は非常に多く、かつ、ヒットしている傾向があるのはなぜでしょうか。すでに様々な分野のメディア・専門家の皆さんがヒットの要因について語っているので、私なりの独自の視点でその理由についてお話しておきたいと思います。
ひと言でまとめると、最大の理由は「“令和を代表するコンテンツ登場!”への期待・機運が高まっていたタイミングで、新型コロナウイルスの影響が重なったから」だと考えています。
昨年の邦画映画興収ランキングでも上位に挙がる『名探偵コナン』『ワンピース』『ドラえもん』『ポケットモンスター』といったロングセラーキャラクターとは異なる、“新しいヒットキャラクターを求める機運”がコロナ禍を経て創出・増幅され、映画公開とともに爆発した、そのように推察しています。
上記のほかに、ヒットコンテンツのセオリーとなっている「原作となるマンガが人気になる⇒TVアニメ化でターゲット層が拡大し、マンガへフィードバックされる⇒満を持して映画化」といった流れも汲んだ形でコラボを推進していることも理由のひとつであると思います。
原作となるマンガの連載は終了していますが、アニメ版ではまだストーリーの途中ということもあるので、『鬼滅の刃』ブームは2021年以降も続いていくと予想されます。令和を代表するヒットコンテンツの動きに引き続き注目していきたいと思います。
今回の『鬼滅の刃』に限らず、ロングセラーキャラクターからネクストブレイクキャラクターまで幅広くコラボは実施されており、今後もその流れは変わらないと感じています。今回ご紹介したキャラクターコラボのメリットや、企画する際の注意点も参考に、ぜひキャラクターコラボを検討してみてください。
石田具隆(いしだ・ともたか)
ADKクリエイティブ・ワン プランニング本部 プランニング・ディレクター
ストラテジー・アクティベーション双方の業務経験を活かし、様々な大型コンペに参加。その中でもキャラクターに関連する業務実績が多く、広告以外のビジネス開発業務にも従事。キャラクターに特化した社内ブティック「CHARATS」主宰(2019年11月~2020年9月)。