ダイドードリンコが2020年10月5日に発売した、缶コーヒー「ダイドーブレンド」と『鬼滅の刃』のコラボ商品、通称「鬼滅缶」。主人公の竈門炭治郎や鬼殺隊の隊士などが描かれた全28種の「鬼滅缶」は、発売から約3週間で累計販売本数5000万本を突破。10月16日公開の映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』のヒットも後押しして、快進撃を続けている。
10月度の販売数量は前年同月比149%増
ダイドー全体の売上の8割を占めるのは自動販売機だ。コロナ禍で在宅勤務が広がり、オフィスや駅での利用が減少。2020年に入り前年比8~9%減で推移していた。コンビニでの売上も苦戦を強いられる中、「鬼滅缶」発売後の2020年10月度のコーヒー飲料の販売数量は、前年同月比149.5%の大幅増を記録した。
主力商品のRTD(容器入り)コーヒーは、主にオフィスでの休憩時間に気付け目的で飲むことを想定している。同社マーケティング部の土屋淳一氏(ブランド戦略グループアシスタントマネジャー)は「“ストレス社会”と言われて久しい中、“鬼滅缶”で癒されて楽しい気分になってほしいという思いを込めました。コロナ禍による閉塞感でストレスを感じた人が増えたことも、ヒットの追い風になったのかも」と話す。
『鬼滅の刃』を選んだ最大の理由は「ブランド価値との合致」
「鬼滅缶」は、主力商品の「ダイドーブレンドコーヒーオリジナル」の発売45周年の企画として立ち上がったものだ。缶コーヒーブランドの老舗であるダイドーは、昔から愛飲し続けている40~50代の購入者層の比率が高い。「獲得できていない20~30代へアプローチしながら、販路を拡大して売上を最大化する」という戦略のもと、約1年前の2019年秋ごろから立案し始めた。
45周年企画としてコンテンツコラボを実施することが決定したのち、コラボ先を選定するためにまず3つの選定基準「①認知率 ②購入意欲 ③ブランド価値との合致」を設定。社内でコラボ候補が複数挙げられる中、最も基準に合致したのが『鬼滅の刃』だった。
土屋氏は「当時は、アニメが最終回を迎え注目度が高まっていたが、①の認知率が今後どこまで広がるかは正直なところ未知数だった」と語る。それでも『鬼滅の刃』に懸けたのは、③のブランド価値との合致があったからだった。
「ダイドーブレンド」ブランドの価値とは、1975年の発売以来大切にしてきた「香料無添加」と「ブレンド」へのこだわりだ。ダイドーのコーヒーは香料を使用せず、素材由来のおいしさを引き出すことを追求。また、産地や焙煎の異なる豆をブレンドすることで、様々な個性の“おいしさ”を表現してきた。
「『ブレンドすることでおいしさを創造していく』というブランドの価値と、『鬼滅の刃』の『皆で鬼に立ち向かう姿勢』とがリンクしている。コンテンツを通じてきちんとブランド価値を伝えられることは、重要なポイントだった」と土屋氏。「鬼滅缶」のパッケージの「ひとりじゃない だから、立ち向かえる/まざりあって、超えてゆけ—」というコピーにも、その思いを込めた。