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現実を描くべきか、理想を描くべきか
BuzzFeed Japanの小林明子編集長は2020年に掲載した広告表現や企業コミュニケーション関連の記事のなかから、6本を挙げてくれた。そのうち、三陽商会「エコアルフ」の事例は小林編集長が取材し「えっ、これ吉野家の広告じゃないの? 渋谷駅に爆誕したリサイクル広告の正体」(3月9日)という記事を書いた。「他社の広告を再利用する、という形でブランドの姿勢を示すというアイデアが素晴らしい」と共感したためだ。
大きな流れとして特筆すべきは、広告のネガティブな炎上を反射的に取り上げる機会はずいぶん減ったということ。「メディアの立場から社会を良くするという視点に立っているからこそ、炎上に加担するよりも、ダイバーシティに向き合う企業の活動に共感して紹介する機会が増えてきました」。
かつて「ワンオペ育児」などをテーマとした企業の動画が炎上した際、小林編集長は「男性学」の研究者に取材をしたことがある。その中で出てきた論点は「広告の中で現実を描くべきか、理想を描くべきか」というものだった。「これは今にも通じる問いかけだと思います。同じようにジェンダーを扱うにしても、少し先の未来を描いている広告が支持されていると感じます」。
その点、P&G「PANTENE」の「#PrideHair」プロジェクトは「制作者の方が、あらゆるマイノリティに配慮している姿勢が伝わる」と小林編集長が感じている事例だ。「このサイトでは、マイノリティの課題をより深く知ることができる読み物も充実しています。本来はメディアがそういう役割を担うべきで、広告のメッセージがこれほどインパクトがあるというのは興味深いし、脅威でもあります。社会的な視点で企業を選ぶ人が増えた、ということでもあると思います」。
2020年「BuzzFeed Japan」注目の記事
※日付は記事の掲載日
〇貝印
体毛がないことが美しい?「ムダかどうかは、自分で決める」カミソリを売る会社がそんな広告を出した理由(8月17日)
〇P&G(SK-Ⅱ)
白血病乗り越えた競泳の池江璃花子選手、ウイッグを外した姿を初公開(5月18日)
〇P&G(PANTENE)
「この髪が、私です」。自分らしく面接に臨めなかった元就活生が、あなたに伝えたいこと(10月19日)
〇三陽商会(エコアルフ)
えっ、これ吉野家の広告じゃないの? 渋谷駅に爆誕したリサイクル広告の正体(3月9日)
〇ワコール
ブラジャーって古くなっても捨てにくい…。そんなあなたに、知ってほしいキャンペーンがあります(10月2日)
〇亀田製菓
皆さん、亀田製菓さんが本気です。おかきの袋が「スリム」になっている理由とは(8月25日)
『ブレーン』2021年1月号 目次
【特集1】
2020年を総括 ニュースを生み出したクリエイティブ
・2020年のコミュニケーションプランニング
企業の人格の先にニュースは生まれる
島津裕介×多賀谷昌徳×砥川直大×畑中翔太×花田礼
・SmartHR「ハンコを押すために出社した。」
・Netflix「カミングアウト・デー ブランドキャンペーン」
・WWFジャパン
・FGO PROJECT5周年記念企画チーム「under the same sky」
・大阪・関西万博ロゴマーク
・増えるPRプランナー 広告制作における役割は?
・Webメディア編集部の視点「ニュースを生み出す広告」その共通項とは?
ねとらぼ/BuzzFeed Japan/ハフポスト日本版
・PR×クリエイティブ 海外の潮流と日本の現在地
文:井口 理(電通パブリックリレーションズ)
【青山デザイン会議】
2021年“ソーシャルグッド”のその先へ
・アフロマンス
・今井了介
・小谷なみ
【第8回BOVA 協賛企業からのワンポイントアドバイス】