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本リレーコラムには、「Metro Ad Creative Award」の審査員らが登場。交通・OOH広告を広く、街の魅力を創造するメディアとして捉え、最前線で活躍するクリエイターたちが自身を刺激する都市におけるクリエイティブについて語ります。
第6回は審査員の吉田宗平氏が担当します。
withコロナ時代に、OOHはどこへ向かうか。
広告業界、飲食業界、観光業界など、リアルコミュニケーションの価値観が変わってしまった2020年。広告コミュニケーションもDX化が進み、3密で展開されることが”よし”とされていたリアル空間プロモーション機会は減り、凄いスピードでオンラインイベント、ZOOMなどを活用した施策、バーチャル、VR空間でのプロモーション企画が求められはじめました。
それは、OOHにとっても例外ではありません。
近年、渋谷の風物詩であり3密の象徴でもハロウィンでさえ、渋谷区主導で自粛傾向になり、バーチャル空間でハロウィンの仮装体験できる「バーチャル渋谷 au 5G ハロウィーンフェス」が変わって注目されました。
外出自粛直後の今年5月。そんな渋谷にてOOHの空き枠(白地)が目立って心配していた最中の渋谷で、スマホカメラで撮影しまくった、私が最大に心が動いたOOH施策を紹介します。
スシローの「すしで、笑おう」キャンペーンです。
渋谷にスシロー店舗がないにもかかわらず、渋谷ジャックをするという前代未聞の試み。本来であれば、多くの人が渋谷にいる中で開催されるものですが、いつもより少ない通行人のなか、OOH効果は半減のはずです。
このキャンペーンのスシロー側の狙いは、“うまいすしが持つ、人を笑顔にするチカラ”で「笑顔を取り戻してもらいたい」「世の中全体の風向きを変えたい」ということ。この渋谷ジャックを通じて、日本の伝統食寿司の代表的企業としてのコロナ禍での行動が、メディアやSNSで見事に拡散されていました。
このOOHで注目すべきことは、こういった想いや企業姿勢だけの訴求でなく、プランニングやクリエイティブ面でも新しいチャレンジをきっちりしているところです。
スクランブル交差点をぐるっと1周回転レーンで囲うOOHを使用することで、スクランブル交差点を「スシロー店舗(スシロー渋谷スクランブル交差点店)」に見立てる。さらに、田園都市線渋谷駅の映像広告枠では、全長約25mという媒体サイズや位置を考慮し、回る寿司レーンのように、動きも含め、接触の短い時間でインパクトが最大限に見えるように設計されています。
OOHは、街の健康診断書。
外出自粛中の渋谷は、OOHの空き枠が目立ち商業施設も自粛休業で、街全体の元気がなく、先を不安視する心配の声が目立ちました。そんななかスシローの「すしで、笑おう」キャンペーンを知った私は、渋谷の通行人だけでなく多くのメディアやSNSで取り上げられていることを嬉しく思い、とても前向きで健康的な気持ちになれたことを覚えています。
さらに、自分たちが働く会社の理念や想いが施策を通じて感じ取れることができ、全国のスシロー店舗のアルバイトやパートさん向けのインナー施策としても効果があったようです。
デジタル配信かつバーチャル空間やゲーム内OOHが進化する一方、このような「人や会社の想い・温かみを発信するコミュニケーション施策」が、これからのOOHにとって、ますます必要になってくるのではないでしょうか。OOHは、オンラインとオンフライン問わず「人のアクションや想いの先にクリエイトされた象徴物」、さらにOOHは、その年の定期観測的なコミュニケーションとなる「街や企業の健康診断書」ともいえるかもしれません。
Metro Ad Creative Awardに応募される皆さんの「想い」と「クリエティブ」が交差した「世界が元気を取り戻してほしい!」「世の中全体の風向きを変えたい!」というような、アイデアやメッセージに出会えることを、今から楽しみにしております。
第4回「Metro Ad Creative Award」(応募締め切りは2021年1月15日13時)の詳細はこちらから。
吉田宗平氏
THE・STANDARD 代表取締役 プロデューサー
オンラインとオフラインを超えた「ニューリテール」「オンライン展示会」「オンライン接客・商談」「ライブ配信」などのコンセプト開発、デジタルソリューション立案、PR・運営まで全領域を手掛ける。「ポップアップストア」「バーチャルポップアップストア 」「バーチャル(ゴースト)レストラン」「オフィスカフェ」などのコンセプト開発、コンテンツ・空間/施工デザイン、PR・プロモーション、各種申請代行、運営まで全領域をワンストップで手掛ける専門プロデュース会社を2017年に設立。さらに、オンラインとオフラインを統合するコミュニケーションプランニングに数多く従事。2014年より日本初導入のバブルサッカー、ビリッカー、フットダーツなどの発起人かつマーケティングプロデューサーとして、ニュースポーツ業界の新マーケットを開拓中。300以上のメディア実績あり。